薪がいらないかまど!
小屋には地下食糧庫という石造りの地下室があった。
そこに無造作に置かれた麻袋の中には、籾に包まれたままの米。たぶん、米。
「手伝おうか?」
なんかバタバタと動き回る私に、ブライス君が声をかけてくれた。
「ありがとう。あの、これパンを作るときはどうしてるの?」
籾のついた米を見るのは初めてだ。
ブライス君が籾を何か見慣れない道具で外してくれた。それから、それを臼みたいなところへ持っていく。
「す、ストップ、ストップ!」
そうか。臭くて不味いって、精米せずそのまま使うからなのか!ヌカ臭いんだ。
精米。これは小学校の授業でやったことがある。瓶の中に米を入れて、棒でつく。ザクザクザク。
昔の日本では子供たちの仕事だったとか。っていうのは実は眉唾らしい。戦時中は確かに瓶の中にいれて貴重な米を大切に精米したりもしたらしいけれど。何時間もかかる作業を毎日毎日するわけはない。実際、昔の人は石臼のようなところに入れてドスンドスン杵のような棒を落として一度にたくさん精米していたんだよね。水車を利用したり、男達がシーソーみたいな道具で足踏みで作業したりしていたらしい。
丈夫そうな鍋に玄米入れて、何に使うのか分からないちょっと重たい棒を上から落とす。
「何してるの、お姉ちゃん」
「こうすると、まずい麦が、おいしいお米に変わるのよ」
「マジで?俺、やってやるよ!」
カーツ君が体力仕事を引き受けてくれた。大丈夫かな?と思ったけれど、岩を登っていく姿を思い出す。私よりも確実に体力あるよね。
「じゃぁ、お願いしてもいいかな?」
その間にキッチン設備の確認。説明役はブライス君。
「水は、そこから出てくるよ」
ポンプがあった。よかった。川からくんでくるとかじゃなくて。
「薪?森で拾い集めるしかないかな?」
まじですか。……それは結構時間かかりそう。それに、生木を燃やすとすごいことになるんだよね。私にちゃんと見分けられるかな……。
キャンプで薪を燃やして料理したことあるからかまども大丈夫と思っていたけれど甘かった。
「火の魔法石を使うなら、3日くらい使える小さいのならポーション1つで交換できる」
と、自動販売機を指さした。
「火の魔法石?」
うわっ!ファンタジーだ!
かまどの鍋を置く場所の横に小さな窪みがある。そこに置いて使うそうだ。
ポーション1つね!3日も持つなんて経済的!絶対薪よりもいいじゃんっ!って、ポーションがない!
昨日全部使っちゃったんだ。
そ、そうだ。
「ブライス君【契約 ポーション一つ貸して 等価返済】」
これでいいのかな?
「了解。【契約成立】」
ブライス君が契約成立と口にすると、ぱぁっと手の平くらいのオレンジ色の光が現れて、私とブライス君の額に吸い込まれていった。
うおう、ファンタジー!
ブライス君の持ってきてくれたポーションを自動販売機に入れて「火の魔法石」と言ったらパンの出てきたのと同じところからコロンと爪の先くらいの赤い石が出てきた。
よし。
カーツ君の手から精米された米を受け取る。そのまま鍋に移して洗おうかと思ったけれど、いったんざるに出してヌカと米に分けた。ヌカも貯めればぬか漬けとか作れるよね。野菜って、ぬか漬けにすると栄養素が上がるし。とはいえ、子供の口に合うかな……。それに、作り方は知っているけれど、一度もチャレンジしたことなかったんだよね。
「あれ?まずい麦が白くなってる」
「臭くて不味い原因はこの茶色いやつだから、こうしてからパンをつくるとまずくないはずよ」
「すごい、お姉ちゃんすごい!」
「本当ですか?」
「へー、じゃぁパン作りは俺たちには無理だけど粉にしてペタパン作ろうぜ」
ペタパンっていうのは膨らんでない小麦粉を練って焼いただけのものらしい。ナンっぽいものかな?
「あー、待って、粉にしないで!炊かせて!」
あわや臼に入れられるというところで米を救出。
鍋にいれて水で3回研ぐ。
それから水を入れてかまどへ!はじめちょろちょろ中ぱっぱ。赤子ないてもふたとるな。
「火加減の調整はそこでできますよ」
かまどなのに、超便利!っていうか、かまど炊きのご飯っておいしいんじゃなかったっけ?とはいえ、鍋のふたがちょっとかまどご飯っぽくない、ペラペラな物だからどうかな。そのうちもっと厚みのある蓋をなんか用意しよう。
「30分くらいでできるよ。みんなも食べてみてね。とはいっても、おかずどころか塩もないけど……」
お米はかみしめれば甘いというけど。うーん。
「じゃぁ、その間にみんな今日の準備だ」
ブライス君の声に皆が元気よく返事をした。
ご覧いただきありがとうございます。
本日11話分更新いたしました。明日からはもう少しゆっくりペースです。
ブクマ感想評価を励みに頑張りたいと思います(=゜ω゜)ノ
こそっとこの先の内緒の話……。
ローファスさんが筋肉版残念(ラト系)に進化してきた……。
ブライス君のローファスさんへの塩対応が……楽しい。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!(*'ω'*)