122 油断大敵!
うわー、浮遊魔法とか?風魔法の応用だろうか?なんでもできるんだね。すごい!
ブライス君は両手を前に突き出してクラーケンに向けて凍らせる魔法をかけ始めた。クラーケンの手前から白っぽくなっていき、凍っていくのがわかる。
さて、足の先まで凍らされないうちに、切り取ろう。凍ると切りにくくなるし。
ん?
「ハンノマさんの包丁なら、凍っていたってスパっと切れるか……?」
あ、そうだ。攻撃力のことも聞けばよかった。
「ステータスオープン」
ハンノマさんの包丁、確か攻撃力が200近くあったはず。この数値がどれくらいの強さなのか……って!
そうか!補正値が倍になるんだ!私自身の攻撃力しかないときは補正値プラス10だったけど。
味醂ポーションで攻撃力の補正値が倍で、400近くになっている。
うわー。カーツくんやキリカちゃんの10倍だよね。
……石もすぱっと切れたから、もしかして、岩を砕くくらいできちゃったりして?試したりしないけどね。刃こぼれしたら困るもん。
でも、カチコチに凍ったタコで試すくらいなら?
山のように大きなクラーケンの頭を見上げる。すっかり全体が白っぽくなって凍ったことが分かった。
パリパリ、パリパリ。
え?
氷を水に入れた時のような音が聞こえる。
なんだろう?
「え?卵みたい……」
クラーケンの丸い頭の部分に、まるで卵のように亀裂が入り始めた。
凍らせすぎ?なんだろう?凍って膨張してひび割れたとか?
いや、なんか違う。どこかから力が加わってひび割れていくように見える。
どこか……。
クラーケンの頭の内部から?
パリパリパリという音が、バリバリっという音に変化する。
音の変化とともに、クラーケンの頭から黄色い突起が付きだした。
「何?」
そのままひび割れたところが、卵の殻のようにひび割れが広がりボロリボロリとかけらが散っていく。
「コケーーーーッ!」
穴が開いたと思ったら、そこから鶏が生まれた。
って、ひよこじゃなくて、もう鶏だ!
大きい!
大きなクラーケンの頭の中から、それはそれは大きな鶏が!
と、驚いて見上げている私の目に、青ざめたブライス君の姿が飛び込んできた。
「危ないユーリさん!まさか、クラーケンが飲み込んだモンスターが内部で生きていたとは!」
え?クラーケンが飲み込んだモンスター?
大きな鶏じゃなくて、モンスターなの?
「しかも、まさか、バジリスクが!」
ブライス君が私をどんと押しのけると、そこに巨大な蛇の頭が現れた。
うわぁ!へ、蛇!
間一髪で蛇に飲み込まれるのを回避する。
「【火】蛇を焼き尽くせ!ユーリさん、逃げて!」
ブライス君の手から火魔法が放たれた。蛇は苦しそうに首をもたげ、そして、苦しみを与えている原因であるブライス君に牙をむいた。
ぐるぐるぐるっと、あっという間に太い胴体でブライス君を締め上げる。
「ブ、ブライス君っ!」
ど、どうしよう!
苦しそうなブライス君の顔。
「に、逃げて、ユーリさ……げふっ」
血!
ブライス君の口から血が!
「鶏から!みぃーーーーっけ!」
空から振ってきた何かが、蛇の頭をざんっと切り落とした。
「ユーリ、これだろう?ニワトリって。これだけあれば、食べ放題だな」
「ローファスさんっ!」
「さぁて、蛇のしっぽは切り落とした。あとは本体だな。待ってろ、鶏から!」
ローファスさんが飛び上がって大きな鶏に向かっていった。
えっと、バジリスクとかいうんじゃなかったんだろうか、このモンスター。
「ブライス君、大丈夫?」
切り落とされたためブライス君に巻き付いていた蛇が力を失っている。
ご覧いただきありがとうございます。
はい、出て来たー!




