16 結婚?
ふたを開けて匂いを嗅ぐ。
「あ!この匂いは……」
もう一つ似たような色のもの。
「え?この匂いって……」
それから次のは
「うへ、直接匂いを嗅ぐものじゃないっ、でも、これ、あれだ」
ミリンに、料理酒に、酢。
どれもこれも確かに飲むとすごいことになる。料理酒やミリンはお酒として飲まれないようにわざとまずくて飲めない味にしてあると聞いたことがある。
それから酢なんて……薄めずそのまま飲むとか想像しただけで何の罰ゲームなのか。
今度は黒い方。
醤油。ソースもあるかと期待したけれどなかった。
あとほしいのはケチャップとかマヨネーズとか……どれもちょっととろみがついて濃度が濃いものだから、ポーションのように液体状じゃないから出てこないのかな?
えへっ。それにしてもだ。
畑から玉ねぎとニンジンは取ってきてあるし、じゃがいもは出てくるんだから。
ちょっと足りない材料もあるけど、仕方がない。
そうだ、卵はこの世界には無いのかな?自動販売機から出てくるといいのにな。
材料刻んで煮て味付けて、火の魔法石の消費を節約するために、鍋は火からおろして使っていない部屋の布団でぐるぐる巻いて保温調理。
あとはご飯と、何かメインディッシュが作れるといいんだけどなぁ……。湖に行ってみよう。釣りなんてしたことないから釣れるかわかんないけど。
小屋から西側にすすすむと川湖があると言っていた。バケツと釣り竿もどきを持っていく。木々の合間から、光を受けてきらきらと輝く水面が見えた。
うわー、きれい。
透き通った水。魚が見える。
……。水浴びとかしてもいいかな?
小屋には残念ながら風呂もシャワーもなかった。日も高く気温も温かい。今なら水に入っても風邪をひくことはないだろう。
きょろきょろとあたりをうかがう。怖い獣もいなさそうだし、人目もないし。
「冷たっ」
少し水は冷たいけれど慣れれば大丈夫だ。
あー、石鹸もほしいけど、水浴びできただけでもラッキーだと思わなくちゃ。どっかに温泉とかわいてないかなぁ。日本人はこういうとき不便だよね。風呂がないとなんかそれだけでテンションが下がるっていう不便な生き物。
もともと風呂に入らない民族なら異世界転生しても平気なんだろうなぁ。
ガシャンッ。
大きな音がして振り向く。
「ご、ごめんなさいっ」
足元に落としてひっくり返ったであろうバケツ。
真っ赤な顔したブライス君が立っていた。
「あ……」
ごめん。おばちゃん、子供ばっかりだから無防備になりすぎた。
そうだよね、ブライス君の年ともなれば、女の子を意識するだろう年齢だよね。
下半身は水の中だけれど、あまり豊かではないが多少はふくらみのある胸は水の外だ。ごめん、まじごめん。
トラウマになってなきゃいいけど。
「私こそごめんねっ、あの……」
ブライス君が後ろを向いてくれたので、そのまま水から上がり、服を身に着ける。あータオルもない。何やってるんだ、いい大人なのに、私。
「もう服着たから大丈夫だよ。ブライス君も魚取りにきたの?私も、釣りをしようと思ってきたんだけど、えっと」
ブライス君に、私の方は何でもないことなんだよーと伝えたくて普通に話をしてるんだけど、ブライス君は向こうを向いたままだ。
うーん、このまま気まずい感じになるのはいやなんだけどなぁ。
しばらく沈黙が続き、ブライス君が意を決したという顔をして振り向いた。
「ユーリさん」
「はい」
「結婚しましょう!」
え?
あ?
まさか、裸を見た責任を取って結婚とか、こっちの世界ってそういうのあったりするわけ?
いやいやいや、今のただの事故だし、私はすでに結婚してるし。まぁ離婚間近ではあったわけだけど。
っていうか第一ね、私おばちゃんだから!三十路よ、三十路。それでもって、ブライス君13歳くらいだよね?
日本じゃぁ、青少年保護法ってあってな、それから婚姻に関する決め事もあってな、男の子は自分の意志で結婚できるのは二十歳になってから。十八になれば親の許しがあれば結婚できるけど、どうひいき目に見たって、ブライス君せいぜい15歳でしょ。って、違う、私はショタコンではありません!
「ごめんなさい。年下の男の子とは結婚できませんっ!」
ぺこりと頭を下げる。
ご覧いただきありがとうございます。
タイトルに更新しやすいように話数を入れました。タイトルとしての意味はありません。
さて、後書きの場を借りて裏話を一つ。
本当は子供たちはもう一人いました。
ちびっこたち
カーツ、キリカ、レイ
まとめやくのブライス
……。名前をね、考えるのがねニガテでしかも、覚えているのがさらに苦手で、忘れないように、忘れないようにと名前を考えた結果です。
カーツ、レイ、キリカ……子供3人と言えば、何か連想できませんか?
まとめ役のブライス……ほ、ほら、分かった人はおめでとうございます(何で!)
今後ともよろしくお願いいたします。