番外編 ハンノマの旅8 ゴムの木?
頑固な職人が多いというのもあるだろうが、ドワーフは口の悪い人間が多い。
だから、今まで爺さんの口の悪さは気にならなかったが、今の台詞は聞き捨てならない。
「刃が立たないじゃと?ドラゴンだろうと、ワシのつくった剣なら、一刀両断じゃ!」
エルフの爺さんが片手を出す。
「見せてみろ、その自慢の剣とやらを」
見せて?
さやから抜いて、柄を爺さんの手に持たせる。
「【鑑定】」
ああ、見るとはそっちで見るということか。
目が見えていれば、刃に浮かんだ綺麗な波紋が、とてつもない名品だとすぐにわかるだろうが。
「は、なるほどな。これは確かに、自慢したくなるような腕前のようだ。だが、調子に乗るな。お前の腕前などまだまだ。到底伝説には及ばぬ」
う。
伝説の鍛冶師と言われる師匠には確かにまだ及んでいない。
「ここと、ここが他の部分より少し弱い」
爺さんが剣の右側の中ほどと、根本の左側を指さす。
指さされた部分を見る。
「はっ」
思わず息を飲んだ。
確かに、波紋にわずかばかりぶれがあった。少し弱いの、少しは、本当にごくごくわずかということだろう。言われなければ私もこの小さな小さなぶれには気が付かなかった。
調子に乗っていたわけではないが……。
「お、御見それいたしました」
確かに自慢げに見せるような出来栄えではない。
すごい御仁……だ。きっと、ワシが思う異常にすごい御仁に違いない……。
「まぁ、だが、私も少し見くびっていたようだな。確かに、完璧には程遠いとはいえ、その剣をある程度扱える剣技があれば、ドラゴンといえど無傷ではいられまい」
エルフの爺さんがニヤリと笑う。
「私の前を進むことを許そう。だが、弱虫、お前はまだ駄目じゃ。後ろからついてこい」
許しが出たところで、ダイーズの指さした木に近づいて葉を確認する。
「つやがある」
まずは条件を一つクリアしている。
次は、樹液の色じゃ。
「あれ?」
後ろから覗き込んでいたダイーズ君が声を上げた。
「ごめんなさい。僕の記憶違いだったかな。ほら、樹液が固まったところ……黄色っぽい」
ダイーズ君が指さした部分には、木から染み出た樹液の塊のようなものが付いていた。
確かに色は白くない。
「他の木だったかな?でも、確かこのあたりだったと思うんだけど……」
ダイーズ君が記憶を思い出そうと必死になっている。
「待て、ダイーズ。違うとは言い切れない」
嬢ちゃんにもらった小さなゴムを取り出す。そして、固まった樹液の横に持っていき比べる。
「似ている……」
黄色い色の様子が似ている。
固まると色が変化するのかもしれない。鉱石にも加工前と加工後で色が変わる物もある。
試しに、樹液の固まったものを触る。
「!」
柔らかい。が、嬢ちゃんにもらったゴムのように伸びて縮む。
嬢ちゃんが言っていた。何かを混ぜると固くなったりよく伸びたりすると……。
剣で木に傷をつける。
ジワリと、確かに出てきた。
「おじさん、白いよ!やった!」
ダイーズの喜びに水を差すようじゃが……。
「確かに、白い樹液は白い樹液じゃが……。ジワリとにじんではきたが、利用できるほどの量が取れる気がしない……」
嬢ちゃんがゆじってくれたゴムの量を得るだけでもどれだけかかることか……。
「他にもきっとあるはずだよ。おじさん、僕が探してあげるよ。たくさん木があれば、いっぱい樹液も取れるよ!」
と、ダイーズ君がワシを励ますように笑う。
「はっ。弱虫な上に低能め。勝手に動き回れば危険だと言っただろう?もう忘れたのか!」
そうじゃ。ここは危険な場所だと言われたではないか。
「【高度鑑定】……ふん、なるほどな」
は?
高度鑑定魔法を使ったのか?
魔力が4桁ないと使えない魔法を、火魔法を使うほど簡単に使った?
いつもありがとうございます。
にゅーん。
11月28日予約更新分から本編(なろう版)ユーリ視点にもどるよ。




