20 当たりポーション
なんだか知ってる味が混ざったような味。
ぷつぷつと瓶に現れた小さな粟粒。黄色い色。
「この見た目、栄養ドリンクっぽい」
栄養ドリンクを飲めば、確かに疲れが取れる……。まさかね?
「で、ちょっと辛くて甘いこの味は……なんだっけ?」
ごくごく。
ぷはっと飲み干して、ステータスを見る。4だったHPが5になっている。
「え?1しか回復しないの?」
と思っていると、5が6になった。
それからしばらくして7に。およそ20秒で1回復するようだ。
思っていたのとちょっと違う。飲んだ瞬間にばばばばっと回復するものだと思っていた。
うん、でもそういうものなのかなと画面をぼんやり見ていると、飲み干して空になったポーションの瓶が光って消えた。
消えるときにふわっと香りが立つ。
「あ!思い出した!辛みのあるちゃんとしたの飲む機会がなくて忘れてたけど、ポーションってジンジャーエールの味だ」
まだ恋人同士だった時代に主人に連れて行ってもらったお酒の飲めるお店。お酒が飲めない私はジンジャーエールを頼んだんだ。すりおろしたばかりの生姜を使った本格的なジンジャーエール。
……もうっ!
いやんなっちゃう。とっくに気持ちは主人にはないっていうのに。もう離婚するっていうのに。思い出すのって主人のことばかり。仕方ないよ。だって10年間、ほとんど家の中で誰かと新しい思い出を作る機会なんてなかったんだもの。就職した友達と会って話するのだって、年に1,2回あったかどうか。
私の10年間は、主人と……憎い女の、かわいい二人の子供の思い出ばかり。
「あっ!そうだ!」
ポーションを一つ掴んで小屋の外へ。
「みんな、パーティー料理の材料に1本ずつちょうだい!」
自分のものから出すのは簡単だけれど、先輩冒険者の子供たちはそれは認めないだろう。
「え?ポーションを料理に?」
ブライス君がびっくりした顔をしている。
「ん?もしかしてなんかやばい?」
「いえ、聞いたことがなかったもので……」
「もしかして何かと混ぜると変質して毒になったり、爆発したりとかそういうとんでもないことが起きたりとかするのかな?」
カーツ君が大丈夫じゃないのと簡単に言った。
「だって、小さい子に飲ませるときさ、ミルクやお湯に混ぜたりしても何もおきないよ?」
カーツ君の言葉に、ブライス君が頷いた。
「ああ、そうでしたね。料理に使うというのは聞いたことがありませんが、確かに小さな子には薄めて飲ませますね。それに、まぁ初級ポーションで効き目も弱いですし、例え料理に使ったとしてもそう問題はないでしょう」
初級ポーションで効き目が弱い?
栄養ドリンクみたいな色を思い出す。
うん、確かに炭酸の入ったジュースみたいなのは効き目が弱いよね。オロナ〇ンCとか。上級だか高級だかしらないけど上のポーションはユンケ〇とかもっと効き目があるんだろう。きっと。
「ハズレポーションみたいに、おいしいものができるの?キリカ楽しみ」
キリカちゃんが部屋からポーションをとってきた。カーツ君とブライス君も持ってきた。
「あ、ブライス君のお祝いパーティーなんだからブライス君はいいよ。ね、キリカちゃんカーツくん。私たちからのお祝いのプレゼントっていうことでどうかな?」
たかがポーション一つだけど。ここでは大切な働いて得た稼ぎだ。小さな子供たちの大切な1本。
「うん。それがいい。ブライスお兄ちゃんにプレゼントしたいっ!」
「俺も。ユーリ姉ちゃん、足りなかったら言ってくれ!」
みんな笑顔だ。
「ありがとう……」
ブライス君は少しだけ泣きそうな顔。うれしいんだね。うれしすぎて泣きそうなんだ。
「さ、私は料理を作るね!」
小屋の外では燻製肉も作るようで、即席で燻製小屋が立てられている。煙がすごい。
そういえば、火の魔法石使うと煙が出ないんだよね。燻製作るためには薪がいるみたい。
パンでもよかったんだけど、ポーションをもういくつか使ってしまったのでご飯を炊いた。
そういえば、まずい麦と呼ばれる米は豊富に食糧庫にあるけれど、麦はないのかな?小麦粉があれば料理の幅も広がるんだけどな。うどんとかも作れるし。
さて、大量に失敗するわけにはいかないので、小さな器にポーションと酒と醤油を入れて味をみる。
しばらく火にかけて変な味が出ないか確認。オッケーです!
砂糖も生姜もないのに!ジンジャーエールがあれば、何にも問題ないです!なんせ、ジンジャーエールの材料は、砂糖と生姜だもん。
あとは、お肉をコトコト。
ネギと一緒にコトコト。




