137 キリカちゃんがぶーらぶら
「ブライス君、えっと、サーガさんとの話し合いは?」
確か、コカトリス繁殖に向けてどうすればいいのか二人で話をしていたはずだよね?
もしかして、私みたいに、やっぱり無謀だからやめようっていうことで話し合いが終わったのかな?
「ああ、もう終わりましたよ」
ブライス君がダンジョンの入り口あたりに顔を向けた。
サーガさんが何やら地面に木の棒を使って書いている。ん?何してるんだろう?
やっぱり、無謀だからやめようって結論に落ち着いたのかな。
うん、だったら、私が「卵やめましょう」って言わずに済みそうです。
……ローファスさん、あきらめ悪そうだもんなぁ。
まぁ、説得の材料として「卵にはプリン体が含まれていて、食べすぎると通風っていう病気になって、膝が痛くて冒険者引退しないといけません」とかなんとか言うのもありかなぁと思ってたんだけど。
……まぁ、食べすぎるほど食べることもないだろうけど……。
毎日1日1個食べたって平気だもんね。
あとは、調理の仕方を失敗すると、ボツリヌス菌で食中毒になって死にますとか……。まぁこれは、生卵で食べるときの注意なんだけどね。
……そう、生卵は危険なのです。日本のスーパーに売っている卵は殺菌消毒されてるから大丈夫だけど。
海外で同じように卵かけご飯とかしちゃだめって聞いたことがある。……。
マヨネーズは大丈夫なんだよ。酢を使っているから。酢にはボツリヌス菌殺菌効果があるんだって。
なんかO157とかがはやったときに調べたら出てきた情報。
うん、日本の子供たちに万が一食中毒なんて起こさせたら大変だと思っていろいろ調べたんだよね。
卵かけご飯には酢は使わないから、生卵は食べちゃダメが基本。
……でもなぁ。
ローファスさんなら、食中毒になったら、毒消し草を食べればいい!とか言いそう。
……そして、わさびを取り出して、かじって「ハズレだーった!」ってところまでがなぜか想像できます……。
あ、その続き「サーガ、毒消し草持ってないか?くれ」とか「ブライス、解毒魔法使えないか?」とか……。言いそうです。
……。
どうにも、卵をあきらめましょうって説得むつかしいと思っていたので、サーガさんとブライス君も止めてくれるなら楽そう。
まぁ、いざとなれば「卵をあきらめないなら、もう二度と料理は作りません」って言えば何とかなりそうな気はする。
そもそも、卵の調理法とか知らないだろうから、卵を手に入れてもどうにもならないし。うん。
よし。じゃぁ、もう、繁殖あきらめたんなら、さくっとコカトリスは捌いてもらって、食べちゃいましょう。
バジリスク料理でもいいですが、コカトリス料理に変更でも、どちらにしても鶏肉です。
さて。ハズレ麻痺回復……じゃないや。麻痺回復草は、当たりでしたね。何でもかんでもハズレだと思ってしまうのは、仕方がない。
麻痺回復薬と、大葉。それから、塩とみりん。鶏肉。ふふ。おいしそうにできるはずです。
あ、ハズレMPポーションにはオリーブオイルだけじゃなくてごま油もあったんだよなぁ。
揚げ物は封印だけど、香りづけにごま油を少し使うくらいなら……。
おっといけない。
軍とか冒険者とかいろいろ人がいなくなってからにするって決めたんだった。我慢我慢。
さて、ではさっそくコカトリスをさばいてもらって……じゃないな。
できるだけ私もさばけるようにしないといけないんだから、カーツ君やキリカちゃんと一緒に頑張らなくちゃ。この間は吐かずに済んだ。
今日はもっと大丈夫になっているかもしれない。
ハンノマさんの包丁があれば、もしかしたら、できるかもしれない……。
うん。だって、切りたいところにちょこっと刃を当てるだけでスパーンだもん。
さて、では、小屋の中に野菜を置いて、包丁持って……と。
「ひぎゃーっ!へ、へ、へ!」
「ユーリ姉ちゃんどうしたんだ?」
野菜を持って私の後ろに立っていたカーツ君が、私の前に立った。
うわーん。子供なのに、カーツ君、私を守ろうとしてくれてるの!
「な、何でもないの。ちょっとびっくりして、蛇が、蛇が……」
ちょっとっていうか、めっちゃびっくりしたけどね。
だって、テーブルの上に蛇がいるんだもんっ。
「蛇?」
カーツくんがゆっくりとテーブルに近づく。
「ま、まって、もし毒蛇だったりして、噛まれたら……」
今度は私がカーツ君を守ろうとカーツ君の前に出る。
蛇は怖いけど、怖いけど、でも、子供に守られていてはだめ。
「あー、これ、コカトリスのしっぽだよー、ほら」
と、腰を抜かしそうにしてたら、キリカちゃんが私の横をすりぬけてテーブルの上の蛇をひっつかんで持ち上げた。
ひぎゃーっ!
ぶらんぶらんとキリカちゃんが蛇を揺らす。
って、ぶらぶら揺らしながらこっちに来たー!
いつもありがとうございます。
ふー。あと4日です。ど、緊張!
早売りのところだとあと何日なんだろうか……。




