162 養子!
私もいつか……、たくさんの家族に囲まれて生活したいなぁ。
「養子……」
そうか、子供が産めなくても、養子を迎えれば子供を持つことができるんだ。
「いいですねぇ……」
日本では養子縁組のハードルはとても高かったと思う。だけど、この世界では違うんだ。
きっと……。
「ユーリちゃん、それって……ユーリちゃんが私の……」
いっぱいお金を稼いで、それで、養えるなら、養子を迎えられるんだよね。
ってことは……。
「安定して稼いで、たくさんのお金を持って大きな家に住んで……」
うわー、そう考えると、日本よりもハードル高い?
うぐ。頑張ろう!
頑張って、頑張って、
「分かりました。頑張ります!」
へ?
サーガさんが私の手をとりました。
何?
「頑張って出世して、安定した地位を築き、大きな家に住んで、美味しいお菓子を食べられるために、私は、頑張りますよ」
は?
えーっと。
おいしいお菓子のために頑張るとか、その発想は、まさにローファスさんそのもの。
似たもの兄弟。これが、もし、ローファスさんたちの血だとすると、両親もそういう感じだったりして……。
あれ?でも、親が食道楽なら、もう少し今までおいしいもの食べてるよね?
うーんと、この世界の食事って、頑張ってもさほどおいしいもの手に入らないってこと?
砂糖や香辛料が高価だとしても……。うーん……どうなっているんだろう。一度この世界の食事も食べてみたくなった。
そのためには街に行かないとなんだよね?
それはそうと、いきなりなんで頑張る宣言をしてるの?
「ありがとうございます。ユーリちゃん。私は今まで、兄が家を出たせいで面倒な役割を押し付けられたと思ってこの仕事をしていました。もちろん、責任を持って仕事はしていましたが、それだけです。それではいけないんですよね……」
押し付けられた……か。それはまぁ、モチベーション上がらなくても仕方がないけれど……。
「歴史に名を残すような名将になれるように頑張ろうと思います。もっと、出世して、必ず、ユーリちゃんを迎えに来ますから!」
「迎え?え?」
それって、美味しいお菓子を食べるためとか言っていたし、出世のお祝いにおいしいお菓子を作ってほしいってことなのかな?
「サーガさん、ちょっと」
ブライス君が口をパクパクしている。サーガさんのお菓子熱にあきれてる?
でも、うん、ご褒美お菓子のために、仕事頑張ろうっていうモチベーションのあげ方は、日本ではメジャーだから、問題ないよ?
ご褒美のおいしいお菓子か。
おいしいお菓子と言えば、ケーキ。
ケーキと言えば……。
卵が手に入るようになったのは幸いです。生クリームがあればデコレーションケーキも作れますが、うーん、現状はむつかしいのです。
バタークリームも、カスタードクリームも、とにかく牛乳!
と、ないものを嘆いても仕方がありません。
「ふわふわのシフォンケーキ」
そうだ!シフォンケーキなら作れる!
卵、小麦粉、砂糖、それからサラダ油と水と塩。
全部ある!
あ、型がない。
型と、それから……やっぱり、泡だて器が欲しい。
ホットケーキなら、多少泡立ちが悪くてもまあいいだろうけれど……シフォンケーキを作るなら、完璧に泡立てたい。じゃないと、あのふわふわの天使ともいわれるあの食感は得られない。
「む、迎えとかいいので、えっと、泡だて器が欲しいんです、街に行けば買えますか?」
シフォンケーキはバリエーションも出しやすい。紅茶のシフォンケーキ、クルミのシフォンケーキ、あ、紅茶もクルミもない。えーっと、まぁ、そのあたりは後々考えるとして……。
「泡だて器って、なんですか?ブライス君、知ってますか?」
「いえ、料理は僕もあまりしてこなかったので知りませんね」
……もしかして、ない?
「あの、街に泡だて器を探しに行きたいんですけど……」
街まで行くのは、明日ブライス君とローファスさんがギルドに行くのに一緒に行けばいいだろうか?でも帰りはどうしよう?
タクシーみたいな、そういう物や人を送る職業の人とかいる?
あ、ローファスさんがそれか。ダンジョンの荷物を回収して運ぶ仕事してた。
ってことは、ギルドで荷物とか人を運ぶ仕事をしてる人を探して頼めば小屋に送ってもらえる?歩いて帰る?
私、レベルがあがって、少し体力ついたし……。休み休みなら何とかなるかな?
いつもありがとうございます。
おーい、ユーリさん、脳内の言葉が外に漏れてる、それ「璃々亜化」じゃないか……。
あ、璃々亜ってのは、「オタクガール、悪役令嬢に転生する。」の主人公。
コメディです。腐女子的妄想が入ってくるけれど、メインはそこじゃなくて、高校対抗キングハイスクールトーナメントで優勝を目指す話……っていうわけでもなく、まぁ、暇つぶしに読めるお気楽コメディです。
……ぐはっ。




