112 虫型モンスター
「あれ?切れてない?」
どういうことなのだろう?
えーっと。
クラーケンの身の一部を下に落ちてた石をまな板代わりに切る。
スパーン。
石は切れてない。
今度は石の上に石を乗せてみる。
さすがに石が切れるはずはないか。実験対象失敗した。
石の上に包丁乗せる。
スパーン。
「うわっ、切れた……」
上の石だけがきれいに真っ二つ。下の石は傷ついていない。
「もしかして?」
葉っぱをちぎって、クラーケンの身の上に置く。
「葉っぱだけを切りたい」
そう思いながら葉っぱに包丁を当てると、葉だけがきれいに2つになっている。
「切りたい対象だけを見分けて切る?す、すごい!これ、すごいっ!」
魔法?うん、きっと魔法だ!これなら手を切る心配もないっ!
思い切って使う。うん、使うのっ!とはいえ、普通の包丁を使う慎重さも忘れちゃだめだ。ほかの包丁を使えなくなっては困る。
縦縦横のつぎに横に切る。
せっかくなのでいくつも格子を作る。それから、輪切り。
すると、ブロックサイズの切り身が一度にたくさんできた。
よし。持っていこう。
ブロック状のものを3つ。鍋に入れて、小屋に運ぶ。
ぬめり取りが不要になったから、一口サイズ……いえ、体が弱って飲み込めないといけないからもっと小さく切って作ったほうがいいかもしれない。
小屋の扉の前に小さな人影。
誰か戻ってきた?中に入らないのかな?
「あっ!」
違う、人じゃないっ!
なんか黒い靄のような得体のしれない何か……。
私に気が付き近づいてきた。
靄だと思っていたのは、虫だ。ミツバチくらいのサイズの虫が集まっていたんだ。
逃げないと!
そう思った時にはすでに目の前に虫の大群が迫っていた。
「いやっ!」
ブンっと包丁を持っていた手を振り回す。
両目をつむって、やみくもに振り回して、そして……。
そういえば、蜂は刺激しちゃだめだっていう話を聞いたな……って思い出す。
でも、刺激する前に明らかにこちらに向かって攻撃的な音を立てながら向かってきたし……。
羽音がやんだので目を開くと、子犬サイズの大きな黒い虫と、その周りに靄を作っていた無数の蜂サイズの虫が地面に落ちていた。
「包丁……すごい……」
でも、この虫なんだろうか?モンスター?
そうだ。まだスタンピートのモンスターが残っているってことだよね?
……ど、どうしよう。今回は運よく包丁のおかげでやっつけれた。もし、背後から襲われてたら死んでたよね……。
「そうだ!ダンジョン!ダンジョンの中にはモンスターが入ってこられなかったはず!」
って、ダメだ。
ダンジョンの中にクラーケンを持ち込めば消える。
消えてなくなってしまう……。
小屋……で料理をするしかない。
しっかり戸締りすれば……きっと大丈夫。
小屋のドアを開けると、羽音とともに、大量の虫が飛び出してきた。
「うわぁーーーっ!」
虫は小さいから、隙間から入り込んだんだ。戸締りしても、入り込まれる?
包丁を振り回してとりあえず近づく虫は殲滅っ。
「バジルっ!」
バジルの包みは無事だ。
ああっ!
部屋の奥に緑色の小さな人みたいな何かがいる。
……も、モンスターだ!
いつもありがとうございます。
感想、楽しく拝見させていただいております。
誤字報告もとても役に立っております。
時々、困る感想もいただきます。そう、困るというのは、爆笑しちゃうから!一人でPC見て爆笑、怪しいです。時々出先でスマホでそれやっちゃいますから。面白い感想好きですが、爆笑レベルは困ります。
……(っていう前フリ。みんな面白い感想待ってるぜ!)




