166 好き嫌い
「【契約 MPポーション料理 付与魔法1回】」
契約?付与魔法と引き換えにMPポーション料理?それがわがまま?
「ちょっと、結界魔法を施したりいろいろやっていたら、MPすっからかんになってしまって……。まだモンスター広域感知とかしなければならないんですが……」
そうか!鶏小屋を作るって、物理的に建物を建てるだけじゃないんだ。
コカトリスが逃げ出さないように、物理的な囲いのほかに、魔法的な何かがいるんだよね。
ブライス君は徹夜でその作業を……。
見た目中学生の少年なのに……あ、ローファスさんはもしかしてブライス君の年齢しらなくて、本当に中学生くらいだと思っているかもしれないのに……。
中学生に徹夜の労働させるとか!
日本だったら、捕まるよ!
もうっ、何やってんの!と、叱りつけようと思ってみたローファスさんも、かなり疲弊していてボロボロだ。
普段あんなに元気なのに、S級で、HPもたくさんあるのに……そのローファスさんがボロボロになるくらいって、かなり無理したんだろうな……。
ブライスくんも疲れている様子だけど、ローファスさんほど泥まみれの薄汚れた感じはない。力仕事はローファスさんが一気に引き受けたのかも。
「野菜取ってきたよー!」
キリカちゃんとカーツ君が戻ってきた。
「ありがとう、じゃぁ、二人とも野菜きれいに洗って、トマトはヘタを取ってから食べやすい大きさに切ってね。レタスもしっかり洗って、ちぎってね。包丁で切らずにレタスはちぎったほうがおいしいんだよ」
「わかった!キリカ、レタスちぎる!」
「俺はじゃぁトマトな!」
元気な声で二人が野菜を洗い始めた。
「すぐに食べられますから、二人は手を洗ってください」
汗や泥は、今日は細かいことは言わない。でも、手だけは洗わなきゃダメ。そこは譲りません。病気になったらいけないからね。
昨日すでに作っておいた鶏の照り焼き。
味醂と醤油の簡単な味付け。
それをフライパン代わりの鍋に放り込み、火をつけ温めなおす。そこに、MPポーションとポーションを少量投入。
少量でも効果はあったはずなので、味付けが大きく変わらないように少量ね。
それから炊き立てご飯を皿に盛る。……茶わん欲しいなぁ。やっぱりご飯っていえば茶わんだよね。
そういえば、茶わん蒸しも作りたいと思っていたけど、器がいいのがなかった。蒸すのに木製食器はちょっとなぁ。
金属製だとどうなんだろう?プリンとかには使うわけだからできる?陶器の器って売ってるのかな?売っていても高い?
でも、磁器じゃなくて素焼きの陶器なら、縄文土器とか弥生式土器とかそういう時代からあったわけだし、さほど高級じゃないんじゃないかなぁ?どうなんだろう?
うん。今日は食器類も街に行ったら要チェックだね!
「どうぞ、召し上がれ」
「うおー、なんだ、これ、コカトリスの肉。ぴかぴかしてる、油か?」
ローファスさんが照り焼きをフォークで突き刺す。
「みりんを使うと照りが出てつやつやになるんですよ。油は使ってないです」
「う、、、、、、、ん、、、、、、めぇ!」
ローファスさんがガツガツと箸を進める。まぁ、フォークだけど。
照り焼き、ご飯、照り焼き、ご飯、照り焼き、ご飯。
「ローファスさん、ちゃんと野菜も食べないとだめですからね?サラダも、食べてください」
「あ、ああ、いや、でも、これ、ユーリの作った料理でなくて、野菜だろう?いつでも食べられるから、後で食べる」
……。
「野菜、嫌いなわけじゃないですよね?」
ローファスさんの肩が少しだけ揺れたのは見逃しません。
「うわー、美味しいの。ユーリお姉ちゃんが作ったドレッなんとかかけると、ただのお野菜がおいしい料理なの」
キリカちゃんは偉いです。ちゃんと野菜積極的に食べます。
いいこいいこ。
「本当だ!すげぇ、いったいユーリ姉ちゃんはどんな魔法を使ったんだ」
魔法、使えませんよ。
「キリカちゃんとカーツくんがおいしい野菜を選んで丁寧に洗って切ったりちぎったりしてくれたからおいしいんですよ」
ドレッシングをかけても、美味しくならない野菜も実際にはあるからね。
「おー、本当に、本当だ、いや、これはいつでも食べられる野菜じゃないな!キリカとカーツが取ってきた野菜は、ここでしか食べられない!確かにうまい!」
ローファスさんが、すぐに意見を翻してサラダを口に詰め込んだ。
子供思い。
ちゃんと子供の喜ぶ言葉や態度を知っている。
「ユーリ、この、ドレなんとか?なんだ?」
ご覧いただきありがとうございます。
照り焼きぴかぴか。