129 混ぜる~情熱をもってして、混ぜる~
「卵は食べちゃだめなんだよー。食べっちゃったら、鳥さんがいなくなっちゃうよ?」
はい?
「っていうか、卵ってうまいのか?」
え?
「うまいなら食べたいが、食べたいが、食べたいが……繁殖のため、俺は我慢するぞ!ユーリ!鶏からのためだ!」
え?
えええ?
「も、もしかして、卵って食べないの?」
この世界、卵って食用じゃないの?
「先ほどキリカの言った通り、卵やひなの状態で鳥を捕まえて食べてしまうと、森から鳥がいなくなってしまいますので、食べることはありませんね」
いや、うん、それは分かるし、日本でもどんな生き物の卵も食用にしてたわけじゃなくて……。
一年間に300個、ほぼ毎日卵を産む鶏の卵を主に食料としてきたわけで……。
「兄さん、待ってください、猛毒を持つコカトリスを繁殖するって、正気ですか?誰が許すと思ってるんですか?」
サーガさんがコカトリスの繁殖に反対を始める。
あー、えーっと……。
「この卵、繁殖用じゃないということで、大丈夫でしょうか?」
サーガさんに尋ねる。
「もちろんです!」
「う?え?あ……」
ローファスさんが動揺しているが、知ったこっちゃない。
皿を持ってきて、こつんこつんとぶつけて卵を割る。
「うぎゃーっ!ユーリの裏切り者!」
いや、初めから仲間になってませんって。
ローファスさん……。
「あ、やっぱり、これ無精卵です。いくら温めても雛はかえりませんよ」
「無精卵?なんだそれ?」
無精卵を生むということは、やっぱりこのコカトリスも見た目が鶏っぽいだけじゃなくて、鶏のように卵を毎日のように生んでくれるのでは……?
違うかもしれないけど、もしそうなら……。
卵を食べてはだめだというこの世界での唯一の希望なのでは……。
ま、まさか、卵を食べない世界観があるなんて……
卵があれば、卵があれば……。
はっ!そうだ!
あれなら、一つしかない卵でもみんなで食べることができるじゃないかっ!
材料をそろえて、大きな器に入れ、泡だて器なんてないからホークを何本か手に持ってかき混ぜる。
かき混ぜる。
むおおおおおーーーっ!
かき混ぜる!
ええ、かき混ぜますとも!
「ユーリお姉ちゃん何してるの?」
「おいしいもの作ってるんだよ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
つ、疲れる。
ぎぶみー電動ミキサー。
「手伝おうか?」
カーツ君が電動ミキサー役を買って出てくれました。ありがてぇ。
体力つけなきゃ、料理もろくにできないとは……。レベル4になったというのに、まだこの体たらく。
「さぁ、兄さん、繁殖はあきらめてください。コカトリスを渡してください」
サーガさんが腰に下げた剣に手をかけた。
「うぐぐ……」
ローファスさんが泣きそうな顔をしてサーガさんにコカトリスちゃんを渡そうとしている。
「だ、だめですっ!殺さないで!」
卵が!私の、卵がっ!
「ユーリちゃん?」
サーガさんが驚いた顔をしている。
「私の故郷では、卵は普通に食べていました。あの、鶏っていうコカトリスみたいな鳥の卵です。鶏は、繁殖のためではない卵も産むんです。毎日のように卵は産んで、卵を食べても鶏はちゃんと増えて絶滅することもなくって、あの……」
どう説明したらいいんだろう。
鶏とはそういうものだと……。
「ユーリ姉ちゃん、色変わったけど、ここからどうしたらいいんだ?」
はうっ!
いつもありがとうございます。
あっというまに夏休み。ちょいと夏休みしようかのぉ。
更新、明日は日曜でお休み。それから、夏休みの予定をこれから立てます。ストックなくなった。




