145 ニワトリとコカトリスで、ニワトリス
ああ、それに、早めに食べましょうというのの一つに……。
「サルモネラ菌の増殖とか……」
そう、保管状態によっては、食中毒を起こすくらいの量に増殖しちゃうっていう話。なるべく早く食べるというのは菌の増殖を最小限にして危険を回避するっていう意味合いもあったはず。
「え?何のことですか?」
ブライス君が振り返った。
細菌やウィルスとか、この世界ではどうなんだろう?
「えっと、毒とか、その、万が一えっと、卵に付着してたりとか……」
ブライス君がぽんっと手を打った。
「ああ、確かにそうですね。万が一、尾の毒が卵に付着していたことのことを心配しているのですね。大丈夫ですよ。すべての卵には出荷前に浄化魔法を義務付けます。あと、ユーリさんの言っていた、温めてもコカトリスが生まれない卵だけを市場に流すことにしますし、それから……」
あ、はい。
なんだか短時間の話し合いで、ブライス君とサーガさんはかなり細かいところまで安全性について詰めたようです。
「うおわぁ!」
ローファスさんがいきなり大声を出す。
「卵!」
ローファスさんのつかんでいた鶏……しっぽを切り落とされたコカトリス……いや、もう、鶏とコカトリスを合わせて、ニワトリスでだめかしら?ニワトリスが、卵を産みました。
が、空中1.5mの高さから落下する卵。
「はっ!」
そこに伸びた手が、地上5センチのところで、卵をキャッチしました。
「ナイス!カーツ!」
「カーツお兄ちゃん上手なの!」
「本当、カーツくん、大リーガーみたいなファインプレーだね!」
スライディングキャッチのような体制になりながら、カーツ君が卵をキャッチした姿勢で床に寝転んでいる。
「大丈夫ですか、カーツくん」
「ああ、平気。ユーリ姉ちゃん、これでまたおいしいもの作ってくれるんだろう?」
カーツ君がにカット笑って卵を差し出してきました。
「うん。卵はおいしいものたくさん作れるんだよ」
「ねー、ユーリお姉ちゃん、これは?」
ぶらぶらーん。
3本の蛇のしっぽ……。
キ、キリカちゃん……。許して。
「キリカ、コカトリスの尾は毒のある部分だから、ダンジョンに放り込んで始末しなくちゃだめだ」
ブライス君がキリカちゃんの頭をそっと撫でました。
「わかった。ダンジョンに捨ててくるね!」
ぶるんぶるん。
振り回しながらキリカちゃんが小屋を出ていきます。
あはは……。うん、いや、考え方次第だね。もし、蛇が出てきたら、キリカちゃんに何とかしてもらおう。
適材適所。子供だから守ってあげなくちゃじゃないよね。
うん。蛇担当はキリカちゃん……。ただし、モンスターや毒蛇は除く。
で、と。
「サーガさんがあちらでコカトリス飼育実験場を作ろうとしてます。ローファスさん、行きますよ」
ブライス君とローファスさんも小屋を出ていった。
さて、残されたのは、私とカーツ君と取ってきた野菜たちと、卵。
……卵ちゃん。
うふふふ。
思わずにやけます。
「これ、洗えばいいのか?」
カーツ君が野菜の処理を聞いてきた。
「うん、ありがとう」
卵で何を作ろうかな。
私とカーツくんとキリカちゃん。それからブライス君と、ローファスさんもご飯食べるよね?
サーガさんはどうするんだろう。軍に戻って食事するのかな?
……。
卵を見る。
一つだけの卵。
「どう、考えても、足りない」
かさましのできるメニューにしても、足りない。
ご覧いただきありがとうございます。
にゅーん。
明日はお休み。にゅーん。