163 ちょっとの材料でできるの!
「ああ、それなら午前に王都の補給物資をまた町まで取りに行くので、一緒にどうぞ」
「本当?ありがとうございます!泡だて器を手に入れたら、さっそくシフォンケーキ作る練習もしますから、えっと、出世したときには、お祝いのお菓子作りますね!お仕事頑張ってください!」
「ユーリちゃん……私は頑張りますよ」
サーガさんがきらりと歯を光らせる笑顔を見せて小屋を出ていった。
やる気が出るのはいいことです。
「ユーリさん、本気ですか?本気で、サーガさんの養子になるつもりですか?」
ブライス君の顔が困惑している。
美少年の困り顔っていうのも、なかなかみられるものじゃないよねぇ。
「ローファスさんの養子というよりはましですけど、でも……うーん、いや、公爵家とつながりがあったほうがユーリさんの身の安全は……」
眉を寄せ、額に手を当て、さらに困惑を深めるブライス君。
「えーっと、誰かの養子になるつもりはないよ?」
もう三十路ですし、今更誰かの養子になるとか、必要はないですよね?
「え?でも、先ほどユーリさん、養子もいいなというようなことを言っていませんでした?」
あれれれ?もしかして、私、口に出てました?
「それは、私が養子を持つのもいいなぁっていう話で……」
「ユーリさんの養子……?」
こくんと頷く。
「たくさんの子供たちと一緒に暮らす生活っていいなぁって。でも、養子と一緒に幸せに暮らすためには、いっぱいお金稼がないとだめだよね?」
ブライス君が顔から困惑を捨てる。そして、きりりと強い光を目に宿した。
「分かりました。たくさんの養子を迎えられるよう、早くS級冒険者になれるように頑張ります」
ん?
S級冒険者にならないと、たくさんの養子を迎えられないの?それって、私には一生無理とかいう話なのでは……。
っていうか、ブライス君もたくさん養子が欲しいの?
……と、とにかく、私S級は無理だけど、うん、なんか食堂とか比較的生活安定できるように頑張って、それで、たくさんは無理でも、2人か3人くらい養子を迎えられるのを目標にしよう。
ブライス君も手早く食器を片付けて小屋を出ていった。
この間、街へ行ったときには食料品を見て回ることができなかった。
今度はもう少し計画的に街を回らなければ。
まずは料理道具を扱っている店を見て回って泡だて器を探す。それから、食料品のお店を回る。
あ、そうだ。ハンノマさんのお店にも顔を出してみようかな。まだ帰ってきてないかな?
包丁のおかげで命拾いしたから、お礼も言いたい。……クッキーでも焼いて持っていこうかな?でも、いなかったら、日持ちもしないし……。
いいか。みんなで食べれば。
えへ。
油様がございますので。
一番簡単なクッキー。
「オリーブオイルと、小麦粉と、砂糖のみ!」
これが簡単だけど病みつきになるおいしさなんだよね。
日本の子供たちと一緒に作ったりもしたなぁ……。
砂糖は貴重だから、砂糖半量にして、代わりにグミジャム入れたものも作ろう。
あれ?だめだ。グミジャムにはポーション効果がついちゃう。新たにクッキーという料理にすると、私の場合10の補正効果。
……でも料理してから時間たつと減るから、えーっと、6時間で1減るでしょ?2日半で効果はなくなる。クッキーなら、2日半くらいで食べられなくなるなんてことはないけど……。
よし。グミジャム入りは、ハンノマさんには渡さずに秘密を共有している人だけね。
オリーブオイルの補正効果はどうしよう。命中率100%……。
うーん……。ハンノマさん、別に戦うわけじゃないから、大丈夫かなぁ?
今は、7時くらいの感じでしょう。明日の朝7時で効果は2へるから、命中率80%くらいになってる?昼頃には70%……。
夕方には60%か。
まぁ、60%くらいならちょっと調子いいな!よく当たる!くらいだよね。大丈夫。
少し寝かせないといけないで、夕食の後に食べてくださいとでも言えば。よしよし。
じゃ、作りますか!
ジンジャークッキーっていうのもいいですね。
ちょっとジンジャーエール風味のポーションを煮詰めて水分飛ばして、砂糖とジンジャーの代わりに混ぜてみましょう。
こねこね。
「ユーリおねえちゃん、何作ってるの?」
あ、そうだ。
クッキーつくりは子供たちの楽しみだった。
そして、私が作らなければ、補正効果も小さい。朝には消えてなくなっていますね。
「キリカちゃん、カーツくん、一緒にクッキー作ろうか!」
ご覧いただきありがとうございます!
オリーブオイルクッキーは、やみつき派と苦手派に分かれるようなので、元々オリーブオイルはちょっとなぁって人は難しいのかなぁ?




