101 ハズレＭＰポーション
「ユーリ姉ちゃん、攻撃力３しかないのか？」
カーツ君が今度は別の驚きを見せる。
う。
「ねー、じゃぁ、この包丁すごく攻撃力があるんだね。すごーい」
「そうだな。攻撃力が２００近くもあるような武器は冒険者になってもＢランク以上でもなかなか手に入らないぞ」
そうなんだ。
「この包丁、すごい包丁なんだね。関の刃物みたいな感じかな。ほしかったんだ。切れ味のいい包丁。トマトの皮がつぶれないとか、鮭の骨も軽い力で切れるとか。大事に使わないとね」
「せっかく強い武器なのに、ダンジョンでは使わないの？」
ダンジョンで？
「つ、使わないよっ！せっかくの包丁で……」
ゴキスラ退治に使うなんて、勿体ない！っていうか、むしろゴキスラやっつけた包丁で料理するなんて……。
あああああっ！
想像しただけで、身の毛が……。
「そっか。うん、まぁ、包丁だしな」
「ユーリお姉ちゃん、トマトの皮がつぶれなかったり鮭の骨が軽い力で切れるのはすごいの？」
「うん。そうだよ。食べ物には繊維方向とかあって、繊維をつぶさないように切ると歯ごたえが違ってくるの。刺身なんて、断面が違うだけで鮮度の落ち方も変わるしね、プロの料理人は包丁をとても大切にしているのよ」
キリカちゃんがすごーいという目でこちらを見ている。
「すごい包丁手に入れちゃった。じゃなくて、これ、ローファスさんのお金で買った小屋の備品だから、私のというわけじゃないか！キリカちゃんも使えばいいのよ？っていうか、ずいぶん時間かけちゃったね。まだ見て回るところ多いから急ごう」
「そっか。もう武器屋防具はいいから、食料品の店の通りに急ごう！」
と、急ぎ足で通りを進んでいく。
「あ、カーツ君、ポーション売ってる！」
１本目の通りを抜け、２本目に入ったところで足を止める。
「え？ポーション？ポーションなら薬屋かギルドだろう？そこは雑貨屋だろう？」
雑貨屋？
「あれは、ポーションじゃないの？」
MPポーションと同じ形の瓶がいっぱい並んでいるように見えるんだけど。
「ああ、ハズレMPポーションだよ」
何？
ハズレMPポーション！
「見ていい？また醤油みたいにおいしい何かかもしれないし！」
カーツ君が首を横に振った。
「食べ物じゃないよ。だから雑貨屋で売っているんだ。というかMPポーションはハズレでも役に立つからああして売っている」
「食べ物じゃなくて、役に立つもの？何それ？液体だよね？」
キョロキョロとキリカちゃんがお店の中を見て回る。
「あ、ほら、ああやって使うんだよ」
キリカちゃんが指さした先には、ふたを取ったMPポーションに上が黒いひひも状のものが刺さっていた。
上が黒い？
ま、さ、か！
「あれ、明かり用？え？光の魔法石とか使うんじゃないの？」
思わず大声を出すと、店主がこちらを向いた。ちょっとふくよかな中年女性だ。
「おや、お嬢さんは光の魔法石は知っていても、ランプは使ったことがないのかい？」
ランプ、アルコールランプなら小学校の時に使ったことがある。
アルコール？石油や灯油の類は引火性が強すぎてこんな使い方は危険なはずだ。アルコールも揮発性を考えたらふたを開けたまま使いかけのものを置いておくはずはない。
「あの、手に取ってもいいですか？」
「はい、どうぞ」
迷わず匂いを嗅ぐ。
うっわぁーーー。
瓶から顔をばっと上げる。
「ああ、ごめんね、注意するのを忘れていたわね。えっと、少し色が濃いそれは匂いが結構するでしょう？」
はい。めっちゃいい匂いがしました！
ゴマ油です！
間違いない、ごま油の匂いですっ！
油だ！
油は明かりに使う認識なんだ！日本でも江戸時代とか菜種油で明かりともしてたはずだ。和紙を拠ってこよりにしたものを油にさして使っていたんだっけ？
それから、最近ではオリーブランプとかいろいろな油のランプも売っていたはず。
食用も明かり用も一緒なんだよね！一緒なのよっ！
いつもありがとう！ついに出てきたハズレＭＰポーション！
ふはははは！
全部まとめて出てきた！
さて、書影はまだですが、表紙イラストがＡｍａｚｏｎとかツイッターとかそこそこで発表されました。
ローファスさんのイケメンっぷりを見て楽しんでください。
キリカちゃんもかわいいのよー。
では！
