離婚前に職探ししようとハローワークへ行ったのですが
まずはあとがきをご覧ください。
学生結婚した。1年目。
「優莉ちゃんには専業主婦になってほしい。就職なんてしなくていいよ。おいしいご飯を作って僕の帰りを待っていてほしいんだ」
結婚2年目。
「ごめん。食べて帰る」
結婚3年目。
「仕事が忙しいんだ。子供?まだ若いんだからそのうちな」
結婚4年目。
「会社の部下の子供なんだ、少し預かってくれないか?」
結婚5年目。
「保育園に入れられなかったみたいなんだ、彼女に協力してあげてくれ」
結婚6年目。
「子供?ああ、そのうちな。今は彼女の子供の世話で忙しいだろう」
結婚7年目。
「どうせお前は専業主婦で家にいるだけで暇だろう?彼女はシングルマザーで頑張っているんだ」
結婚8年目。
「働きたい?今まで働いたこともないお前に何ができる」
結婚9年目。
「彼女に子供ができた。離婚してくれ。慰謝料?10年近く家でのんびり過ごしてきたくせに?冗談じゃない」
ブチッ。
「私だって、働いて生活できるわよっ!見てなさい!離婚?私が慰謝料もらわなくても一人で生活できるようになったら判を押してあげるわよっ!慰謝料渡さないって言ったのはあなたの方なんですからね!」
そのままハローワークに駆け込んだ。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
「すいませんっ、仕事を紹介してください!」
「冒険者ギルド西ヘルナ支部へようこそ」
え?
最近のハローワークって、若者向けにゲームっぽくしてるの?
「登録証を見せていただけますか?」
へ?
「あ、あの、私、仕事を探すのは初めてで、登録とかしていなくて……」
何か用紙とか記入して登録しないといけないんだっけ?
まるでゲームの中に入り込んでしまったかのような、木と石の質感漂うカウンターの中の女性を見る。
黄色い髪の彫りの深い西洋風の顔立ちの美女だ。
「では、カードもお持ちではありませんよね?」
「カード?」
クレジットカードもキャッシュカードもない。
そうだ。私の名前で作ったカードは何一つとして持っていない。
私……。いったいこの10年何をしていたのだろう。料理の腕を磨いて、主人の浮気相手の子供の面倒見て……。ああ、子供たちは元気かな。あの子たちに罪はないもの。あの子たちには幸せになってほしい。
離婚かぁ……。うん。早く自立して、あの子たちのためにも判を押さなくちゃ。
「では、カードを作りますのでステータスの開示をお願いできますか?」
ステータスの開示?履歴書を見せろということ、なのかな?持ってきてないよ。
戸惑う私に、カウンターの女性はにっこりとほほ笑んだ。
「あ、大丈夫ですよ。我々ギルド職員は個人情報守秘義務があり、魔法で拘束されています。ですから絶対にあなたのステータスを漏らすことはありません」
魔法?
「こちらの紙に手を乗せてからステータスオープンと言ってくださいね」
主人に、世間知らずだと何度も叱咤されたけれど、本当だったかもしれない。
10年前、学生の頃に就職活動で訪れたハローワークはこんなんじゃなかった。
「ステータスオープン」
目を白黒とさせながらも、言われるままに紙の上に手を置く。
すると、目の前にまるでゲームの中みたいに小さな画面が空中に現れ、文字や数字が描かれている。
それがそのまま、手を置いた紙にも表示された。
すごい、なにこれ。魔法みたい。
「あっ」
女性が小さく声を上げた。
「あーあ、こりゃひでぇな。5歳の子供並みじゃないか」
女性の後ろから、30前後の背の高いがっしりした男が現れた。
私の手元の紙をのぞき込むと残念な子を見るような目で私を見る。
「これで仕事するっつっても、紹介できる仕事なんて何にもないぞ?」
え?
「あ、あの、私、困りますっ!どうしても仕事をしないと」
「んー、嬢ちゃんな、どうしても仕事したいなら、冒険者ギルドじゃなくて商業ギルドで仕事を探しな。言葉遣いや立ち振る舞いはちゃんとしてるから、そこそこのお屋敷での仕事が見つかるだろうよ」
嬢ちゃん?
そんな年齢じゃないんだけど。もう三十路なんだけどな。でもステータスが5歳児並みらしいから馬鹿にしてるのかな?
「お屋敷の仕事?」
「ん、ああ。掃除したり洗濯したり、料理ができるなら料理をしたりな」
掃除、洗濯、料理……。
「いやです」
思わず声が出た。
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書籍版とはストーリーが途中から違います。作者も脳内で混乱することがあり時折どっちがどっちの話だったのか間違えてしまうことがありますがご容赦ください。