番外編 ハンノマの旅~ダイーズ君との出会いと、エルフの爺さん登場~
ふむ、ベルゼブブ。中級モンスターの分類されるが、飛び回るため討伐が困難だとしれておる巨大蠅のような姿のモンスターじゃが……。
ダイーズには全く敵ではないらしい。弓を構えると矢をつがえ放つ。
流れるような動作で、ベルゼブブを仕留めていく。
「おや、魔石が出たようだな」
ダイーズがワシに教えてくれる。
「ああ、綺麗な石でしょ。時々出るんだよ。でもあれもすぐに消えちゃうよ」
え?
まさか……ドロップ品を回収してないのか?
慌てて魔石に触れる。
そうか。遠距離攻撃のダイーズからすれば、5秒以内に触れるということをしたことが無かったということか?
「ほれ、お前のもんじゃ」
光の魔石のようじゃな。
「あれ?消えない、おかしいな?」
「ああ。5秒以内に触れれば消えないぞ?そして、これは光の魔法石だ。売ることができる。綺麗な石はあたりの魔法石だから。無理のない範囲で出たら回収するといい。少しは村の収入の助けになるじゃろう」
何も知らぬのじゃなと、改めてダイーズを見る。
そうか。冒険者など一人もいない村じゃそんなものなのかもしれないな。
ダンジョンが近くにある村であれば、冒険者が行き来することもあるだろう。子供たちは冒険者にお話し聞かせて!とせがむのが仕事だからな。そこそこ知っていることも増えるもんじゃが……。
まぁいい。ギルドにいけば冒険者のイロハは嫌でも教えられるからな。
むしろ間違った知識を自慢げにひけらかすガキどもの教育よりは楽じゃろうて。
ベルゼブブが3匹。難なくダイーズは片付ける。
2つの魔石が出てきた。
ダイーズは欲張ることなく近い場所に現れた魔石にだけ手を伸ばす。
もう一つは消えた。
「ふむ。いい判断じゃ。無理して両方取ろうとするあまり、周りへの警戒が薄くなると危険じゃからな。だが、一つおしえておいてやろう。何も手を伸ばしてかがむ必要はない。足で踏みつけても消えなくなるからな。消えない状態にして、周りを確認してからゆっくり拾えばよい」
「はい。分かりました」
ダイーズなら大丈夫だろう。
脳筋一族にこの方法を教えると……。ポーションは全部割れる。毒消し草などはピューレになる。必ず手で触れろと奴らにはいうしかないんじゃがな。
こうして、平地ダンジョンを進みながら気が付いたことを教えていく。
「ところで、MPの値も悪くはなかったようじゃが、魔法は使わないのか?」
「え?魔法は、特別な人にしか使えないんですよね?僕は普通の狩人……の卵ですし、使えませんよ」
ん?
「卵?」
もう立派な腕を持っているというのに、狩人の卵と言ったか?
「はい。僕など、まだまだだと。だから腕を上げるために練習を知ろと言われています」
うむ。謙遜しているわけではなく……本当に、まだまだだと思っておるようじゃな。まぁ、腕を過信するよりはいいじゃろう。
特にソロで狩りをするなら、なおさらじゃ。
誰に練習しろと言われておるのかは知らぬが、悪くない指導者がいるようじゃな。
「どうした弱虫、こっちには来るなと言ってあるだろうが!お前が弱いのは体だけじゃなくて頭もか?あ?」
ん?
「この人が探している木を、そっちで見た覚えがあるから案内してきたんです」
「ふん、木を探しているじゃと?お前の後ろに確かに知らない人間がいるようだな。……ドワーフか?」
ざんっと、目の前に人が降ってきた。
どうやら目の前に生えていた大木の上から飛び降りてきたようじゃ。
随分口の悪い男だなと、敵意を持って降ってきた男を観察する。
薄茶けたフード付きのローブを身に着けている。フードの袖口から見える手は枯れ木のように細い。
白髪で痩せてはいるが、顔の作りは非常に整っている。
「エルフか」
肩まで伸びた白髪の間から、とがった耳の先が見えた。
長寿のエルフで老人の姿ということは……。一体何年生きているのか。
「ふん、その程度の敵意を向けられてもなんともないぞ。お前程度では私に傷一つつけられぬからな」
「いや、すまなかった。敵かと思って警戒したまで。その、この少年には世話になったからな……」
慌てて膝を折る。
「はっ。弱虫が、えらそうに人の世話か。5年……いや、6年か?7年か?ほんの少し前には、その辺で血まみれでぶっ倒れていたのにな!」
ダイーズ君は悪く言われているのに、ニコニコと笑顔だ。
「はい。あれは8年前になります。あなたがいなければ、僕は今頃死んでいたと思います。助けてくれてありがとうございました。それから、弓の指導もしていただいて」
なるほど。
悪いのは口だけというわけじゃな。
本心でダイーズを悪く思っているわけではないようじゃ。現にワシにも敵意は感じない。
いつもありがとうございます。
ツギクル版ではリリアンヌ様の続きがちゃくちゃくと……。
こっちとは完全に別ルートになります。
でもって、こっちでもちゃんとリリアンヌ様の続き書くからね。両方読むと混乱すると思うので、好きな方を選んで読むもよし……なのです。
もちろん両方追いかけてもいいけれど……。