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170 泡だて器を探す

「楽に混ぜられるなら、毎日マヨネーズが食べられるってことか?」

 毎日?カーツくん、マヨラーにでもなるつもりですか!

「さすがに毎日は……卵もいるし、それに、あんまりマヨネーズ食べすぎると体に悪いんだよ?」

 主に、脂肪分が。

「え?マヨネーズは体に悪いの?……毒なの?キリカ、また食べたいのに……」

 キリカちゃんが泣きそうな顔になった。

「毒っていうことはないから大丈夫よ。ただ、マヨネーズに限らず、どんな食べ物でもずっとそればかりを食べ続けると栄養のバランスが悪くなって体に悪いの。いろいろなものを食べたほうがいいのよ」

「栄養?」

 キリカちゃんが首を傾げる。

 ああ、そういえばこの世界、栄養もなにも、パンだけで生活してもポーション飲めば大丈夫っていう世界だった……。

 もしかして、脂肪を取りすぎた不健康な体も、ポーションでリセットされないかしら?

 そんな都合の良いことはないかな……。ははは。

「あー、分かった!剣の素振りばかりじゃダメみたいなもんだろう?腕の筋肉がついても、足も鍛えないと腕だけじゃ剣に力が入らないみたいな!バランスよく体は鍛えないとダメだっていうやつだ」

「分かった!バランスだね!ブライスお兄ちゃんも言ってた。魔法が得意だからって、魔法ばかり練習して体を鍛えないのもダメだし、剣の腕が一流だからって、勉強をおろそかにするのもダメだって」

 キリカちゃんの言葉に、カーツ君が頷いた。

「ダンジョンでは何が起きるか分からないからな。魔法だけで対処できないときに体力がなければ逃げることすらできないこともある」

 なるほど。

「剣の腕を磨いたからと言って、ダンジョンで出会うモンスターの弱点を知らないのでは戦いに無駄が生じる」

 なるほど。

 勉強になります。

 栄養に限らずなんでもバランスは大事なんだね。

 の、割りには……ローファスさんって、ちょっと脳筋っぽいけど……。

「でも、たまにしか作らないなら、泡だて器いるのか?マヨネーズ作るときの混ぜるの手伝うぞ?」

 うーん、いくら手伝ってもらってもねぇ。

「卵と泡だて器があれば、作れる料理が増えるのよ!だから、マヨネーズは毎日食べられないけれど、いろいろなものが食べられるよ!」

「キリカ、マヨネーズじゃなくてもいろいろなもの食べたい!」

「まじか!すげーな泡だて器!で、泡だて器ってどんなのなんだ?混ぜる道具って、特別な形なんてあるのか?」

 えーっと。カーツ君やキリカちゃんが知らないのは、料理をしないからなのか……。

 それとも、泡だて器がこの世界に存在しないからなのか……。

 うっ。

 存在しなかったらどうしよう。

 で、でも、しゃもじもなかったけど、靴ベラっぽい何かで代用できたし、似たようなものがあれば大丈夫だよね?

「持ち手の部分から、細い棒がカーブを描いて何本も伸びてて、丸みを帯びて球っぽい形になってるものなんだけど……」

 とりあえず身振り手振りで説明してみるけれど、カーツ君もキリカちゃんもこてんとかわいらしく首を傾げている。

 ああ、そうそう、メモとペンがあった。

「えーっと、こういう形の物なんだけど……」

 揺れる馬車の上で、ちょっといびつになったけれど泡だて器の絵を書く。

「ふえー、面白い形なの。これが泡だて器って言うの?」

 面白い形?

 何か似たようなもの、見たことない……みたいだね。カーツ君もへーと関心してるし……。

 ないの?

 そんな!

 せっかく卵が手に入るのに、泡だて器なしで、メレンゲとか、メレンゲとか、角の立った、ふんわりメレンゲとか、どうすればいいの?!

 ……フォークで頑張る?

 頑張れるのかな、私……。問題は、1回に作る量だよね。

 3人の時はいいけど、ブライス君が増えてもいいけど、ローファスさんが加わると、一気に倍の量……あ、もしかして甘いもの好きのサーガさんもネック?


 はい。

 ありませんでした。

 調理器具の置いてある雑貨屋、他にも代用になるものないかとあちこちの店を見て回ったけど……。

 途中からは、キリカちゃんとカーツ君が私の描いた絵を持ってお店の人に「こういうのありますか」って聞いてくれたんだけど……。

 どこにもなかった。

 知っている人もいなかったよ!

「ガ、……」

 ガーンと口に出しかけてぐっと言葉を飲み込む。


ありがとうございます。


ないです。泡だて器……。そして、訪れる、何か!

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― 新着の感想 ―
[一言] そこそこな腕持った鍛冶屋なら、フォーク6本を内向きに正六角形に束ねて、若干爪の間隔開いて、さらに爪を内向きくるんと曲げれば、なんちゃって泡立て器に出来そうだ。
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