150 高度鑑定魔法ということで
ふふふ。みんな笑顔。あ、違った。
「僕にはお土産ないんですか?」
ブライス君は笑っていない。
「何いってんだ。お前も王都に行くんだよ!」
「え?いや、ローファスさんが王都へ行っている間、僕は小屋で待ってますよ」
ローファスさんが、こぶしをつくって、ブライス君の頭を挟んでぐりぐり。
「い、痛いですよっ、何するんですか!」
「お前も王都へ行くんだよ、クラーケンとバジリスク討伐に最前線でかかわったからには、ギルド本部への報告義務がある。今後、現れた時のために戦闘は詳細に記録されるからな」
へー。
「あれ?そうすると、ユーリさんもバジリスク討伐に関わったことに……?」
え?
え?
「えー、もしかして、ハンノマさんの包丁……」
投げたやつ?
「そういえば……」
ローファスさんがこちらを見た。
そして、困ったように頭をかいてる。
「だ、ダメですよ!どうやって説明するんですかっ!命中率がハズレMPポーションオリーブオイルで上がったからとか、言えないですっ!」
オリーブオイルでカラリと揚がったバジリスクの唐揚げ食べたら、命中率が上がりました。って、なんで、この場で揚がったと上がったでダジャレとか想像してるんだろう、私!
混乱してるんだ、混乱っ!
「そうです。ユーリさんのことは知られたら、ギルドが……保護するかもしれませんよ」
保護?
えーっと、悪い人から守ってもらえるってこと?
なんで?
弱いから?
「保護……ですか。ユーリちゃんをギルドが……」
サーガさんがいやそうな顔をする。
「保護という名の囲い込みですね。ギルドに保護されてしまえば、いくら公爵家といえ手は出せなくなります」
「囲い込み?」
なんとなく、SPが付くみたいなのを想像したけれど、そうじゃないの?
安全な建物に入れられてずーっと出てこれないとか、そっち系の保護?
うっわぁ、それはいや!
「おい、ブライス、王都につく前に戦闘時の状況の口裏合わせだ」
「はい。そうですね。あの切り口……ハンノマ印の武器を使ったといえばごまかせるかもしれませんが、その武器が何か尋ねられるとまずいかもしれません」
「ああ、俺か、おまえの魔法か、とりあえずどういう状況でどのように倒したか、綿密に打ち合わせるぞ」
「……あの話はどうするんだ?クラーケンとバジルで、バジリスクの毒消し効果があった話。それもユーリちゃんが料理したものだが……」
あ。そうですね。
この世界ではタコはそもそも食べなかったのを、私がタコの話をしたからで……。
バジルと組み合わせたのは偶然だけど。
あれ?バジルに毒消し効果があったんだっけ?クラーケンと組み合わせる以外にも効果があるのかな?
うーん、よくわかりません。
「なぁ、サーガさん、ブライス兄ちゃんが高度鑑定魔法使ったことにしたらどうだ?」
サーガさんがカーツ君の腕をとる。
「それだ!うん、それだ!高度鑑定魔法で、病気の原因がコカトリスだと気が付き、特効薬の作り方を知ったとかなんだとかいえば……」
「実際、ブライスが高度鑑定魔法使えるしな。国内にほかに高度鑑定魔法が使えるやつは数えるほどしかいないし、わざわざ無駄な鑑定なんてしないだろう」
「真実味を持たせるために、空になった魔力増強魔法石を持っていきますか?」
サーガさんが取り出した石を見て、にやりとローファスさんが笑った。
「今回の騒動を収めるために消費したといえば、ギルドが魔力状況魔法石の代金を払ってくれるかもしれないぞ、サーガ」
えーっと。
「それ、詐欺って言いませんか?コカトリスを飼育するために高度鑑定魔法を使ったんですよね?」
人命救助のためならギルドも払うかもしれないけど、卵が食べたい、鶏からが食べたいっていう食欲のために支払わされたって、後で知ったら……。
「どちらにしても、将来的にコカトリスの繁殖や飼育はギルドも一枚かむことになるでしょうから問題ないんじゃないですか?むしろ、本来なら高度鑑定魔法の依頼料ももらえるくらいだと思いますよ」
いつもありがとうございます。
はうー、夏バテーみんな大丈夫?まだ暑さのピークがやってくるとか、ずっとピークだよ……ね?