102 帰り道
油があれば、いろんなものが作れる。そう、クッキーだって作れるよ!あ、砂糖が欲しいけど。バターの代わりにサラダ油を使うレシピで何度か作ったことがあるもの!
バター不足だった時に。子供たちのために作ったの。マーガリンは使わないほうがいいっていうのを見て、なるべく体によいといわれる油を使って。
MPポーションの瓶も手のひらに乗るくらいのサイズだから一瓶の量は少ない。
「あの、たくさん欲しいんですけど、売ってもらえますか?」
「たくさん?どれくらい欲しいんだい?」
「本当は全部欲しいんですけど、それだと必要な人が買いに来た時になくて困ると思うので、その、困る人がいないような量を」
ぷっと、店主が笑った。
「面白い子だね。自分が欲しいのに、ほかの人が困らないようにって気を遣うのかい?大丈夫だよ。売り切れだってわかりゃ、客はほかの店で買うさね。それにギルドに毎日持ち込まれるからね。需要が増えれば、買取価格が上がって、冒険者も助かる。うちも儲かる。誰もこまりゃしないよ?」
「ほ、本当ですか?あの、じゃぁ、ください!並んでるの全部!」
って、失敗しました。
瓶に入ったMPポーション両手で輪を作るくらいの量です。
……重い。この後まだ、食材も買わないといけないのに……。
黒カードを出すと、店主がうなづいた。
「持ち運ぶのが大変なら、あっちの店で荷車を借りるといいよ。黒カード持ちなら保証料なしの銀貨1枚ほどで借りられたはずだ」
「俺、借りてくる!」
カーツ君が黒カードを持ってあっちの店に走っていった。
黒カードなら保証料なし?
なんだかいろいろと便利だなぁ、これ。身分証みたいな役割でもあるんだろうか?日本だとレンタルするには免許証とかで身元を明らかにしないとだめだったりするわけだから。
カーツ君が荷車引いて、私とキリカちゃんが後ろから押す。
食材を買いに来たのは確かなんだけど。
それでも、おひつっぽい木樽を見つけて購入。ふたはないので木の板を乗せないとだめかな?
それから、靴ベラと言われたけれど、しゃもじに似ていたので購入。……もちろん、未使用を確認しました。それから、ちゃんと3回洗います。靴ベラという記憶は消し去ります。
あと、肉にさして回しながら焼くための金属の棒を2本買いました。長さにして40センチほど。これ、金属なので少し重いけれど、菜箸になりそうなのです!手持ちの部分に少し工夫がいりそうですけれど。布巻けば平気かな?
とかなんか、いろいろと雑貨を見ているうちに、あっという間に時間がたってしまいました。
食料品店の並ぶ通りは、鐘の音を聞きながら、集合場所に遅れないように走って通り過ぎる羽目に。
そ、そんなぁ!
何が売ってるのか、通り過ぎざまに左右を見ようと思ったけれど、ダメだ!
荷台に乗せてあるいろいろなものが落っこちないように目を光らせ、そして、何気に早いカーツ君の荷車に必死でついていくのがやっと!
うわーーーっ!
ニンニク、ショウガ、コショウ、砂糖、塩、小麦粉、それから、卵に牛乳、チーズ……カレー粉!
欲しいものがあるかどうかすら確認できなかったぁ!
帰りのドナドナは、軍用の物資たっぷりと、私たちの荷物が荷台に積まれ、カーツ君キリカちゃんと私はぎゅっと身を寄せ合って荷台の一番後ろに座りました。
ああ、遠ざかっていく街が見える……。
ううう。でもいいんだ。
油が手に入ったんだもん。
たぶん油。きっと油。
ゴマ油以外の瓶もきっと油。明かり用だっていうんだもん。
何かなぁ。オリーブオイルに菜種油。紅花油にエゴマ油なんてのもないかなぁー。へへへ。
何を作ろうかなぁ。そういえば、オリーブオイルがあれば、クラーケンでもうちょっとイタリアンできそう。
でも、もうクラーケンばっかりはいいや。
えーっと、何があったかなぁ。肉類は、みんな干し肉か燻製肉になってる。
……魚はこの時間から釣るのは厳しいよね。
ご覧いただきありがとうございます!
食料品は買えなかったけれど、油をついに手にいれました!料理の幅が広がります!……たぶん。




