138 高度鑑定
キ、キ、キ、キリカちゃんっ、許して、私、キリカちゃんのこと大好きだけど、でも……。
蛇をニコニコしながらぶらぶら揺らして持って近づくキリカちゃんとは……。
半径2m以上近づけないよーっ。
ずさずさっと後ろに後ずさる、背中にぽんっと何かが当たる。
やだ、これ以上後ずされないっ。
「大丈夫ですか、ユーリさんっ!悲鳴が聞こえましたが」
背中に当たったのは、ブライス君でした。振り返ると、息を切らして心配そうな顔のブライス君の顔。
ふぎゃーっ。
「涙……ユーリさん、僕は、またユーリさんを守れなかったのですね……」
「ち、違う、違う、いや、もう、別に、大丈夫、いえ、大丈夫じゃなくて……」
ぶらぶらと揺れる蛇。
近づくキリカちゃん。
「大丈夫だよ、しっぽだけだもん」
大丈夫じゃないって!
だから、しっぽだけでも蛇だもん、蛇だもんっ。
もう、涙目を隠す余裕もなく、思わず、ブライス君の背中に回ります。
ぎゅっと、ブライス君の服にしがみつき、顔をブライス君の背中に伏せる。
見ない。蛇、見ない。
「ユ、ユーリさん?」
「蛇が苦手なの、えっと、見た目が、どうにも、足がすくむというか……」
黒い悪魔のGも苦手だけど、蛇はそれ以上。
ダメダメ。怖い。コカトリスとかバジリスクも気持ち悪かったけど、まだ半分鶏だったから蛇じゃない、蛇じゃないって少しは思えたけど、ダメだぁ。
もう、全部蛇!
「おい、キリカ、ユーリ姉ちゃん、それ苦手だって」
「え?そうなの?ユーリお姉ちゃん蛇嫌いだったの?食べるとおいしいのに」
ぶほっ。
そ、そうなんだ。
キリカちゃん、蛇食べたことあるんだね……。
っていうか、もしかしてこの世界では、卵は食用認定されてないけど、蛇は食用認定なの?普通のこと?
日本では蛇はとりあえず食用にすることもあるけど、一般的ではなくて……。
なぜか、蛇に似てるウナギは普通に食用なんだよねぇ。
見た目の問題で、蛇を食べないわけじゃないのかな……うーむ。
蛇は栄養満点とも言うし……。
うーむ。
と、とにかく……食用として普通に市場とかにも売ってるとかだったら……な、慣れないとだめってこと?
慣れる……こと、できるかな……。
うぐぐぐぅ……。
ちらりと、ブライス君の背中から少しだけ頭を出して、キリカちゃんの手に持っているものを見る。
ひぎゃっ!
怖い。
気持ち悪い。
ダメだぁ。どうしよう……。
「キリカ、それは食べちゃだめだ。コカトリスの尾だから」
「え?そうなの?コカトリスの尾は食べちゃだめなの?」
ブライス君がうなづいた。
ほっ。
よかった。
キリカちゃんが食べたいと言って、私が料理とかしなくちゃならないとかなっても、絶対無理だったもん……。うぎょぎょ。
……。
なんとか皮をはいでもらって、なんとなくウナギっぽい何かだと思い込めば大丈夫かな……。いや、なんかそれでも無理かも……。
「そうだよ。キリカ。そこに毒が入ってるから」
え?
「え、でも、俺たちってもうコカトリスの毒とか平気なんじゃないのか?」
カーツ君が首を傾げた。
「ああ、そういえばそうですね。確かに。食べても平気かもしれません。ですが、冒険者として覚えておかなければなりません」
ブライス君が言葉を続ける。
「冒険者……として覚えておくこと?」
それは、私も覚えないといけない。
「コカトリスを高度鑑定したところ、毒を持つ部分は尾だと判明しました」
へー。そうなんだ。
ご覧いただき感謝なのであります!
皆様ご機嫌いかがですか。
私は、えーっと、あと3日なのですよ。書籍発売まで……オロオロ。
できることは全部しましたので、今更何をどうするとかないのですけどね……
あ、あったあった。今更することあったわ。
水曜休みのところ、休まず更新しますよー。わはははは。……はは