89 新発見!
はい。
あの葉っぱ、バジルでした。トマトとタコとバジルなんて、イタリアン食べたくなるよね!ああ、ピザも食べたいなぁ。
チーズが欲しい、チーズ、チーズ!
「これ、クラーケン、昨日のもおいしかったけど、これもおいしい!ふわっとしてる!」
パクリ。
私もタコ……ならぬクラーケンを口に運ぶ。
うん。ラードもどきで痛めたクラーケンは火を通しすぎずにふっくらと仕上がっている。
トマトの酸味とバジルのスゥッとした香りが、ラードの脂っぽさをさっぱりとさせていて……。
「おいしいっ!」
我ながら大成功。バジルおいしい!
「本当に、これもおいしいですね。……あれ?補正効果は尽きませんね?」
あ、そういえば。
ラードとバジルの風味オンリーでした。
ラードを作るときに使っていた調味料は無効になってるんだね。
少し何か調味料入れたほうがよかったかな?
「あ、ごめんなさい。何も使ってなくて……。ジャムにはMPポーション使ってあるけど……」
ブライス君がにっこり笑う。
「ユーリさんの新しいことを発見です」
え?
「ハズレポーションがユーリさんの料理をおいしくしているわけではなくて、ユーリさんの料理の腕がいいってことを発見しました」
「それな!それ!ユーリはポーション料理じゃなくたって、料理が上手い!サーガ、分かったか!ユーリはすごいんだぞ!」
ローファスさんがなぜかサーガさんにどや顔。
えっと、でも……。
「ありがとう」
ブライス君とローファスさんにお礼を言う。
「クンクン、キリカ、におい覚えたよ。これ、草じゃなくておいしい葉っぱ」
キリカちゃんがバジルの匂いを嗅いでいる。
「そうね。おいしい葉っぱ。バジルっていうのよ」
ガタンと、サーガさんとブライス君が同時に立ち上がった。
「バ、バ、バジル?」
「バジルって、伝説の、バジリスクに侵された毒さえも解毒するというあの、バジルですか?」
は?
「いえ、ただのハーブだと思いますけど……?」
偶然名前が同じなだけでは?
「【鑑定】」
ブライス君が鑑定魔法をタコとトマトのバジルサラダにかけている。
「あー!補正値が上がらなかったから、何の効果もないと思っていたけれど、解毒作用が強だと出ています!毒に侵されてなかったから気が付かなかっただけで、ただの料理じゃないですよっ!」
ブライス君が口元を抑えた。
え?そうなの?
「ユーリさん、料理に使ってないバジルはまだありますか?」
ブライス君に言われて、キッチンからバジルの葉を数枚持ってくる。
「はいどうぞ」
「【鑑定】」
今度はローファスさんが鑑定魔法を使ってバジルを見た。
「なんだ、解毒作用なんて書いてないぞ?ってか、俺の鑑定魔法じゃそこまで見えないのか?」
ブライス君もバジルに鑑定魔法をかけている。
「ハーブとだけ出てますね。効果はやはりないみたいです……」
へーそっか。
「これも、ユーリさんが料理したから効果を発揮したのでしょうか?でも、ダンジョン産のものではないのに?ポーション類はダンジョン産だからどんな効果があっても驚きませんが……」
ああ、不思議空間だもんね。
中身がなくなると消える瓶とか不思議だもん。
野菜とかは普通に使った分以外、ヘタとか皮とか消えてなくなったりしないし。
それともダンジョンの上の畑だからあそこで育ったものは不思議空間なのかなぁ?
「んじゃぁ、キリカが作ってあげるよ。比べたらわかるよね?」
キリカちゃんが一口サイズのクラーケンにブライス君が粉砕したバジルをまぶした。
えっと、クラーケン生です。見た目は、タコわさびみたいになった。
でも、別物ですよ、キリカちゃん。
「【鑑定】って、キリカ、お前の料理は補正値+2だったよな?解毒作用が強と出ている!」
ローファスさんが目を真ん丸にしたまま話を続ける。
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ある日、トマトはバジルについて検索をかけていた。
「バジルはバジリスクの毒を解毒するほど強い解毒作用があることから名づけられたという説もある」
……は?
バジリスクからバジルって名前が付いたの?
……はぁ?ここ、現代日本ですよ?まさか、そんな食べ物を口にしてたとは!
驚きました。というわけで、バジルはバジリスクの毒に聞くらしいです。もし、旅先でバジリスクの毒にやられたときは、バジルを食べるのです!
……という経緯から生まれた話。