144 高度鑑定魔法
「そうでした。よく聞いてください。コカトリスが毒を持っている部分は尾です。尾さえ切り落としてしまえば、繁殖しても問題ないと分かりました。ですから、ダンジョンでコカトリスと遭遇したら、尾を切り落として止血してダンジョンの外に持ち出せば繁殖も飼育も容易にできます」
ローファスさんの目がぎらぎらと輝く。
「本当か?そうか!そうだったのか!すまん!尾を切り落とすことがそんなに大事な意味を持っていたとは!そうか!繁殖のために尾を切り落とすんだな?尾さえ切り落とせば、コカトリスは繁殖できる!ふは、ふは、ふは、ふは!ちょっと、コカトリスが出るダンジョンに行ってくる!」
と、小屋を飛び出そうとするローファスさんをブライス君が止めた。
「ローファスさん、まずはスタンピートの完全収束が先です。それから、コカトリスの件は、よくギルドと話し合う必要があるでしょう。冒険者に尾を切り落とすことを徹底する必要もありますし、繁殖するのは誰か。冒険者であればギルドが責任を持つけれど、繁殖業者が卵からかえった雛の尾の処理の徹底など、どう管理するかなど……。まだ、いろいろと問題があります。しばらくは、ここで雛の管理方法を含めた飼育方法の確立をする必要があるとサーガさんと話をしました」
ですよね。
危険生物なんですから、いろいろ考えないといけないことありますよね。
「そうか……。いや、まぁ、うん。分かった」
ローファスさんが、頭をかいた。
「すまないな、ブライス。ありがとう」
ローファスさんがにかっと笑ってお礼を口にする。そして、血まみれの手で、ブライス君の頭をなでようと手を伸ばした。
バチンッ。
と、大きな音を立てて、ブライス君がローファスさんの手を払いのける。
「【浄化】」
ローファスさんの手を払いのけた手と、血まみれの鶏……にしか見えない、コカトリスがきれいになった。
「ブライス、俺にも浄化魔法頼む」
そうです。ローファスさんはそのままです。血だらけで汚いです。
「無理です。もう、今ので魔力切れです」
「え?浄化魔法なんてたいして魔力使わないだろう?」
「その前に、高度鑑定魔法を使ったので」
ローファスさんがぶはっと、驚いて唾を飛ばした。
いや、汚いですね。驚き方、もうちょっと上品にできませんか?というか、なんでそんなに激しい驚き方するんだろう?
「高度鑑定なんて、魔力が4桁いる魔法だろう?いくらブライスが魔力が高いっていったって、足りないだろう?」
四桁の魔力?!すごい。
「ええ。足りない分は、サーガさんが魔力増強魔法石を提供してくれたので」
と、それを聞いてもう一度ローファスさんがぶほっと唾を吐き出した。
だから、汚い。……。
「魔力増強魔法石なんて、金貨何十枚もする高価なものを、サーガが?」
金貨何十枚!うわーっ!うん百万とかうん千万の世界?……。
そ、それはさすがに……。
「でも、魔力増強剤を使っても、将来的な魔力の伸びしろがないと効果がないだろう、おまえ、まだ魔力の伸びしろが残ってるってことか?」
ほうほう。高価な魔力増強剤を使っても効果が表れないこともあるのか……。それ、イチかバチかのすごいかけだね。
「まだレベル10になったばかりですからね。当然これからの伸びしろもありますよ」
「あ、そうだったな。うわー。やっぱ、ブライス、もっと特訓して早くレベル上げようぜ!な!」
ローファスさんが、再び血まみれの手をブライス君に伸ばす。
バチンッ。
うん、スキンシップ大好きなローファスさんですが、ちょっと自重って言葉も覚えたほうがよさそうです。
「それで、まぁ、魔力増強剤を使って一時的に魔力が3000ほどに上がったので高度鑑定ができました」
「さ、3000?!お前、どれだけ伸びしろあるんだよ……っていうか、高度鑑定ってそんなに魔力必要なのか?というか、2000以上も魔力を増強する魔法石っていくらしたんだ……あああ、もう、いろいろ驚くことばかりだが、だが、でかした!コカトリスの繁殖のためだ!もしまた魔力増強魔法石が必ようなら、今度は俺が出す!」
ローファスさんが忙しく表情を動かしています。
驚くポイントがよく分からないので、私はへー、そうなんだぁ、きっとすごいことなんだよねぇと思うばかり。
「高度鑑定の結果、毒のある部分が尾だと分かりました。尾を切り落とせば飼育に問題はありませんし、食材としても問題ありません。それから、ユーリさんの言ったとおり、年間300は卵を産むようです。温める卵がないと、どんどん生むようです。しかも、卵は冷所であれば2か月、常温で3週間ほどもつそうです。運搬方法を考えれば、遠方への輸送が可能となるでしょう。ですから、飼育場所を人里から離れた場所にすることも可能です。また、軍やギルド管轄の飼育場を作って徹底管理する方向も視野に入れられるでしょう」
そういえば、聞いたことある。
卵って、ゆでたりすると賞味期限が短くなるけれど、逆に生のままだと生きているので60日くらい賞味期限があるって。
だけど、一般的に市販されている卵は10日~2週間ほどの賞味期限に設定してあって、それは夏場の一番短い時期に合わせてあるとかなんとか。
60日あるっていうのも、条件がそろえばということだから、やっぱり早めに食べましょうなんだよね。……主人は賞味期限や消費期限を1日でも過ぎたものは絶対食べない人だったけれど……。
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いつもありがとう!
てなわけで……発売前の連日更新はこのあたりで終了。
月火、木金
週4回更新になります。休みが増えてごめんなさーい。ストックが……げふげふ。
今後ともよろしくお願いします!
にゃーん。




