177 兵士からのプレゼント
「あのね、あのね、違わないのよ。ユーリお姉ちゃんは、キリカの大切なお姉ちゃんなのよ!それから、カーツお兄ちゃんの大切なお姉ちゃんだし、ブライス君の大切なお姉ちゃんなの。みんなの大切な人なのよ!」
あ、なるほど。うん、そうだ。
キリカちゃんの言う通り。
「そうです。私も、キリカちゃんもカーツ君もブライス君も、小屋の人間は、全員、ローファスさんに大切にしてもらっています!」
兵が頷いた。
「なるほど。父親のような気持ちで、ユーリさんには手を出すなという意味だったというわけかな?」
父親……。
ローファスさん、他の人にそんな風に思われてるの?ううう。同じくらいの年齢なのに、私との扱いの差にちょっと涙が。
「ああ、そうだ。これ、どうぞ」
兵が荷台に積まれた荷物から一つ木箱を取り出した。
「え?」
「大したものじゃないですが、兵の有志から。小さな冒険者にお礼がしたいということで」
木箱の大きさは、電子レンジくらい。結構ずっしり重いです。持っていられないというのはすぐに兵が気が付いたようで荷台に戻してくれた。
「あの、お礼とかそんなの……皆さんこそ、私たちのためにモンスターと戦ってくれて、こちらこそありがとうございます!」
ぺこりと頭を下げる。
キリカちゃんとカーツくんも頭を下げた。
「ありがとうなの!あのね、スタンピードから街を守ってくれたの、ありがとうなのよ」
「ああ。仕事だとしても、危険のある仕事を引き受けてくれてるの、すごい。ありがとう!」
兵が頭をポリポリかいた。
「こりゃ、隊長が大切にしたがるわけだ」
でしょ。キリカちゃんもカーツ君もいい子でしょ!
思わず、私、ドヤ顔しちゃってませんよね?鼻からふんって息出してませんよね。自慢したくて仕方がないけど、我慢我慢。
なでなで。
あれ、私がなでられてます。えーっと、兵には、私たち3人一絡げですか。いや、まぁ、子供のふりしてますけど。
「まぁ、とりあえず受け取ってくれ」
「何が入ってるの?」
「見ていいか?」
キリカちゃんとカーツくんは木箱の中が気になるようで荷台の上の木箱のふたを開けています。
「あ、壺が入ってる」
壺をわざわざ木箱に入れるの?割れないようにってことだよね?
なんとか鑑定団的なものを想像する。お高い壺かな?そんな壺もらっても使えないよ……。
「蓋を開けてごらん」
蓋?花瓶みたいなの想像してたけど、蓋つきの壺?
「うわぁ!はちみつなの!」
なんですって!
「はちみつ?」
思わず立ち上がって、木箱の中を覗き込む。
くまのキャラクターが抱えているような壺が木箱には入っていて、なみなみとはちみつが!
はちみつがあれば、ホットケーキがよりおいしく食べられる!間違いないです!
卵と小麦粉とはちみつ!
大きな壺なので、たくさん使えそうです。
「こんなにたくさんいいのか?高いんだろ?」
カーツ君が兵の顔を見る。
そうだ。砂糖が高い世界だ。はちみつだって高いはずだ。
というか、日本だってはちみつはそれほど安いものではない。高いはちみつは100gで千円以上なんてざらだ。
「そんな高価なもの、もらえません……」
と、小さく首を振ると、兵が笑う。
「助けた命はそんなに価値がなかったか?」
え?
「君たちが救った命は、このはちみつよりもずっと価値がある、だろ?」
兵がウインクを飛ばす。
ここで、受け取らなかったら、兵たちの命ははちみつよりも価値がないというみたいになってしまう……。素直にもらおう。
お礼の気持ち……。遠慮しすぎるのも相手に失礼……なんだよね。
「まぁ、隊長は甘いものが好きだから、これで何か作ってあげてくれれば、俺たちの株も上がるからさ」
もう一人の兵が少しおどけた調子で言った。
……サーガさんの甘いもの好きは、秘密でもなんでもなく、部下の兵たちに知れ渡っているんだ……。
「ありがとうございます」
頭を下げる。
「さぁ、荷車から、荷物を馬車の荷台に積み替えたら出発だよ」
あ、そうでした。
お読みくださりありがとうございます。
感謝が感謝を呼び、感謝です。はい。優しい世界、物語の中くらいこれでもかってくらい優しい世界だっていいじゃない……あ、日本サイドはぎすぎ……うん、そろそろ書かねばの




