番外編 ハンノマの旅11 ハンノマの帰還
何よりも話を聞いていた母親が喜んだのは、ダイーズが友達ができたという話じゃ。
うむ。よかったな。同じ年頃の友達か。
「おじさん、あの人が僕なんてまだまだ弱いと言うことがよくわかったんだよ」
ん?
「友達になった、ブライス君という子は、本当に強くて、すごくて……同じ年くらいなのに全然違うんだ」
何?
ワシから見れば、ダイーズもその年ではかなり……相当、規格外じゃと思うんじゃが……。
HPにしてもMPにしても……。弓の腕も相当なものだ。中級モンスターを一矢で倒せるんだぞ?それも連続で。
アレは矢に魔力を練りこんではなっていると思うんだが、あれだけのスピードであれほどの威力がでるよう魔力を練るコムのはかなり訓練を積んでいるはずじゃ。
……。
「僕なんて、本当にまだまだ。今までは比べる子供がいなかったから、もしかしたら僕はちょっとは強いんじゃないかって期待もあったんだけど……違ったよ」
謙遜ではなく、本心で言っているみたいだが、その比べた子供ってのは、どうすごいんじゃ。ブライス?どこかで聞いたことがあるようなないような……?
「まぁ、とにかくダイーズが戻ってきたんじゃ。ワシはこいつをもって街に帰るとするかの」
数日間でエルフの爺さんが運んでくれたゴムはかなりの量になった。
「運ぶの手伝おうか?」
と、ダイーズ。
街から村へ帰ってきたばかりだというのに、ワシのためにまた街にとんぼ返りしようというのか?
「そうね。ダイーズ。ハンノマさんにはお世話になったから……荷物を持って行ってあげなさい」
と、母親までがワシのためにと……。そうか。ダイーズがいい子なのは母親のおかげなのじゃな。
優しい親子じゃ。
ワシにもこんな家族がいたらさぞ幸せじゃろうな……。
「いや、大丈夫じゃ。こう見えても、いや、見た通り、ワシは力があるからの。ダイーズ、それよりもあの続きを頼んでもいいか?」
畑の雑草を抜いて挿し木をしている場所を指さす。
まだ挿し木にするための枝がそのまま何本も残っている。
「あ、あれ、ゴム畑を作ってるんだね。分かった」
素直にうなずくダイーズ。
「それから、もう一つ、これは冒険者ダイーズへの指名依頼じゃ」
「冒険者……」
ダイーズの目がキラキラと輝いた。
「すまんな。冒険者らしくない依頼なんじゃが……赤い布のところに運ばれてくるゴムの樹液を干して固めてある程度貯まったら、ワシの店に届けてほしいんじゃ」
「わかった。……でも、指名依頼?」
「ああ。ゴムの樹液のことはあまり知られたくないからな。ダイーズなら秘密を守れるじゃろう?だから、ダイーズを荷物運びに指名したい。店に荷物を持ってきたら、一緒にギルドに行こう。継続指名依頼としてギルドに申請するから。報酬は1度に付き大銀貨1枚でいいか?」
通常、冒険者になりたてのF級冒険者なら、初級ダンジョンに1日いても多くて銀貨1枚の稼ぎだろう。その10倍。
F級冒険者10日分の稼ぎに相当する金額だ。
実際、街とこの村を往復するのに一週間ほどかかるから、それほど多い金額ではあるまい。
「そんなに、いいの?」
「指名依頼じゃ。信用がなければ受けられない仕事じゃぞ?村から街まで往復1週間、それに村にいる間も赤い布のところまで往復してもらうわけじゃ。日当にすればさほど驚くような値段ではないはずじゃ」
思わずダイーズの頭を撫でてしまう。
くすぐたたそうにしておるな。
「信用……。分かった。僕絶対におじさんの信用を裏切らないように頑張る。頑張って、もっと強くなるよ。それから、今は街まで往復するのに5日かかっちゃうけど、もっと早く行けるように足腰も鍛えるからね!」
何?
5日で往復できるじゃと?
……そういえば、大きな猪を軽々背負って歩いておったな。……あれだけのものをもってもすごいスピードじゃった。
HPも高かったしな。……うむ。見くびっておった。
「そうじゃな。もっと、鍛えるとええじゃろう」
ダイーズならば、S級冒険者も夢じゃなかろう。
ワシに手伝えることがあれば、何でも手伝ってやろう。
そして、ワシがはじめてつくるゴムを使った武器はダイーズ、お前に最初にやろう。
最高の武器を作ってやるからな。
「おおそうじゃった。これを渡そうと思っておったんじゃ。接近戦用の武器も持てと言ったのを忘れてはおらぬな?弓だけに頼りすぎるな」
ナイフ。
今てもとにある中で一番のできのナイフをダイーズに手渡す。
「え?いいの?もらっても……」
「これは、あの木々の成長を見守ってもらうための報酬じゃよ」
「わかった。枯れないように頑張って育てる!」
母親が頭を下げる。
「色々とダイーズのためにありがとうございます。私も木のお世話をさせていただきます」
「いや、頭を上げてください。ワシにも益の有ることで、勝手にやっていることじゃ。……その、逆に畑を使わせてもらってすまぬな。きっと、ゴムの利用方法を確立して、村に恩返しをするからの」
「また、村に来てくださいますか?」
ダイーズの母親が不安げに首を傾けた。
来ないという返事が返ってくることを不安に思っているんじゃろうか?だとすると……。
「もちろん、また来る。エルフの爺さんに剣を渡す約束もしておるし、ゴムの木の成長も見にこなければならぬ。それに……仕込んだ酒も飲みに来なくちゃならぬからな」
と言えば、母親が笑顔になった。
「そうでしたわね。その時は、お酒に合うごちそうをご用意いたしますね」
「それは、ますます楽しみがふえたの」
そうして、笑顔で村を出た。
いつもありがとうございまぁぁぁす!
うん、ハンノマさんとダイーズ君の母親(夫は死亡)とかむふふと思いながら書いてる。
けどさ、種族違うと、長寿種族側が残されちゃうじゃない?
残りの人生めっちゃ寂しいじゃん。って考えると、そういうところも踏まえて「一夫多妻、一妻多夫」ってのもありなのかもしれませんね……。
とか、なんかちょっと考え込んだ。
夫人同士が仲良し、親子ほど年の離れた第一夫人と第三夫人が仲良しとか……
「私は先にいってしまうから、あとはあなたが第一夫人になって主人を支えてあげて」
「いいえ、第一夫人はあなたしかいません、私は、私は……」
みたいなさ。
当たり前のこととして受け入れていて、争いもない……のもあるんじゃないかと。
さて、ダイーズ君、チートなんだけどな。無自覚。
……そりゃ、ブライス君のスーパーチート見ちゃうとね。でもね、同じ年くらいに見えるだけで、ブライス君はずいぶん年上だから、ダイーズ君の年齢では群を抜いてチートだからね?
でもって……もっと頑張るとか言い出した……。
ダイーズ、おまえ……脳筋でもないのに、訓練に前向きだな……汗
が、がんばれ!