152 ドロップ品、ハズレ魔石
「じゃぁ、飼育場を作る続きをしてきます」
サーガさんがブライス君とローファスさんを連れて出ていった。
小屋に一人残される。
……静かだ。
私、日本にいた時……。マンションの部屋で毎日、一人で主人の帰りを待っていた。
その時も、こんなに静かで……そして。
「寂しい」
一人って寂しい。
こんなに寂しかったっけ?
「ユーリお姉ちゃん、見て見てコカトリスのしっぽが消えたら、これ、出てきた!」
「ユーリ姉ちゃん、ここまでできたけど、あとはどうする?」
キリカちゃんとカーツ君がほぼ同時に小屋に戻ってきた。
心の奥がほわっと温かくなる。
そうだった。
私、一人じゃない。一人じゃないから、一人にされると寂しいのかもしれない。
みんなといるのが当たり前になっちゃったから……。
「ねー、これ、ハズレの何かだと思うんだけど、ユーリお姉ちゃん、ハズレでもハズレじゃないって言うから持ってきたよ」
小さなキリカちゃんの手の平に乗っている、いびつな形をした黒茶けた塊。黒焦げになった芋のような、小石の出来損ないのようなものに見える。
「げー、それってキリカ、ハズレ魔石じゃないのか?なんか動物のフンだとかいう話だぞ!」
あ、はい。そうです。
見ようによっては乾燥した動物のフンに見えます。
……考えないようにしてたのに……。カーツ君は素直です。
でも、せっかくキリカちゃんが持ってきてくれたんですから……。
「見せて」
確かめもせずいらないというわけにはいきません。
キリカちゃんの手から受け取って、顔の前に持ってくる。
あれ?
これ、小さいけれど……。
黒茶けた石のように見えるこれ……。
鼻の前に持ってきて匂いを嗅ぐ。
「!」
やっばぁーーーい!
「キリカちゃん、あのね、わがまま、私、わがまま言ってもいいかな?」
「何?ユーリお姉ちゃんのわがままって?」
「カーツ君も……許してほしいんだ、あの、みんなで食べられないけど、私、食べたいものがあって……」
「みんなで食べられないって、ユーリ姉ちゃん一人で食べるってことか?別にいいけど。だって、もともとユーリ姉ちゃんいなくちゃ何も食べられなかったんだから。なぁ、キリカ」
「うん、そうだよ。ユーリお姉ちゃんが自分の分だけ作っても、わがままだとは思わないの。逆に、キリカたちの分を作ってくれるのが優しいことなの。ダンジョンルールでは、人に期待するななの」
ああ、そういえば。ダンジョンルールなんてものがありましたね。
……自分のことは自分でするのが基本でした。何かしてもらいたいなら、契約するんでしたね。
……。うーん、でも、みんなの前で自分ひとりだけ食べるのって、すんごく心苦しいんだよなぁ。
でも、材料足りないもんねぇ。
困ったなぁ。
よ、よし。なんとか子供たちの分は量は少なくなるけど作れるはず。
大人には我慢してもらう。
……。
私も、子供。
……だから、食べても大丈夫。
は、ははは。
知らないよ。子供だと思ってる人たちのことなんて!
ってなわけで、大食いのローファスさんと、サーガさんには遠慮してもらおう。
泣くかな?知らないさ。
代わりに、えーっと、一品用意すればいいよね。麻痺回復草だっけ。あれ、子供向きじゃないから、うん。ちょうどいい。
よしよし。
んじゃぁ、作りますか!
「ふんふんふふぅーんふふふーん」
キリカちゃんとカーツ君が張り切ってお手伝いしてくれようとしてるので、ご飯を炊くのはまかせます。
それから野菜と肉をカットしてもらう。
私は……。
いつもありがとうございます。
出てきました!
ユーリが子どものフリをしてでも食べたい品!なんだぁ!