169 無駄遣いはだめなのです
「キリカちゃんとカーツくんも。街に伝えに行こうとしてくれたり、小さいのによく頑張ってくれたね。ありがとう」
「うわー、ありがとうなの!すごいの!嬉しいの!銀貨なの!」
「ポーション100本分だな。キリカ、無駄遣いするなよ!」
へぇ。銀貨はポーション100本分か。
えっと、ポーション1個でパン1個。100円くらいの感覚だから、100円が100個で、10000円。1万円だね。
で、金貨は、銀貨何枚分なんだろう?
「残りは、ギルドカードに入るように手配するけれど、全部の処理が終わるのは3か月くらい先になると思う」
ギルドカードに?ああ、ブラックカードみたいに、お金が入れられるのね!
うん現金でもらうよりも管理しやすくてありがたい!
さぁ、2度目の街です。
今度こそ食材チェックです!
何があるかな。
ガタガタと、揺れる荷馬車。
この間は街から帰るときに事件が起きたんだなぁ……。と、ついこの間のことなんだけどずいぶん昔のことのように懐かしく思い出す。
「あー、キリカ、何買おうかな!」
キリカちゃんが銀貨を握り締めて嬉しそうな顔をする。
「だから、無駄遣いするなって!いつもポーションを売った時と同じようにしろよ!」
「いつも?そういえば、ポーションは月に一度ローファスさんが回収しに来てくれるんだよね?」
1日5本平均だとして、3本はパン代などに消えていたわけだから、2本の30日で60本くらい?6000円くらいを毎月収入として得られるってことかな?
大人としては生活できるような金額じゃないけど、子供のお小遣い……しかも5歳の子供のお小遣いとして考えればずいぶん高額だ。
「うん、わかってるよ。冒険者になったときに、ちゃんとした武器や防具を買うために無駄遣いしちゃだめなの。半分と、半分の半分は貯めるの。使っていいのは半分の半分なの」
そうか。ちゃんと将来のためのたくわえを子供のころからするわけだ。
あ、子供子供っていうのは失礼か。
同じ冒険者見習いっていう立場だ。
「そうそう。半分の半分な。本当に必要かどうか考えて使って、使わなかった分は貯めるんだ」
偉い!
着替え、欲しいって思ったけれど、私もなるべく貯める!
金貨3枚だから、半分の半分っていうのも中途半端なので、2枚は手を付けない。1枚だけ。
その1枚の半分以内で何とか抑えよう。最低限、本当に最低限だけにしよう。
高かったら、安い布買って作ろう。あ、ついでに、キリカちゃんとカーツくんの服も作ってあげたいなぁ。
……。
なんか、さっそく私、無駄遣いしそうだ。
……。う、うん、絶対金貨2枚には手をつけない。1枚に抑える!……あれ?私、1枚の半分とか言ってました?
えーっと、その、1枚の半分に自分の分は抑える。残りの1枚の半分は、みんなのために使う。
だって、私だけ金貨3枚とかもらっちゃったけど、みんなで頑張ったんだもんっ!だから、無駄遣いじゃないよ!そうだよね?
大丈夫、大丈夫。これでも節約上手なんだから。無駄遣いなんてしないよ。ごにょごにょ……。言い訳に必死です。だ、誰に言い訳してるんでしょうね?
「何買おうかなぁ~」
「ユーリ姉ちゃんは何を買うんだ?食材も買うんだろう?」
「そうだ、ユーリお姉ちゃんは何買うの?何を作ってくれるのかなぁ~」
「見てみないと分からないよ。肉と野菜と淡水魚は間に合ってるから」
あれ?肉と魚と野菜があれば、あとは何がいるのかな。果物……も、森でリンゴが手に入るみたいだし。
調味料類と乳製品。それから魚介類は海の物。あるといいなぁ。……少々高くても、ブラックカード使って買っても大丈夫かな?
ローファスさんならおいしいものと引き換えなら、文句は言わないよね?
ブラックカードはレシート替わりに買ったもの記載される機能がついてるんだもん。これはあれを作るために作った何々ですって説明できれば問題ないかな?
……とはいえ、日本でいうところの、人のお金でいきなりA5飛騨牛だの、白トリュフだの、最高級キャビアだの1玉5万円のメロンだのばかり買うのは駄目な人ですね。
……どうしても、欲しいものに限定で。高くても買う。胡椒とか。ニンニクとか。乳製品とか。牛乳、バター、生クリーム、チーズ……あ、よだれが。
「食材は見て回らないと分からないけれど、調理器具としては、泡だて器とケーキ型と蒸し料理に使える食器類が欲しいと思ってるの」
あんまり食材を想像しすぎて、何もないとがっかりするので、別のことに思考を向ける。
「泡だて器ってなんだ?」
「どういうのなの?キリカも知らない」
そうか。知らないよね。
「マヨネーズ作るときに、卵をいっぱい混ぜたでしょ?」
「うん、なんかフォークとか何本か一緒にして混ぜた!」
「もっと、楽に混ぜられる道具が、泡だて器なの」
カーツくんが揺れる馬車の上なのに腰を浮かせた。
バランス、バランス、大丈夫なのっ!え?私とは運動能力が違う?はい、そうですね……。
ご覧いただきありがとうございます。
半分とか半分の半分とか、半分の半分の半分みたいな言い方です。
何割とか難しいので。




