184 もにゅ
顔がきれいなだけじゃない。
スタイルも抜群です。
大きな胸に、くびれたウエスト。おとぎ話のお姫様のようなドレスを着ていますが、ドレス越しにもスタイルの良さが見て取れます。
「うわー、綺麗なドレス来てるの。お姫様みたい」
あ、キリカちゃんもお姫様みたいって思ったのね。
っていうか、本当にお姫様じゃないよね?
「ふふふ、ありがとう。でも残念ながら私はお姫様じゃないのよ。さぁ、乗って頂戴」
「いえ、でも、その……。私たち、服も埃だらけで、馬車を汚してしまうかもしれませんし……」
お姫様じゃないといっても、高貴な人か金持ちには違いないよね……。だって、街で他にドレス来てる人、見なかったもの。
洋服を買うためにお店回ったけど、ドレスは売ってなかったもん。
御者台からきっちりした服装の男性が下りて来た。
「リリアンヌ様は子供が大好きですから、大丈夫ですよ」
にこっと男性が笑う。いや、紳士という言葉が似あう人です。セバスチャン!って言いそうになって言葉を飲み込む。
いやいや、危ない。危ない。御者台から降りて来たから執事じゃなくて御者さん?白い手袋が似合いますが、腰には剣が刺さってます。
……えーっと、護衛?
「道中の話し相手になっていただけると嬉しいわ。一人で馬車に乗っているの、退屈なんですもの」
リリアンヌ様が、ニコニコして手招きしている。
カーツ君が私の顔を見た。
キリカちゃんが私の服の裾をつかんだ。
歩いて小屋まで行く一番の足手まといの私が、これ以上断ることはできない。
「あの、じゃぁ、よろしくお願いいたします!」
ぺこりと頭を下げる。
「お願いしますなの」
「お願いします」
キリカちゃんとカーツくんも頭を下げたところで、ドレス姿のリリアンヌ様が高さ50センチほどある馬車からトンっと飛び降りた。
ドレスの裾がふわっさぁーと広がり、白くて細い足がちょこっと見えた。
そのままぎゅむむぅーーーっと、私とキリカちゃんとカーツ君が抱きしめられる。
「かっわいぃぃぃーーーーっ!」
ぐりぐりぐりぐりっと、リリアンヌ様が身をよじり、ちょうど豊満なお胸が顔に当たって、もにゅもにゅもにゅっと頬っぺたとお胸とどちらが柔らかいか選手権みたいになってます……。
ううう、負け、負けです、私のほっぺの負けですっ!
「リリアンヌ様……」
セバスチャン……じゃなくて、えっと、御者さんの冷ややかな声が聞こえました。
「分かったわ。もうっ。さぁ、乗って。乗って!」
リリアンヌ様が、私たち3人を抱えて持ち上げ、馬車にのせる。
えええ?
リリアンヌ様、めっちゃ力持ち!
そりゃ、この世界の女性らしく、身長175センチくらいありそうな大柄な女性ですが、それでも女性は女性だ。キリカちゃんとカーツ君だけならまだしも、私もまとめて抱き上げるとか……!
馬車は向かい合わせに椅子が配置されている。進行方向を背にカーツ君、私、キリカちゃんと3人座り、進行方向を向いて向かい側にリリアンヌ様が座った。
ほどなく、馬車がガタゴトと動き出す。
おや?
「あまり揺れない?」
今まで乗った馬車に比べて、ガタゴトという衝撃が少ないように思う。
「ふふ、そうなの。風の魔法石を使ったクッションがこの下に入っているのよ。すごいでしょう」
ふとした私の言葉を拾って、リリアンヌ様が説明してくれた。
風のサスペンション!魔法のある世界はすごい!
「自己紹介がまだだったわね。私はリリアンヌよ」
「キリカは、キリカです。あと、ユーリお姉ちゃんと、カーツお兄ちゃんなの」
キリカちゃんが3人分紹介してくれた。
「まぁ!キリカちゃん、こっちおいで、こっち!」
リリアンヌ様が身をよじって、パンパンパンと、自分の隣の座席を叩いている。右手で。
で、左手では自分の膝の上を叩いている。うん、あれ、膝の上にのせてぎゅむむってしたいんですよね……きっと。
キリカちゃんかわいいからわかるんだけど……。
「お菓子あるわよ、お菓子!」
リリアンヌ様が、椅子の下からディッシュ箱くらいの大きさの木箱を出して、中を見せる。
「うわー、綺麗なの!」
キリカちゃんがお菓子につられて立ち上がって、向かいの席に座った。
「どうぞ、食べて。ユーリちゃんとカーツくんもどうぞ」
差し出されたそれは、ドライフルーツの砂糖漬けみたいなものだ。
「ありがとうございます」
ついに出てきたスタイル抜群女性キャラ!
名前はリリアンヌ。
……ええ、覚えられないので、璃々亜の流れでリリアンヌ。でも腐女子じゃないよ。




