17 合法でも無理!
「そうか……。あの、皆には黙っていたんだけど、僕、少しだけエルフの血が流れていて」
エルフ?
ふぁ、ファンタジーだ!
「人よりも成長が遅くて」
ああ、長寿な種族とか言うもんね、エルフって。
「こう見えても、年齢だけで言えば28歳なんだ」
ん?
え?
は?
合法ショタか!
いやいやいやいや、見た目は小学生頭脳は大人とか、無理、無理無理!いくら実年齢近くても、見た目小学生にときめくとかそんなやばい精神持ってないから!
小刻みに頭をフルフルと横に振る。
「……逆に年上すぎていやかな?」
いや、年上じゃないよ、まだ私の方が上です。って、言ったらどうなる?
っていうか、私をいくつだと思っているのだ!
「その、もちろん婚約という形で、ユーリさんが成長するのを待つし……あの、僕もあと5年もすれば見た目と年齢のギャップもそれほど無くなるはずだから……」
にこっと笑われましたが、笑えない。
「いえ、そういうことじゃなくて、あの、本当に気にしてないから。うん、えっと、責任を取って結婚するとかそういうの必要ないです!」
「責任じゃなくて……黒い大きな瞳が魅力的だと初めて見た時に思った。素早い動きでスライムを倒す姿がかっこいいと思った。そして……おいしいものを作れるところに惹かれた。何も言わずにポーション畑を卒業しようと思ったけれど、でも、その……」
照れた顔で言われても、言われてもな……。
幼稚園児が保育園の先生に「先生と結婚するー」って言われているくらい現実味がないよ。
だって、目の前にいるのは、中学生にしか見えない男の子なんだもん。いくら年齢が28歳と言われても……。
「ごめんなさい。その、」
もし本人が気にしているのだとしたら傷つけちゃうかもしれないとは思ったけれど。中途半端に期待を持たせることの方が罪だ。
きっと、ポーション畑を離れてしばらくすれば忘れる。
「見た目が年下の男の人とは結婚できませんっ!」
もう一度ぺこりと頭を下げる。
「うっ」
胸元を抑えてブライス君が膝をついた。
うお、ごめん。でも、でも。
「いいよ。ユーリさん。どうせ5年は我慢するつもりだったんだ。成長が遅かった分、僕のエルフの血は濃いってことだから。5年たったら、エルフらしい男になってもう一路ユーリさんの前に現れるから」
え?
エルフらしい男ってなんだ?
耳が尖って、弓矢を持っているのかな?……それくらいしかエルフについて知らないんだけど。
「ユーリさん、魚釣ろうか。料理してくれるんだよね?」
「う、うん。本当は塩とかあるといいなぁとは思うんだけど、醤油があれば魚もおいしく食べられると思うよ」
淡水魚は普段あまり食べなかったから、頭に浮かんだのは鮎の塩焼き。たしか醤油をたらしてもおいしかったはずだ。
「醤油、本当においしかった。塩のようなしょっぱさと、焼けたときの香ばしさと、なんだろう不思議な味だった」
「そっか。あ、そうだ。この世界にはどんな調味料があるの?塩とか砂糖は普通に手に入る?あと香辛料類もあるのかな?」
「僕は料理をあまりしないから詳しいことは分からないんだ。塩は国が管理しているから手に入らないような値段になることはない。砂糖は高級品で、貴族が食べるもの。香辛料と呼ばれるものも貴族は食べていると思う」
そうか。いやぁ、どこの世界も似たようなものか。
地球でも歴史的には砂糖も胡椒も金と同じ価値があったんだもんねぇ。
そして、塩が国が管理してるってのは課税対象になっているのか、国が海に面していなくてすべて貿易に頼らなくてはならないのか……。
香辛料が手に入りにくいのだとすると、ハーブ類はどうなんだろう?
畑には香草類がいくつかあったようだけれど、ハーブは姿を見なかったなぁ。
ブライス君はそのあとはいつも通りだった。流石に見た目は子供だけど中身は大人だ。私が困るようなことが無いように気を使ってくれているのだろう。
それか、もう一時の興奮状態が覚めて気持ちも落ち着いたのかな。
「夕飯できました!」
魚はオーブンで焼いただけ。ご飯の火加減はブライス君に見てもらった。
テーブルに鍋ごとドーンと置いた。
「食べられるだけここからお皿にとって食べてね。
しゃもじはないので、大きめのスプーンを一つ鍋に突っ込む。
「あ、そうだ。もう一つあったんだ。待っていて。