158 ローファスさんが倒れ……
「飯!めっしぃーーーーーーっ!」
ドドドドッと、勢いよく小屋に入ってきたのはローファスさんでした。
一番乗りですが。残念ながら……。
「ローファスさん、ちゃんと体についた土を外で払って、手をきれいにしてから席についてください」
出直しです。
シュンッと肩を落として出ていくローファスさん。
「ねぇ、ユーリお姉ちゃん、お手伝いしてないのに、食べていいの?」
と、キリカちゃんがローファスさんの背中を見て尋ねた。
「そういえば、夕飯づくりを手伝ってくれたのって、キリカちゃんとカーツ君だけだったっけ?」
ドサッ。
あれ?ローファスさんが倒れました。
地面にどっさり倒れました。
え?
ええ?
「お腹がすいて、死んじゃうぞー」
とかつぶやいてます。
「兄さん、死ぬ前に携帯食でもポーションでもなんでも口に入れればいいでしょうっ!ったく、上級ポーション飲みますか?」
と、サーガさんがあきれ顔。
えっと、あの……。
「ローファスさん、ユーリさんの同情を引こうと思ってもだめですからね?空腹で倒れるなんて自己管理ができていないって、逆にあきれられますよ?」
「あきれるっていうか、空腹ってだけで、ばったり倒れる人、初めて見ました……」
普通、こう、なんていうか……。
徐々に動きが鈍るとか、座り込むとか、なんか……まさか、元気に小屋まで走ってきたあとに倒れるなんて……。
漫画みたい。
地面に伏したままのローファスさんの手がフルフルと震えながら持ち上がります。
「上級ポーションより、ユーリの料理がいい……」
ぷっ。
変な人!
「大丈夫ですよ。コカトリスの飼育場を作っていたってことは、卵っていう食料確保のために働いてくれていたってことですから。つまり、ご飯の準備のお手伝いしていたことになります。みんなの分もちゃんと作ってありますよ」
ローファスさんはシャンっと立ち上がって、すたすたと歩いて行きました。
パンパンと激しく服についた土を叩き落としています。それから手を洗って、戻ってきました。
「今日の夕飯はなんだ?」
ニコニコ笑顔で椅子に座りました。
うーん、面白い人。
「これは、リンゴの皮で作ったきんぴらです。それからご飯と、コカトリスの肉と麻痺回復草と大葉炒め。サラダはオリーブオイルと塩でどうぞ。あと、麻痺回復草の醤油和えです」
「ふわぁ、リンゴの皮が料理になったの!いただきますなの!」
キリカちゃんがリンゴの皮のきんぴらを口に入れる。
「あ、そうだ。ステータスオープンなの。えーっと、補正値が付いたの。攻撃力と防御力」
うん。醤油とみりんを使っているからね。
「おいしい。キリカ、これ乗せてご飯食べるの好き!」
うんうん。きんぴらって、ご飯に合うよね。
「リンゴの皮の料理ですか……ユーリさんの料理はいつも驚きにあふれていますね」
ブライス君がステータスを確認してからリンゴのきんぴらを口に入れた。
「おいしいです。リンゴ一つで色々楽しめるんですね」
うん。私もレシピを知ったときは驚いたよ。お菓子じゃなくて料理に?って。
しかも、リンゴの皮って日本じゃ捨てるのが割と普通だったから、皮が使えるのってすごいなぁと思ったなぁ。主人は「しっかり稼いでるのに、俺にゴミクズを食わせる気か!」って怒ったけれど。おいしいのに……。
「うんめぇー、なんだこれ!コカトリスの肉となんだっけ?ステータスオープン。ぐお、状態表示に耐麻痺になってる、これ、麻痺回復草料理の効果か?」
「へぇ、耐麻痺が付くんですね。麻痺させられてから草を口にするよりも便利ですね」
「ん?あれ?麻痺回復薬、あんまり口にすることないから気が付かなかったけど、この間ユーリが料理に使ったハズレ毒消し草に味が似てるな?」
麻痺回復草の醤油和えを食べたローファスさんが気が付いたみたいです。
「そうなんです!毒消し草は、わさびだったんですが、この麻痺回復草は山わさびだったんですよ!山わさび!ほぼ一緒です」
「へー、そうなんですね。色形が違うし、めったに口にするものでもないので気が付きませんでした」
ニコニコ笑顔になるのは仕方がない。
だって、ハズレ毒消し草は市場に出回ってなくても、麻痺回復草はハズレって言われてないんだから、市場で取引されてる品なんだよね?
本わさびは無理でも、山わさびで十分なのです。
「ん?こっちのコカトリスのにも使ってるって言わなかったか?全然辛くないぞ?」
「ああ、火を通すと辛みが飛ぶんですよ。だから山わさびの風味だけが残るんです」
ご覧いただきありがとうございます。
ローファスさん下げが続いている……(´・ω・`)
だって、面白いんだもん。
ユーリも面白いと思っているからいいんじゃないかな……?
やるときはやる男っていう緩急を目指し……ちょっと下げすぎか?!




