閑話*日本では
ご覧いただきありがとうございます。ご意見いただき日本サイドを時々入れることにいたしました。
旦那サイドはほっこり気分が台無しになって腹が立つだけなので
苦手な方はタイトル「閑話*日本では」とある時は読み飛ばしてください。
「課長、どうしたんですか? 靴」
部下に言われて靴を見る。
黒い革靴の側面が汚れている。
「めずらしいですね、課長の靴が汚れているの。いつも課長は言ってますもんね。営業の靴は綺麗でなければならない。足元を見るって言葉があるだろう。あの言葉は昔の旅籠が旅人の足元を見て、疲れていれば他の宿を探す気力もないだろうから少々高くても泊まるはずだと値段を吹っ掛けていたことが語源だ。だから営業も何社も回っても仕事が取れないと思われないように靴は綺麗にしておけと。」
そうだ。
旅籠でなくても現代人も足元を見る。
どれだけ綺麗な服を着ていても靴がボロボロだったり汚れていているような人間は、しょせんは表面だけ取り繕った中身のない人間だ。
よく刑事ドラマで靴底に穴があくまで歩けというが……。営業はいくら穴が開くほど歩き回ったとしても、穴の開いた靴を履いていてはだめだ。
「課長を見習って、私も靴は毎朝頑張って汚れがないかチェックして出てきてるんですよ。まぁ、課長のように本革の靴を手入れする余裕はありませんけれど……」
ハハハと笑う部下の足元を見れば、確かに傷も汚れもない綺麗な靴だ。こいつは出世するだろう。
「ちょっとローテーションを間違えてな」
通勤途中でもらったティッシュを取り出し、靴の汚れをぬぐう。
「ああ、そうだったんですか。革靴は長持ちさせるために5足をローテーションして履くんですよね」
くそっ。
あいつが靴も磨かずに出て行ったせいで、恥をかいた。。
もう、磨かれた靴がない。
離婚したくないなら離婚したくないでも構わない。
だが、やることをやれ!
じゃなければさっさと離婚しろよ!離婚しないまま別の女性と住むわけには行かないだろうが!
くそっ!
仕事帰りに、スマホで靴磨きをしてくれるところがないか検索する。
昔は駅前に靴磨きをする人間が並んでいたそうだが。今は本革の靴を愛用する人間が減り合皮ばかりだから靴磨きを頼む人間も減って、靴磨きの姿も探さなければ見つからない。
検索した結果、今はいくつかのチェーン店で靴を磨くサービスもしているようだ。
一番近い場所は……。
1回1000円?
は?たかが靴磨きごときに1000円?
毎日靴を磨けば月に3万もかかるじゃないか。
3万あれば、新しい靴が買えるだろう?ばかばかしい。
家でやれば月に1000円もあれば足りるだろうに。
靴磨きの店に寄るのは諦めて家路につく。
どうせあいつのことだ。
行く先などあるわけもない。肉親はいないし、友達も少ない。お金だって大して持ってないはずだ。
キャッシュカードもクレジットカードも持たせてなかったからな。
そう何日も家から出て生活できるはずがない。
戻ってきてるさ。
流石に慰謝料なしで離婚というのは法律的にもまずいかもしれない。30万でも金を渡せばあいつは大喜びするんじゃないのか?
もし、友達にでも入れ知恵されていればやっかいか?
相場は100万~300万だったか。じゃぁ、100万でいいだろう。100万渡せば、その後何を言われようが知ったことじゃない。




