92 教えてください
「サーガさん、あの、私も、私とキリカちゃんも乗れますか?3人で町に行けますか?私、一度町で何が売っているのか見てみたいと思っていたんです!」
「ええ、もちろんいいですよ。というわけで、朝食後すぐに出発ですから準備しておいてくださいね」
「うれしいです!ありがとうございます!サーガさんっ!じゃぁ、みんなで残りのご飯を食べて、そうだ、お昼のお弁当を作ろう」
朝食の途中だったことを思い出し朝食を再開する。
「なんで、サーガばっかりあんなにユーリに感謝されるんだっ!」
「ローファスさんがそもそもサーガさんを連れてきたんですよね?」
ぼそぼそと何か話声が聞こえます。
「キリカちゃんが作った焼きタコバジルも食べませんか?おいしいですよ?」
「食べる!」
ローファスさんがもぐもぐ。
「キリカ、うまいぞ。うん、こんなうまい毒消し薬なら戦闘意欲も増すな。ってか、さっきの俺の作ったやつも塩つけて焼けばいいのか?」
違うのですよ。
「まずは、ぬめりを取らないと」
酢って、ポーション以外にあるのかな?ないなら普通に塩でぬめりを取ればいいんだけど。
塩って普通に手に入るとは聞いたけれど、それでもぬめり取りには味付けと違って結構大量に使う。日本みたいに海に囲まれて塩は簡単に手に入るのであれば塩でぬめりを取ればいいんだけど。うーん。まぁ、考えても仕方がない。とりあえず、塩でのぬめり取り……というか、タコの扱い方全般について知っていることを書いておこう。墨袋のこととか。皮のこととか。
紙に簡単に書いてサーガさんに手渡す。
「タコの扱い方を書いておきました。ぬめりの取り方も、これで問題があるようならほかの方法もありますから」
紙を受け取ったサーガさんが申し訳なさそうな顔をした。
「ありがとうございます。あの、この文字は?」
そうか!日本語が読めないのか!
「「はっはっは。サーガ、お前鑑定魔法が使えないのか?しょうがない。お兄様が読み上げてやろう【鑑定】タコのぬめりの取り方」
うっ。
書いたものを声に出されて読まれるって、どういう羞恥プレイですかっ!やめてほしいっ!
「兄さん、覚えられないので、紙に書き写してもらえます?」
ありがとう、サーガさん。これ以上羞恥に耐えなくていいんですね。
「えー、めんどくせぇな。ブライス、お前、頼む」
ブライス君がはぁーと大きなため息をついた。
「わかりました。ローファスさんの文字では、さらに誰かの解読が必要になりそうですしね」
「ごめんなさい、私が文字が書けないせいで……」
みんなに迷惑かけちゃった。
「ユーリさんのせいじゃありませんよ?文字が書ける人のほうが少ないのですから。こうして故郷の文字でも書けるのは素晴らしいと思います」
ブライス君。故郷でも、簡単な英単語をかき間違えるくらい外国語は苦手だったんだよ……。そうか。日本語が書けるだけでも素晴らしいのか。ところ変われば認識も違ってくるんだね。
って、でも、やっぱり……。
「ありがとうブライス君。でもね、私、この国の文字も覚えたい。どうしたら覚えられるかな?」
「キリカも!キリカも文字覚えたいのっ!」
「俺も!俺も文字が書けるのかっこいいじゃんっ!名前が書きたい。あと、ギルドの依頼書が読めるようになりたい!」
そうか。文字の読み書きができる人が少ないということは……。そうだよね、学校に通っているわけじゃないんだから、キリカちゃんやカーツくんだって読み書きできないんだ。
文字の読み書きができないと、悪い人に騙されるという話を聞いたことがある。読み書きできて損することなんて何もないはずだ。
もし冒険者になれなかったとしても、働き口も見つけやすくなるはず。
「教えてください!文字!」
文字を覚えたら、そうしたら、キリカちゃんやカーツ君より後に小屋に来る子に、今度は私が教えてあげられる。
頑張る。覚えて、子供たちに教えるんだ。正直、日本では英語は成績がつけられるから勉強していただけ。でも、今は違う。生活に必要なんだもん。外国語が苦手なんて言ってられない。言わない。
「僕が教えて上げられればいいんですが、小屋に顔を出す回数を増やしましょうか?」
「おい、ブライス、それじゃぁ遠征無理になるじゃないか!小屋に来たい気もちはよくわかるが」
あー。たぶん、小屋に来たい気もちはブライス君とローファスさんでは理由が違いますよね……。ははは。どんだけローファスさん、ご飯食べたいんでしょう。
でも、そう思ってもらえるのもうれしい。
主人は……次第に家で食べることが少なくなっていったから。
いろいろ料理の工夫もしたんだけど、ダメだった。
「あの、本とかって売ってますか?」
識字率が低い世界だと、本などは一部特権階級のもので売っていない、もしくは高価なことが多い。
紙は質はよくないけれどメモ書きに使える程度には普及してるから、あとは印刷関係がどうなっているのか。
「本?まぁ、売ってるといえば売ってるが……そんなもん、何に使うんだ?」
いや、文字の勉強ですってば!って、そうか。文字が読めないのに本を欲しがるのは変か。
いつもありがとう!
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あ、レビューもどこかでの呟きも嬉しいです!
本当にありがとう!
というわけで、情報解禁いたしましたぁーーーーっ!
8月10日ツギクルブックス様より、書籍が発売予定でございます。よろしくお願いいたします。
加筆してます。あの辺を加筆してます。(*'ω'*)ユーリさん、頑張りました。たぶん。




