108 バジリスクじゃなかった
「私、森の中で鶏と蛇を見たけれど……」
あれ、バラバラに見たんだっけ?
合体してた?
鶏は下半身は木々に紛れて見えなかった。尾っを見た記憶はない。
蛇は道の端を横切っていくしっぽの部分を見ただけ。頭の部分を見た記憶はない。
あ、でも。
「関係ないよね。バジリスクって、木よりも大きいんだよね?私が見たのは普通のサイズの鶏だったもん」
これくらいのねという意味で手で鶏のサイズを作って見せる。
ブライス君が立ち上がった。
少し遅れてサーガさんも立ち上がる。
ローファスさんはすでにダンジョンの外に出ていこうとしている。
「待ってくださいローファスさん!やみくもに動いても仕方がない」
えっと、私一人意味が分かりません。
「バジリスクと酷似した姿でサイズが小さいのはコカトリスに間違いないでしょう」
コカトリス?
え?
あれ、鶏じゃないの?モンスターだったの?
じゃぁ、卵は?
「コカトリスの繁殖期に発するフェロモンは人には猛毒……ダンジョンの中ではコカトリス発生場所が記録されているので避けて通れば問題ないのでうっかりしていましたね」
ブライス君の言葉に、サーガさんが額の汗をぬぐう。
「コカトリスが原因だと分かれば、毒は最上級毒消し草を使った薬で何とかなる。問題は、発症から2日以内に薬を使わないといけないということと、軍だけで400名。冒険者も合わせると……」
「700名。まだこれから街へも広がると考えると、千や2千では足りないかもしれませんね。2日以内、いえ、一人目の発症が昨晩と言っていたので、もうあと1日半の間にそんなに大量の最上級毒消し草を手配できるかどうか……」
1日半?たったの1日半しかないの?
「王都にはある程度の備蓄はあるが……」
王都から軍が派遣されるのに、スタンピート発生から3日かかってたよね?いくら早く動いても間に合わないんじゃ?
「できるだけかき集めるしかない」
「ギルドに最優先緊急採取依頼を出してもらったとしても……」
「最上級毒消し草は上級ダンジョンの下層でのドロップ品だ。下層に潜れる冒険者は限られている上に、多くの冒険者が倒れてしまっている状態では……」
サーガさんとブライス君が真剣に話し合っている。
ローファスさんは今にも「俺が取ってくる!」と上級ダンジョンに向かって駆け出しそうだ。
えーっと。
私、いてもいなくてもあんまり関係なさそうなので、今のうちに。
小屋に行って、お弁当の残り物を取ってくる。ほんの一口だけ残っているクラーケンのバジル和え。……ローファスさんが作ったまずいバージョン。
焼いたけど、ぬめり取らずに焼いてもおいしくはなりませんでした。
ええ、おいしくないんです。
ご覧いただきありがとうございます。
へい。バジリスクとコカトリスのモンスターを調べると、どっちも似たようなのでよくわからなくなったでござる。
というわけで、大きくて強いのがバジリスク。小さくてあんまり強くないのがコカトリスにしました。
こけーっ!
あ、感想欄でバジリスクは蛇みたいなのというご意見もいただいておりますが、うちのバジリスクはwiki参照。
それからお知らせです。
https://www.tugikuru.jp/info/view?id=125
書籍発売記念サンクスキャンペーンなるものが始まっておりまして、応募すると本にお名前が載ります!
……載ります……、というわけで、いつものサイン本のあれですが、活動報告を見てね。




