182 すごいエルフさんのようでした
身長は175センチくらいだろうか。この世界の男性としては小柄なほうだ。
細い、色白、腰まである髪の毛は金色でキラキラのサラサラ。
綺麗だとかそんな陳腐な言葉で片付けられない美しさ。そう、もう、神がかった美しさを持つ、エルフが立っていた。
「おう、ちょうどいいところに来た」
「ちょうどいいじゃないだろう。もう出発する時間だ。ん?こちらのお嬢さんたちは?」
エルフさんが私たちの姿に気が付いたようで、腰を落としてカーツ君の高さまで目線を落とした。
「ハンノマの客じゃ。ハンノマがふらふらどっかに出て行っちまってたから、ワシが代わりに注文を受けたんだ」
間違ってはいない。
……けど、ワシに作らせてほしいんじゃとかなんとか駄々こねましたよね?
「バンが注文を受けるなんて、珍しいこともありますね?」
ドワーフさんはバンさんと言うみたいです。
「ふっ、これじゃ。すごいじゃろう。その嬢ちゃんがデザインした武器じゃ」
……違うんだけどなぁ。
「これを、お嬢さんが?すごいですね。ああ、本当に、これはすごい……」
ああ、動くたびに、キラキラした何かが光って見える。美しすぎて罪みたいな言葉が似あいそうです。
エルフってこんな感じなの?
ブライス君も、何年かしたらこうなる?あ、でも、少しだけ血が入っているだけならここまではならない?
「これに付与魔法してほしいんじゃよ。小さくして刃をつぶして安全に」
「ああ、確かに持ち歩くときにこれは少し不便ですね。大きすぎて邪魔になりますし」
エルフさんが鉛筆みたいな棒を取り出し、何やら巨大泡だて器の上に走らせます。
あ、ブライス君が魔法を使う時と同じだ。
「名前は?」
名前?
「泡だて器?」
バンさんが頷いた。
「ふむ。登録名も泡だて器でいいかの」
え?登録って、鍛冶ギルドのことだよね?巨大泡だて器の武器としての名前も泡だて器になっちゃうの?
えええ!ちょ、ごめんなさい、それは、なんだか、違うと思う!
「はい。どうぞ。泡だて器オープンと言えば展開しますから」
え?
あれ?
いつの間にか巨大泡だて器型の武器は消え、エルフさんが私に、日本でよく見かけたあのサイズの泡だて器を手渡してくれました。
「ありがとうございます!嬉しいです!」
これで泡だて器は手に入っちゃった。鍛冶ギルドに行く必要もなくなったかな?
「で、おぬしのほうの用事は終わったのか?ひ孫に会いに来たんじゃろ?」
「ひ孫じゃなく玄孫です。残念ながら行き違いになったようで、いませんでした」
へ?
玄孫?
……え?
20代後半に見えるエルフさん、いったい何歳なのでしょう……。
「そうか、残念じゃったの」
「そのうち会えるでしょう。お嬢さんたちは、これからどうするんですか?私たちはそろそろ旅立たなければならないのですが」
ドワーフのバンさんがはっとした。
「そうじゃ、そうじゃ、馬車を手配してやると約束じゃったな。家まで送って行ってくれる馬車。ちょっと待っておれ」
バンさんが紙に何かを書いて手渡してくれた。
「門の近くに貸し馬車屋があるはずじゃ。この手紙を渡せば全部伝わる。あ、金のことは気にするな。武器デザインを登録させてもらうお礼じゃ」
「いえ、あの、でも」
支払いますという前に、二人の姿が目の前から消えた。
「うおー、初めて見た!転移魔法だよ、ユーリ姉ちゃん!」
「キリカも、すごいの!エルフの中でも魔力の高い人しか使えないって聞いたことあるの」
今まで黙っていた二人が声を上げる。
「きっとすごいエルフなんだろうなぁ。もう、俺、緊張して全然しゃべれなかった」
「うん、キリカも。伝説のエルフ王みたいって思ったのよ」
そうか。エルフの中でもちょっとすごい人だったのかな。
さすがにエルフ王とか、王様がこんなところにいるわけないだろうけど。エルフみんながあそこまで神々しかったら、人と共存むつかしそうだもんね。
キラキラで目がつぶれそうだもん。緊張半端ないし。
「さぁ、泡だて器も手に入ったし……帰ろうか」
門の近くに貸し馬車やがあると言っていた。
「あそこかな?」
いつもありがとうございます。
感想、評価、ブクマ、感謝しております。
毎度毎度なかなか感想返しができなくて申し訳ないです。全部読んでます。
そして、笑ったり感心したり反省したり、色々ですが、総じて、役に立っております。
元気をもらったり、ネタを思いついたり、成長につながったりと!
せめてもの感謝の気持ちに、皆様にいいことがありますように!と念を送ってみる。とどけー!




