番外編 ハンノマの旅1
うーむ。
見つからぬ……。
森の中をふらふらして、木々一つ一つの葉をチェックする。
つやつやしている葉を見つけると、木を傷つけ樹液の色を確認する。
「黒……か」
白っぽい色の樹液はまた出てこなかった。
うーむ。
朽ち果てて倒れた木に腰かけ、水筒の水を飲む。
「この森にもないのかのぉ」
店を飛び出してから何日たっただろうか。
……指を折って数えてみる。
「ふははは、まだ、5日だった。そんなに簡単に見つかるわけないの」
はははは。
と、自分で自分がおかしくなる。
だが、それも仕方あるまい。
早く、一日も早く見つけたいのじゃ。その思いが、見つからない日々を長く感じさせるのからの。
水を飲み終え水筒を片づけたあと、大切なゴムの見本をポケットから取り出す。
嬢ちゃんに使い方を色々尋ねようと思っていたが……すでに、ワシもいくつか試してみたいことができた。
ゴムをくるくると少し伸ばしながら木に巻き付け握ってみる。
剣の柄には滑り止めとして革や布を巻く。手に松脂を滑り止めとしてつける者もいる。
ん?松脂は樹液だな。
樹液はすでに使われているのに、何故ゴムの木の樹液は活用されていなかったんだ?
いや、嬢ちゃんが言っていた。何かを混ぜないと使い物にならなかったんだよな。何を混ぜるんだったか?
忘れてしまった。ゴムの木を見つけて樹液を持って帰ったら聞かねばならんな。
まて、ワシ、嬢ちゃんがどこに住んでいるか聞いたか?
いや、聞いてないぞ?
ワシ……また来てくれとは言ったが、来てくれるのを待つしか会う方法がないというのか?
何をしておるんじゃ……。我ながら情けない。つい、このゴムという未知の素材に心を奪われ、すっかり大事なことを忘れてしまったわい。
ああ、でも、そういえば……。
ローファスのカードで買い物に来ていたな?
ふむ。ローファスならば、冒険者ギルドに居所を尋ねればすぐに分かるだろう。
S級冒険者だからな。
いや、S級冒険者は、どこに誰がいるのか内緒だったか?
まぁいい。どこぞのギルド長は、ワシの作る武器を欲しがっていたからな。融通してやらんこともないと言えば口を割るだろう。
いや、無理だろうか。流石にギルド長という立場で不正は……。
ああそうじゃ。氏名依頼という手があったな。
どうせゴムの木から樹液を採取するのを誰かに頼まねばならぬのじゃ。
まだ、ゴムのことは誰にも知られたくないからな。もちろん守秘義務の契約魔法を結んでもらうつもりじゃが……。
ローファスなら、嬢ちゃんの関係者だろうから、契約魔法を結んでまで守りたい秘密は何かと変な探りを入れられることもあるまい。
……いや、ローファスの坊主は、そういう細かいことに興味がないだけか……。
だが、新しい武器の材料になると知れば、興味津々で聞きたがるだろう。
ふむ。
まぁ、新しい武器を試してもらう人間も欲しいし、S級冒険者ともなれば使い良い武器と使い辛い武器との判別くらいすぐにしてくれるじゃろうって。
……よし。氏名依頼だ。
S級冒険者を氏名依頼するとなれば、最低でも1日金貨30枚だったか?10日拘束すれば金貨300枚。
ふむ。
氏名依頼する前に、坊主の剣を作ってやるか。
依頼達成して依頼料を払う前に、坊主に売ってやろう。金貨500枚で売れば、ギルドに手数料50枚、坊主に依頼料450枚。ふむ。
1日金貨30枚なら15日間働いてもらえるか。
……ローファスの坊主の噂は時々耳にしておった。
冒険者見習いの子供達のために小屋を建ててやったとか。
じゃぁ、嬢ちゃんたちは、その小屋の子か?
男の子と女の子……カーツとキリカといったかな?あの二人は小屋の子なんだろ。武器を買いに来ていたからな。
だが、嬢ちゃんは料理の道具を買いに来ていたな……。
小さいけれど、もしかして、小屋の管理人か何かなのかの?
……そうか、小屋に行けば会えるかもしれないな。ふむ。
どちらにしても、いい子たちじゃった。
ローファスの坊主は生意気でろくでもないガキじゃったが、あの子たちは本当に礼儀正しいいい子たちじゃった。
あの子たちだけじゃないんだろうな。
レベルが上がって小屋を卒業して行った子たちは冒険者としてたくさんおるじゃろう。
ローファスのおかげだと思っておる者もたくさんおるじゃろうな……。
いつもありがとうございまぁす!
リリアンヌ様の方は一部の方からのご要望に応じてあっちで更新継続中。(詳細は活動報告)
こっちはしばらく番外編。両方読めてお得だね!
というわけで、ハンノマ編スタートです!ゴムが見つかるといいなぁ。
ゴム見つかるかなぁ。




