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143 魔法ってなんでもできるわけじゃない

 ローファスさんががさがさとカバンから傷薬なのか何なのか出してコカトリスのしっぽのあった部分の手当てを始めた。

 ……え、あれ?

「回復魔法みたいなの……ないの?」

 なんとなく、回復魔法みたいなので、傷が治ったりするイメージがあるんだけど……。

 そういえば、ブライス君が怪我したときも、ポーション飲んでただけで、魔法は使ってなかった。

「回復魔法というのは聞いたことがありませんね」

 ブライス君が首を傾げる。

 え?

 まじで?

 回復魔法ってないの?

「ダンジョンで、モンスターと戦って怪我したりしたら……?」

「薬とポーション、命に係わるような怪我の場合は神殿で神薬と聖水で治す必要があります」

 そ、そうなんだ。

 カルチャーショック。いや、でも、魔法はレベル10にならないと使えないわけだし。

 普通に生活してたらレベルって死ぬまでに5とか6とか言ってたし。

 しかも、魔法が使える人でも、得意不得意で使える魔法はいろいろだって言うし。

 回復魔法で怪我や病気を治すってなったら、治せる人がめちゃめちゃ少なくて困るか……。

 ポーションや薬で治せるほうが現実的だ。……でも、神薬とか聖水を使うと、死にそうでも死なないの?

 えーっと……。逆にすごい?でも、そういうのって高額治療みたいな?うーん、よくわからないことだらけ。

 とりあえず、ハズレ毒消し草…わさび味で作った料理が耐毒効果の補正値ついたし、なんかポーション以外でも料理に使えるもので何か効果的なものが作れるかもしれない。

 神薬や聖水レベルは無理としても、初級ポーションが上級ポーション並みの回復力になったりとかあったし。

 上級ポーション使った料理なら、聖水に近い効果があるかもしれない。

 ……もし、そうなら……。

 今まで、神薬や聖水が使えなくて亡くなってしまった人の命が助かる可能性があるってことだよね。

 ……。私や、キリカちゃんやカーツくんやここに住む人たち。

 日本では抗生物質で亡くならずにすむようになった病気も、この世界では死んでしまうかもしれない。ペニシリンだとかなんだとか、カビから薬が作れるだとか、ヒントになる程度の知識しかない。私には薬は作れない。

 だけど、料理ならできる。

 レシピを書き残すことならできる。

 料理研究家……うん、それなら自称で、今にもなれそうだ。

 ……。ふふ。料理研究家だって。主人が肩書聞いたら「眉唾、詐欺」とか言いそう。「料理なんて研究するものじゃないだろう。そもそも人が研究した料理を作る意味が分からない。家庭の味、おふくろの味を作り出す気がないのか!」と、料理番組を見て憤っていたことがあった。

 ……よりおいしい料理を作ろうと、いろいろ工夫してるんだよ。みんな頑張ってるの……。それに、家族がおいしいって言ってくれた、家庭の味、おふくろの味を、みんなにも教えたい、たくさんの人においしいって言ってほしいって思う気持ちもわかるんだ……。

 そりゃ、ちゃんと修行して学んだプロの料理人から見えれば、素人主婦が料理研究家を名乗ってSNSで人気が出て本を出したりテレビに出たりって、どう思うのかは分からないけれど……。同じ素人の主婦だったからこそ、プロとは違う「誰でも真似しやすいおいしい料理の作り方」を教えてくれるからありがたいんだけどな。

 そう、私が目指すのも、誰でも簡単に再現できる料理。

 特別すぎる材料は使わない。

 長時間かかる料理はしない。

 それこそ、キリカちゃんやカーツ君だけでも作れるもの。それでいておいしい料理。それが理想。それで、元気になったり補正効果で役に立ったりしたら最高だもの。……まぁつまり、料理研究家、自称、でもいいじゃない?いいよね。

 私の今の職業は、「冒険者見習い兼自称料理研究家」です。はい。肩書増えましたー。まだ、どちらも一人前ではないけれど、こうして少しずつできることやれること増やして自立するんだ。がんばるんだ。

「おい、ブライス、止血終わったぞ、いったいどういうつもりだ?」

 ローファスさんが血で染まった手で、白い鶏を触ったものだから羽も血で汚れています。そのくせ、しっぽを切り落とされ、ますます鶏にしか見えなくなったコカトリスはさっきよりも元気なようで、羽をばたつかせてローファスさんにけりを入れようとしています。

「ユーリさん、どうですか?蛇に似た部分を切り落としたコカトリスは、見ても平気ですか?」

 ブライス君の質問に大きくうなずく。

「私の故郷で見た鶏という鳥とそっくりになりました。鶏なら全然平気です」

 ローファスさんが眉を寄せる。

「おい、ブライス、まさかユーリが蛇が苦手だから、尾を切り落としたっていうのか?たかがそんな理由で?」

 たかが……ですか。

 まぁ、そうですね。

 ローファスさんの血まみれの姿を見ると……。あ、コカトリスの血だから、ローファスさんは無傷だけど。

「そうですね、ユーリさんが心地よく過ごすためになら、僕はなんだってしますよ?たかが尾を切り落とすくらい簡単ですし?」

 ブライス君がローファスさんに嫌味を返す。

「なー、ブライス兄ちゃん、さっきの話の続きは?発情期以外でダンジョンでコカトリスに出会ったらどうすればいいんだ?」

 カーツ君がなかなか話が進まずにしびれを切らしたのか、話の筋をもとに戻した。


ご覧いただきありがとうございます!

そろそろ到着の遅い本屋さんにも並んだかな……。


お手に取っていただけると嬉しいですが、色々な事情があり購入できない方もいらっしゃると思います。

どうぞ「面白いよ」とか「おすすめ!」とかちょこっと声に出して誰かに伝えていただけると嬉しいです(*'ω'*)

リアルでもネット上でもどこでも構いません……。

っていう、ちょっとしたお願いでした。



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― 新着の感想 ―
[一言] さしずめ料理魔術師だよね。
[一言] で、伝説レベル、おとぎ話レベルにはある可能性が微(略) お母さんが研究したからおふくろの味なんだろうが! しかも、旦那んちの味を覚えるのは他人に習うってことだぞ!(覚える気はない)
[気になる点] 余字:え そりゃ、ちゃんと修行して学んだプロの料理人から見えれば、
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