一網打尽
カサカサ動くの出てきます
と、いうわけで、実験です。
玉ねぎ、にんじん、ご飯、少しずつ洞窟の中に置いてみる。
ゴキちゃんの大好きな餌の匂いでおびき寄せる、ホイホイからヒントを得たのです。
ゴキスラたちも、好きな匂いにおびき寄せられ一か所に固まらないかと。
しばらく洞窟の隅によって様子を見る。
うっわー。
キモイ。
カサカサ、カサカサカサカサ、カサカサカサ……。
どんどん玉ねぎにゴキスラが集まっていく。うえー。マジ気持ち悪い。
いや、そんなことを言っている場合ではない。
「みんな、せーので板をあそこにかぶせたら上にのってジャンプだよっ!」
1匹ずつ叩き潰さずに、一度にたくさんつぶせないかと言うこの作戦。
出てきたポーションは誰が倒したのかわからないのでとりあえずみんなで手を伸ばして触れる。そして得たポーションは山分けという約束だ。たくさん取れますように。そうして、子供たちが食べるのを我慢しなくちゃいけないなんてこともなく、そして、少しはお金を貯めて装備を整えられますように。
ん?
気持ちは悪いと思うけど、精神的苦痛は昨日ほどない。慣れたのか、それとも防御力補正値っていうのは心の防御力も含んでいるのか?
「せーのっ!」
「こんなやり方があったとは……」
出てきたポーションを外に運びながら、ブライス君が感嘆の声を漏らした。
当たりポーション20個に、ハズレが10個。
あれ?今回はハズレが少ないです。ちぇっ。
「すげーな。ユーリねーちゃんマジすげー。ダンジョンに入って1時間で、もう一人5個達成だぜ!これを繰り返せば一日でどれだけ取れるかな」
というカーツ君に首を横に振る。
「えっと、5個づつ取れたら、あとはこの方法を使わない方がいいと思うんだけど。ブライス君はどう思う?」
「そうですね。スライムを倒すことは、俊敏性を養う、モンスター感知能力を高める、体力をつけるなどいろいろな効果もあります。ポーションを手に入れるだけが目的ではありませんから」
やっぱりそうか。自動販売機みたいな便利な道具をローファスさんは用意した。あれだけのものが作れるのであれあゴキスラホイホイくらいありそうだもんね。それを設置してないということは、設置しないだけの理由があるというわけだ。
「じゃぁ、今のは、パーティーで息を合わせるチームプレイを養うためということで、一人5個分までは毎日やりましょうね」
にこっと笑う。
「午後は各自訓練の時間っていうことでどうですか?」
「ユーリさんの言う通り、午後は今まで通りで行きましょう」
「まだ午前中だよ、もう一回あれやる?」
首を横に振る。
「午前の残った時間は、食事のための時間にしませんか?」
私の提案は拒否されるかとも思ったけれど、朝食べた焼きおにぎりがよほどお気に召したのか誰も反対しなかった。
畑の手入れと収穫。お米の精米。
それから湖もあるというので魚釣り。肉は罠を作って動物を捕まえることにする。
今まではポーションを手に入れることにほぼすべての時間を費やしていたけれど、1時間で5本という本数を手に入れられることになったので、残りの時間を食事の準備に回せるようになった。
今日は初日なので、畑の手入れだけで午前が終わってしまった。お昼はパンで済ませる。
「ステータスオープン。HPオッケー。あ、補正値もとに戻ってる」
午後のダンジョン入りを前のステータス確認でカーツが声を上げた。
「キリカも。いつもと一緒にもどった」
「というか、いつ補正値は切れたのでしょう。継続時間も確認すればよかったですね」
ブライス君がうーんと首を傾げた。
「あっと、忘れないうちに、これありがとう」
借りていたポーションをブライス君に返す。
「【契約終了】」
ブライス君の言葉に、オレンジ色の光が額から出て消えた。ああ、すごい。
「それから、えっと、今日はそれを確かめたいので、午後からダンジョン休んでもいいかな?」
それとはハズレポーションだ。中身をまだ確認していない。醤油以外にも何かあるかもしれない。
確かめたくてうずうずしているのだ。
「ええ。休むのはもちろん各自の判断で自由ですよ」
「ダンジョンルール、ダンジョン入りを強要してはならないだったよな」
そうか。よかった。今日は返した分を差し引いても4本あるから十分。
「じゃ、みんな気を付けて行ってらっしゃーい」
と送り出し、早速ハズレポーションチェック。
まずは薄い黄色のポーション。
きゅぽっ。