19 狩りを終えて
次の日。みんなで協力して、なんと小型の猪を捕まえました。
「大丈夫ですか?」
ブライス君が私の背をさすってくれてる。
「ご、ごめんね……」
猪の解体をブライス君は分かりやすくみんなに説明してくれた。カーツ君もキリカちゃんも不器用ながら手伝いつつ覚えようとしていた。
私だけ、吐いた。
情けない。
「謝ることはないですよ?僕にできないことがあるようにユーリさんにできないことがある、それだけで。助け合えばいいだけですから」
「そうだぞ、ダンジョンルール助け合いだぞ!」
うん。ありがとう。ごめん。情けない。
主人の声が頭の中に響く。「子供でもできることができないなんてな。そらみたことか、お前に働くなんて無理なんだ」
「ごめん、ありがとう。でも、できるようになりたいから。また吐いちゃうかもしれないけど、それでも。覚えたい」
「じゃぁ、カーツとキリカがしっかり覚えておくんだぞ。僕がいなくなったらお前たちがユーリさんに教えてあげないとダメだからな?」
私は、小屋にあった紙とインクとペンを持ってきて「皮をはぐときは毛並みを確認して、それから」とか「食べられる部分は」とかブライス君の説明をメモしていく。料理で肉に包丁を入れることはできるのに。ああしてさっきまで生きていた、動物そのままの形をしている肉に刃物を入れることができないなんて……。
少しずつ慣れていくしかない。
紙は現代日本のものに比べて表面がガサガサで形も不揃いなうえに、端の方が丸まっているけれど、それほど貴重品というわけではないらしい。ブライス君に使っていいのかは確かめた。普通に言葉が通じているし、文字も読めるけれど、メモする手元を見てブライス君が故郷の文字ですか?と言っていたから書く文字まではこっちの世界と共通にはならないらしい。こっちの文字も書けるように教えてもらわないといけないなぁ。
小型の猪といえ、肉の量はすごかった。
腐る前に食べられる量意外は保存用に加工する必要がある。
干し肉の作り方をブライス君が説明してくれる。カーツ君とキリカちゃんが動いて私はメモ。
いや、もう肉になったから手を出すこともできるんだけど。教えられる人がいなくなるならメモしておかなければならない。
一通り説明が終わり、あとは作業という段階になってメモを手放し料理を考える。
肉か。焼くのが手っ取り早そうだけど……。
塩も胡椒もない。となると、焼いて醤油かける?照り焼き?
鶏肉なら照り焼きもありかなぁ。豚肉……猪だけど、豚だとうーん。
あるものといえば、酒、みりん、醤油、酢。
そういえば、ポーションってどんな味なんだろう?回復効果のある本物は試したことなかったなぁ。
「ちょっと畑に行ってくるね!」
まだ雑草だらけで手入れが行き届いていない畑。広さだけは十分あるから、どこに何があるのか歩き回らないと分からない。
ニラとキャベツの餃子は今日はやめることにした。あれがないか、探す。
「あったぁ!ネギ!」
うれしい!ネギ大好きなんだよね。……子供たちは嫌いそうだけど……。
ニンニクとかしょうがとかあるといいなぁ。胡椒も生えてないかな……。と、期待しつつ探し回るけど、見つけられなかった。
残念。
ネギと、ナスを持って畑を降りる。本当は砂糖もほしいところだけど、この世界では貴重らしいので砂糖なし……うーん。ちょっとこれだけ材料欠いてるのに作るの無謀かなぁ。
小屋の前に戻ると、焚火で肉をあぶったり、肉をつるすために蔓を編んだりと3人ともせっせと働いていた。
あー、元気だなぁ。私は狩り(一応参加して森の中を獲物を探してうろうろした。うろうろしただけだけどな)して、吐いて、岩山上り下りしてへとへとだよ。
……そ、そうだ。
「ステータスオープン」
HPが15分の4になっている。
ふおう、レベルが上がったから分母が10から15に増えてる。でもって、体力の残りが4とか……。
休憩すれば回復するけれど……。
働いている子供たちを見る。一人だけぼんやりするのは非常に申し訳ない。
主人の「体力ないくせに外で働くつもりだったのか」って笑い声が頭の中にこだまする。うるさい!うるさい!
体力は徐々についてくよ。もう10から15に上がったんだもの!このまま冒険者として頑張ればもっと体力も上がるはずなんだから!
そうだ!
部屋に戻って、ポーションを一つ手に取る。
ちょうど味も気になってたし、それに効果とかも気になる。
きゅぽんとふたを取り、口に運ぶ。
「!」
なにこれ!
炭酸飲料だ。
ご覧いただきありがとうございます!
閑話の日本ではをちょこちょこっとまた入れようかと思っているのですが、むしろ必要ないような気もしているのですけれど、ご意見いただけると幸いです。本格的ざまぁにいたるまでのちょっとしたあやつの日常になると思うので……