120 和風ポテトだよー
運動神経の鈍い私の投げた石もゴキスラに当たった。
……当たった。
だけでした。
「あ、あれ?」
「ユーリさんの力で投げてもゴキスラは倒せないみたいですね」
ほっと、力が抜ける。
「そうなんだ、よかった……」
「倒せないのがよかったんですか?」
キリカちゃんが楽しそうに石を拾ってはえいっ、えいっと投げている。
「だって、オリーブオイルを食べると誰もかれもが無敵になっちゃうわけじゃないってわかったから……」
ブライス君がああと頷く。
「そうか、確かに命中率100%なら、強力な武器があれば無敵とまではいきませんがかなり有利になるかもしれませんね。投げナイフや弓、僕のように魔法も命中率が上がればかなりの強みになる」
「えっと、こんなすごい効果があるなんて思ってなくて……えっと、どうしよう。クラーケンのせいで済むかな?」
怪しまれないだろうか。というか、そもそももう一度クラーケンを食べればすぐに違うのがバレちゃうし……。
「まぁ、コカトリスの毒から回復した副作用てきなことで何とかごまかせるんじゃないでしょうか?誰も二度と経験しないから本当かどうか確かめようがないし、サーガさんが上手くやってくれるんじゃないですかね?」
サーガさんは軍の偉い人だから、緘口令みたいなのってことかな?
「じゃなきゃ、まぁローファスさんに何とかしてもらいましょう」
ローファスさんに?
「ローファスさんが持ってたレアドロップ品の塩かなんか使ったことにすればいいですよ」
「え?そんなんでごまかせるの?」
「あれでもローファスさんしか行けないようなダンジョンっていうのがありますから、まぁ誰も知らないもの持っていても怪しまれないと思いますよ?」
「ローファスさんしか行けないダンジョン?」
なんだろう、それ。
部屋の持ち主登録みたいに、ローファスさん個人所有のダンジョンとかあるのかな?
まぁいいや。とりあえず、ハズレMPポーションのオリーブオイルを使ったことは何とかなりそうだ。
……今度からは、もっと気を付けて使わないと。
もし、ハズレMPポーションが品薄になると明かりとして使っていた人たちが困ることになる。
こちらも在庫など状況が整ってからしか表に出さないほうがいいのだろう。
まぁとりあえず、ごまかせる方法はいくつかありそうですね。
だったら、まぁいいか。
「ユーリおねぇちゃん、できたよ」
ダンジョンの外からキリカちゃんの声が聞こえる。
「はーい、ちょっと待ってね」
タコの唐揚げを紙の入れ物に入れ終わったんだ。
もう数は足りてるということだけど、一応呼びに300個ほど作って小分けした。
必要なかったら、ローファスさんならこれくらいの量食べちゃうだろうし。無駄になることはないよね?
油切り用のジャガイモも揚げちゃいましょう。
塩味ばかりでは空きがくるかな?
そうだ。
醤油とみりんを混ぜて。揚げたてポテトに絡めれば、和風ポテトの出来上がり!
「えーっと【解除】」
で、油を温めてる火の魔法石は止まるかな?一応、油から引き上げておいたほうがいい?
油はどうしようかな。まだ使えるはずというか、もったいないから使うけど。早めに使わないと酸化しちゃうよね。うーん。何に使おうか?
菜箸代わりの鉄の棒で火の魔法石をつまんで取り出して皿の上に。……油まみれのどうしようかな。まぁいいや。後々。
「キリカちゃん、カーツ君、ブライス君、どうぞ。和風ポテトだよ。塩味ばかりじゃ飽きるよね?」
「うわー、これ、醤油のやつ?」
「こっちもおいしそうなの!」
ダンジョン内テントでみんな仲良く食事です。
といってもポテトのみ。
ふふふ。
「さぁ、すっかりMPが回復しました。先にクラーケンを凍らせてきますね」
ブライス君が立ち上がる。
働き者だなぁ。もう少しゆっくりしていてもいいんだけど。
「私も行きます。念のためすぐに調理できるように切るだけ切っておこうかと。あ、ブライス君の仕事増やしちゃうね」
ふっと、きれいな顔が笑った。
「切ったものを凍らせて、溶けにくいように別に氷の塊を作っればいいんですよね?あの大きなクラーケンを凍らせることに比べたら大したことじゃないですよ」
「ありがとう。たいしたことじゃないっていうけど、魔法が使えない私からしたら、すごいことなんだよ?」
いつもありがとう。楽しんでいただけているといいな。
さて、お気づきの方もいらっしゃるかもしれせんが……。
休みの前の日は遅めの更新、休みの後の日は早めの更新で、間がすんごぉーく開いている感じを誤魔化してます。……更新時間がバラバラなのはそのせいでした。