少女と、話し合い 1
魔物退治を終えて、私たちは皆で話し合いを行っていた。これからどこに向かうべきか、ということだけではなく、これからどのように動くべきか。
―――それは、私が神子かもしれないことを含めての話し合いだ。
「まずは、どこに向かうかだな」
「シレーバは、何処に向かいたいとかはあるか?」
「……我らはここ以外の場所を知らぬ。精霊樹様が好む環境であればどこでも構わないというのが正直な感想だ。ただし、あの魔物のような存在が居ない場所。そして我らを奴隷にしようなどともくろむものがいない場所に行きたいと思っている」
「それは当然だが……、しかし移住した当初は良くてもその後にそういう存在が現れることは十分ありえる」
私はシレーバさんとドングさんが会話を交わしているのを、レイマーの上に乗りながら聞いていた。私の隣にはフレネもいる。他の契約している魔物たちだっている。ガイアスも私の側で聞いている。
「それだけではないわ。レルンダが神子かもしれないというのならば、少なくとも人間はそれを知れば私たちに手を出してくるでしょう。ううん、人間だけではなくて、他の獣人たちだってもしかしたらレルンダのことを狙う可能性もある。それなら私たちは逃げることを大前提に考えるべきではきっとないわ」
私が、神子かもしれない。
その事実が余計に事態をややこしくしている。私が神子かもしれないという事実があるからこそそれだけ考えなければならない。
そのことを思うと少しだけ落ち込んでしまう。私が、神子かもしれないから大変なんだって。
「レルンダ、落ち込まないで。貴方のことを責めているわけではないの。それに貴方が神子かもしれないというのならば私たちは納得が出来る。あの時、アトスさんが亡くなった時、あれだけの被害で済んだのは貴方のおかげだと思うもの。あの時は正直、どうなるか全然分からなかったから」
「……うん」
シノルンさんの続けた言葉に私は頷く。
「貴方のせいではないの。レルンダが居るからこそどうにかなることもきっと多いわ。あの精霊樹のもとにいた魔物を倒せたのも、レルンダのおかげよ。精霊樹のことだって。だからもっと胸を張っていいのよ。その神子かもしれないと思える力があるからこそ、貴方が出来ること沢山あるのだから」
「うん……ごめんなさい。話中断、しちゃった」
私を慰めるために一旦、話を中断させてしまったのでそういう。
「いいの。それよりも私たちは逃げることを考えるべきではない。戦うための力を、そう手に入れるべきなの。逃げるではなく、守る力。私はレルンダが大変な目に合って欲しくないもの」
私たちは、シノルンさんがいうように逃げていた。脅威にさらされて逃げた。人間が襲い掛かってくるからって逃げた。そして逃げた先でこうしてエルフの人たちに出会った。私たちは平穏な場所に逃げることだけ考えてた。
でも———それではだめなのだ。今度、新しい場所を見つけて、次に逃げる? そうなると、どこへ? 本当に逃げれるのか? そういった問題がある。そういう暮らしは決して長くは続けられないだろう。ならば、どうするべきなのか。
そう考えると確かに、逃げるではなく、戦うようにすべきだろう。守るために。逃げて、逃げて、逃げてもどうしようもないから。それだとただどこまでも逃げなければならなくなるから。
「そうだな。逃げ続けることを前提に考えずに、ずっと住まえる場所を探すべきだろう。となるとやっぱり俺たちにとって住みやすい場所を探すべきだろう」
オーシャシオさんもいった。
逃げ続ける、ではなく一生住まえる場所を探す。その後どうなるのか分からないとしても、ずっと住んで行ける場所を探すのが第一。そしてそこでずっと過ごしていけるように守ること。
私もシノルンさんの考えを聞いて、それはいい考えだと思った。
ドングさんは、彼らの会話を聞いて、何故か私とガイアスの方を見る。
そして口を開く。
「レルンダとガイアスがな、俺に言いに来たことがある。―――アトスが亡くなったあとにだ。獣人たちが安心して暮らせる場所を作りたいと」
それは、私とガイアスが誓ったことだ。出来ないかもしれない。だけれど、願って、誓ったこと。そういう場所を作りたいんだって。
ドングさんの言葉に、皆の視線が私たちの方に向く。
「――その願いの通りにすべきではないかと俺は思う。俺達が安心して暮らせる場所を、俺達の手でつくる。難しいことかもしれないが、やろうとしなければ出来ることも出来ない」
私たちの口にした願望。私とガイアスでたった二人で誓い合ったこと。
それを私とガイアスの願望ではなく、皆でかなえる願望へ。そうしないかと、そうドングさんはいっている。
「俺たちの手で、俺達が安心して暮らせる場所を作り、そしてそれを守るために俺たちは強くなる。それは素晴らしいことだと思わないか」
ドングさんは皆の顔を見渡して、そう問いかけた。
―――少女と、話し合い 1
(多分、神子な少女は大切な皆と共に、これからの話をする。これからどうするのか)




