164 牛!
カーツ君がプレーンオリーブクッキー。
キリカちゃんがジンジャーオリーブクッキー。
私がグミジャムオリーブクッキーを担当です。
こねこね。
「好きな形に作って焼いたら出来上がりよ!」
この、形を作るのが粘土みたいで楽しいんだよね。ふふふ。
チョコというか、ココアなんかあると、茶色い生地もできて形作りに幅が広がるんだけどなぁ。
あ、MPポーションを煮詰めて、コーラクッキーも作れば色が付いたか……まぁ、それは今度のお楽しみにとっておきましょう。
私はグミジャムをまぜてあるので、手にジャムがついて形を作るのはむつかしいので、スプーンで鉄板に落としてぎゅっと上から押して丸くしておしまいです。
「型抜きとかあると楽しいんだけどねぇ……」
「型抜きってなぁに?」
キリカちゃんの質問に、答える。
「へー、楽しそうなの!でも、キリカ、見たことないよ?」
「俺も、見たことも聞いたこともない。っていうか、クッキーも初めてなんだけどな」
「キリカもー。食べるの楽しみなの!」
二人がニコニコしている。
クッキー、作るのも初めてだけど、食べたこともなかったんだね。そうだよね。砂糖が効果な世界だった。時々忘れちゃうけど。
お菓子に分類されるものは、きっとほとんど食べたことないよね。
二人の笑顔が見られるなら……。いろいろ作ってあげたいなぁ。
シュークリームなんて驚くんじゃないかなぁ?
ぺたんこの生地がみるみる膨らむのとか。ふふふ。
って、バターがいるよ!バター!ぐぬぬぬっ。牛!やっぱり、牛欲しい!
「できた!」
「ふふ、キリカちゃん上手。これは?」
「あのね、これがね、ユーリおねえちゃんのお顔で、こっちがローファスさんなの。これがキリカで、こっちがカーツおにいちゃん。これがブライスおにいちゃんで、これはサーガおにいちゃんね。あと、これはおにぎいなのよ」
クッキーで顔を作ってあった。目や口は、フォークやスプーンで書いてある。
説明をされないと、誰が誰だか分からないけれど、みんなニコニコ笑顔で幸せそうだ。
「このおおきなおにぎいがね、ローファスさんのなの。で、こっちがキリカのよ」
どうやら、おにぎりも誰のと決まっているらしい。ふふふ。
「焼きあがるのが楽しみね」
「俺は、剣作った。こっちはクラーケンで、これがユーリねえちゃんの包丁な!」
カーツ君は物語風になってるようです。
「さて、じゃぁ、二人は手を洗って寝ようね?」
まだオーブンの中には私が一番初めに入れたグミジャムクッキーが入っています。
一度に焼ける量には限界があるんだよね。てなわけで、焼きあがったら、次はキリカちゃんの。その次はカーツ君のを焼くわけで。まだ全部焼きあがるのには時間がかかりそう。
気が付けばいつも寝る時間を過ぎていて、キリカちゃんとカーツくんは眠そうだ。
「明日、みんなで食べようね」
「うん。わかった!」
「おやすみなさいユーリねえちゃん」
素直に二人は寝る準備を始めた。
焼けるのを見るのも楽しいんだけれど……。二人はわがままを言ったりはしない。
火の魔法石なので、ありがたいことに180度と言えば180度で加熱はしてくれるんだけど、オーブンのサイズだとか、熱源と鉄板との距離だとかで焼き時間は変わってくる。
様子を見ながらオーブンから出さないと黒焦げになってしまう。というわけで、オーブン前から離れるわけにはいかないので、台所にいる。
ローファスさんとブライス君はまだ戻ってこないけど、どこ行ったんだろう?
っていうか、ローファスさんが戻ってきたときに、クッキー食べられないように用心しないと!
明日起きてきたキリカちゃんとカーツくんが泣くようなことにならないように。死守しなければ!
グミクッキーを取り出す。うん、美味しそうに焼けた。
鉄板を入れ替えて火をつけたときに、ガチャリとドアの開く音。
ローファスさんかっ!
身構えて振り返れば、ブライス君が入ってきた。
「あ、ユーリさん、まだ起きていたんですね?」
「ブライス君も、まだ起きてるの?」
「ええ。まだ完成してませんから」
完成?
ありがとうございます。
改めて考えると、洋菓子関係の牛依存率って高いですねー。本来クッキーもバターですし……。
和菓子へシフトしたらいいよ、ユーリ。
次は「あんこ、あんこ、あんこが欲しい」って思ったらいいの。




