18 肉なしのあれ
保温調理しておいた鍋をとってくる。ふたをとって中を確認。うん、いい感じに火が通っている。まだ鍋もあったかだ。
調理台の上に置いて、皿によそっていく。
「え、これ何?」
キリカちゃんがお皿をテーブルの上に運ぶお手伝いをしてくれる。
「本当は肉があればよかったんだけど、肉なしの肉じゃがだよ」
「肉じゃが?」
肉が入っていないのに肉じゃがっていうのもどうかと思うけれど、まぁ味付けそのほかの材料が肉じゃがなので。
テーブルに全員ついたところで、カーツ君が「ステータスオープン」と言った。
それに続いてみんなステータスを確認してから食事を開始した。
「うまい!」
カーツ君が肉じゃがを口にして租借する前に叫んだ。
「わぁ、これ、甘いよ。醤油を使ったんでしょう?醤油はしょっぱいのに、甘いよ」
「ふふ、それはね、コレ。みりんも使ったから少し甘いのよ」
薄い黄色のポーションを見せる。
「あ、それハズレの薄黄色だ!それも調味料なんだね!」
キリカちゃんがすごーいと言っている。
「カーツ、ステータスを確認してみろ」
ブライス君の言葉にカーツ君が再びステータス画面を出した。
「防御力プラス10、攻撃力プラス10になってる」
「そうか、僕もだ。……食事前と今で補正値が変化したんだ。間違いない。この食事が補正値をプラスしているんだろう」
「へー、そうなの。って、話はあとあと。冷めちゃうとおいしくないから、温かいうちに食べて。魚には、こうして醤油を少したらして食べるといいよ。あ、そうだ。酢醤油もおいしいかもしれないね。酢醤油……餃子作れないかな。ニラとキャベツはあったし、肉がなくても野菜餃子は作れそう。ちょっとあっさり味になるかもしれないけど、明日は餃子にするよ!」
酢醤油は明日の楽しみに取っておくことにして魚には醤油を少したらして食べた。
それをご飯にのっけてぱくり。
「あー、おいしい。炊き立てご飯に醤油の香り。そして淡泊だけどぎゅっと身がしまった魚は甘みもあって、最高」
「うんおいしい!」
「野菜っておいしかったんだな。畑もうちょっと手入れがんばらないとな」
カーツ君がニンジンと玉ねぎを食べながらうんうんと頷いている。
「残念だ。こんなにおいしい料理を食べられるのもあと数回か……」
ブライス君がつぶやいた。
「え?」
皆の視線がブライス君に集まる。
「今日、レベルが10になった。ローファスさんが来たら卒業だ」
キリカちゃんがぐっと唇を引き結んだ。
カーツ君は、少しだけ下を向いて、そのあとすぐに顔を上げた。
「じゃぁさ、お祝いしなくちゃだよな!」
別れが寂しいという気持ちを押し殺して笑うカーツ君。
「うんっ!お祝いならごちそう作らなくちゃ!そうなると肉が欲しいかなぁ」
「ねぇ、今日はいっぱいポーション取れたから、明日は朝、今日みたいにポーション取ったら狩りに行こうよっ!キリカもレベルが4になったから、狩りにも出られるよっ!」
狩り?
「そうだよ、ダンジョンでスライムばっかり相手にしてるよりも、たまには狩りで鍛えるのもありだろう、な?」
ブライス君が頷いた。
「確かにそうですね。では明日は、森で狩りをしましょう。食事の後に各自準備を」
「狩りって、鳥とか兎とか猪とか鹿とか捕まえるアレだよね……」
肉って言ったのは私だけど、当然の話なんだけど……。
「ごめん、みんな、動物を私、さばけないっ」
確か血を抜いてそれからどうすんの?内臓を取り出して皮をはいでとか、食べられる肉を得るまでにいろいろあるんだよね?鳥ならなんとかなる?ああ、でも自信ないっ!
「大丈夫、僕がやりますよ」
ブライス君が笑う。
うっ。子供の顔してるのに、めっちゃ頼りがいのある大人に見えたよ。
「ありがとう、でも……」
もうブライス君はいなくなるのだから、これからのことも考えたら……。
「教えてほしいというのなら、もちろん教えます」
よろしくお願いします!
「俺も俺も!ダンジョン内では必要なくたって、冒険者には必要だろ?」
「あー、キリカもっ!」




