132 怖い、でも、がんばる
え?
あれ?
投げないの?
手渡し?
あれれ?
まぁいいや。
形、わさびに似てる。
匂いは?
「ああーーっ!こ、これ!これって、もしかして!」
そうだとすると、まぁ、これだけをがりがりかじると辛いのはよくわかります。
でも……。
鶏肉と、これ……。そうだ、畑に大葉があったはずです。
あー。それから醤油とみりん……。
味を想像してよだれが出そうになります。
「もらっていいですか?食べていいですよね?あー、どうしよう、ローファスさん、とりあえずコカトリスよろしく」
「お、おう!任せておけ!ユーリがよだれをたらすほどうまい料理が麻痺回復薬で作れるってことだな!」
ローファスさんが弾丸のように飛び出していきました。
って、私、よだれ垂れてないよっ!
垂れてないってば!
ローファスさんじゃあるまいし。
……念のため、手で口元はぬぐいますけど。
「畑に行ってきます!」
想像が止まらない。
大葉が欲しい。
そうだ、大葉の醤油漬けも作ろうと思っていたから、多めに大葉を取ってこよう。
大葉……青じそって繁殖力が強いから、葉を積んでもまたすぐに収穫できるところがありがたいよねぇ。ふふふー。
「待ってください、一緒に行きます」
ブライス君が私の手を取る。
「まだ、どこからモンスターが現れるか分かりません」
ビクッ。
そ、そうだ。
小屋の前に無数に飛んでいた虫のようなモンスター。
小屋の中で見た緑の子供のようなモンスター。
そして、コカトリスに、バジリスク。
……怖い。
ああ、でも、いつになったら安全って言えるの?
今まで、日本にいた時のように、のほほんと過ごしてきたけれど……。
日本とは違う。
ダンジョンだけじゃなくて、生活しているすべての場所に、日本とは違う危険が潜んでいるんだ。
……。今はブライス君が畑についてきてくれるかもしれないけれど、いなくなったらどうするの?
怖くて、ずっとダンジョンに引きこもるわけにはいかない。
怖いからって、カーツくんやキリカちゃんに畑に行ってもらうなんてできないよ。
今、ここで怖がってしまえばダメだ。
さっきまでバジリスクの肉を切っていた包丁を握り締める。
「大丈夫、私には、ハンノマ印のこの包丁があります。バジリスクも倒せる包丁です!」
「ですが、やはり」
ブライス君が心配そうな顔を見せます。
小さく首を横に振りました。
「怖いんです。だから、その、一歩を踏み出させてください」
ブライスくんがはっと息をのみ、そして頭を下げた。
「すいません、ユーリさん。そうですね。ユーリさんは冒険者見習いでした……。ローファスさんに守られるだけの存在だと思われたくないと思っていた僕が……。ユーリさんに対して、失礼なことを……」
ずーんと、ブライス君が落ち込んでいます。
「えっと、怖いという気持ちと向きあって克服しようと行動をおこせるのは、ブライス君がいてくれるおかげだよ?」
ブライス君の手を握ります。
「何かあったら、助けてくれるでしょう?」
顔を上げたブライス君に笑いかける。
「もちろんです」
ブライス君も笑い返してくれました。
「ユーリさん……僕は、もっと強くなります。強くなって……たとえ魔王相手でもユーリさんを守れるようになって見せます」
は?
いつもありがとうございます。
ISBN:9784797397697
9784 797 3976 97
急な橋 泣くな サンキューなろう君な
みんなもゴロ合わせを考えて遊ぼう!
……いいアイデアが浮かびません、ヘルプ!(´・ω・`)




