表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/343

異世界で日本人が若く見られる定番発生中?

 10年間、主人のために、掃除も洗濯も料理もずっとずっとがんばってやってきた。だけどそれは仕事でもなんでもないって。家で楽してただけだって嘲笑われて。もし給料もらって自立できても、きっと主人は言うんだろう。

「結局お前にはそれしかできねーんだ」と。

「私、もっと違う仕事がしたいんですっ!やってもみないうちからあきらめたくない。もし、もしどうしても私には無理だったら……」

 悔しい。

 掃除だって洗濯だって料理だって、プロの家政婦にも負けないくらいがんばっていた。家事だって立派な労働だ。

 でも、主人はきっと彼女は仕事も家事も両立していたんだと、家事しかしてないお前とは違うんだと……そう言うんだろう。

「うーん、どうしても冒険者になりたいって奴は多いけどなぁ……。どうすっかなぁ」

 へ?冒険者?

「しゃぁーない。5歳の子供でもできる仕事なら紹介してやる。そこでコツコツ働いてレベルを上げることだ。レベルさえ上がれば別の仕事も紹介できるからな」

 仕事を紹介してくれる?

「あ、ありがとうございます!」

「じゃぁ、ついてこい。ちょうどポーション畑に行くところだったんだ。連れてってやる」

 ポーション畑?

 畑仕事ってこと?うん、それならがんばれば私にもできそうだ。ミミズやカメムシくらいなら平気だし。蛇が出てきたらさすがに腰を抜かすかもしれないけど。

 腰の高さもあるカウンターを、男の人は手をついて軽く飛び越えてこちら側に来た。

 改めて見ると、すごい服装だ。

 茶系のシャツとズボンとブーツ。それに、皮の胸当て。腰のベルトには剣が。

 ゲーム風世界を演出するためのコスプレ?ハローワークの職員さんも大変だな。

「ああ、ローファスさんっ!勝手に仕事紹介しないでくださいよっ」

「問題ないだろう?俺が責任持つからな」

 ローファスさんって言うんだ。

「もうっ。S級冒険者だからって、勝手しすぎですっ!ユーリさんの個人情報も覗き見ちゃうしっ!知りませんよ、ギルド長に後で叱られてもっ!」

 ぷんすかと怒りながら、カウンターの女性は小さな銅色のカードをローファスさんに投げつけた。

 パシンと、投げつけられたカードを受け取ると、ローファスさんはシャツの襟もとを留めていた紐を抜き取った。

 紐をカードに通して結び、私の正面に立つ。

「ほら、これで嬢ちゃんも冒険者だ。無くすなよ」

 ニッと笑って、ローファスさんが紐を通したカードを首にかけてくれた。

 大きなローファスさんの手が少し髪に触れる。

 あっ。

 ドキンと心臓が跳ねた。

 既婚者なのに。男の人にこうしてネックレス……まぁちょっと違うけど……を首にかけられるだけでドキドキするなんて。ちょっと自分がおかしかった。

 ふっ、ふふっ。

「ほら、笑ってる場合じゃない。無くす前にさっさと服の中に入れて置け!」

 カードをつまみあげられ、カットソーの襟元を引っ張られる。

「きゃっ、な、な、な、何するのよっ!」

 私よりも頭二つ分高い位置からだと、襟元引っ張ったら中見えるよね?せっ、セクハラっ!

「あ、すまん、いや、悪かった。いや、その……」

 ぎっと顔を赤くして睨みつけると、ローファスさんは私以上に顔を真っ赤にしていた。

 ん?セクハラ確信犯って感じとは違う?

「ローファスさん、ユーリさんをポーション畑の子供たちと同じ扱いしないでくださいっ。ごめんなさい、ユーリさん。面倒見のいい男ではあるんだけど、世話好きすぎるのが玉にきずで……」

 子供扱い?

 いや、ちょっと待って。

 もう三十路なんですけど。そういえば、嬢ちゃんって呼んでたのは……。

 あれ?本気で嬢ちゃんっていう年齢に見られていた?いくらなんでもそんなバカな……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ