少女、出会う。
「ぐるぐるぐる~」
「ぐるっぐるっ」
「ぐるぐるぐるぅううう」
「ぐるっ~」
レマ、ルマ、ルミハ、ユインの子グリフォン四匹は楽しそうに歌っている。歌を歌うのが楽しいらしい。私も歌っている四匹を見ると楽しい。
ちなみに、レイマー以外は体毛の色が変わったりとか、大きくなったりはしていない。何がきっかけでそうなったかもわからないし、なんとなく金色になりたいと願ったルマを金色にと願ったけど、何だか夢の中で止められたような気がする。なんでだろ?
レイマーは、変化が訪れてから強くなれたんだそうだ。強くなれたと喜んでいた。旦那さんのルルマーが狩りで負けて落ち込んでいた。頑張れ。
「ひひひーん?(レルンダ、乗る?)」
「……乗りたい」
子グリフォンたちと歌を歌ったあとは、シーフォとお散歩に向かうことになった。ちなみに契約を交わしてわかるようになった言葉はなんとなく伝わってくる言葉なので、彼らがそんな口調で本当に話しかけてきているかは定かではないらしい。ただ、変化があったレイマーに関してはちゃんと考えている口調で伝わってきているみたい。
よくわからないけど。
そういえば、お洋服の件に関しては持ってきてもらえるらしい。誰が持ってくれるのか子グリフォンたちにきいたら「持ってきてくれる存在」みたいにしか言わなかったから子グリフォンたちは会ったことがないのかもしれない。正直よく分からない。
服が手に入るならいいかーと結局レイマーたちに聞きそびれていた。
風を蹴って、走るシーフォ。その上でお散歩できるなんて楽しい。風を感じる。気持ちが良い。ぽかぽかとした日差しの中でお空の旅。何だか村にいた頃からしてみれば想像が出来ないことだ。
グリフォンの巣の近くでお散歩中。ワノンにお散歩いってくるって言ったら「近くでね」といわれたから巣の近くでなの。グリフォン一家の巣は森の奥深くにある。私は多分、神子だからグリフォンの巣に連れてこられるまで魔物に襲われたりしなかったけど、それは運が良いってだけなそんな感じだと思う。実際に神子と認められているわけでもないし、神子の力とかわかんないし。
絶対に襲われないってことではない、とは思うから用心はしなきゃならないとは思う。魔物全部が私に優しいとかはありえないだろうし。
「~~~♪」
馬さんの上でお散歩をするのが楽しくて、小さな声で歌を紡ぐ。
皆と歌を一緒に歌うようになってから、村にいた頃はそんなことなかったのに今は歌を歌うことが凄く楽しくて仕方がない。私が歌ったら、皆嬉しそうにしていたから。
「ひひひんひーん」
シーフォも一緒になって歌おうとする。ちょっとなんか違う気がする。音がずれているのかな、と思う。ただシーフォが楽しそうだから一緒になって歌う。うん、楽しい。
そんなこんなしていたら、何かが動く音がした。
何かいる? そう思いながら歌うのをやめて、そちらを向いたら私と同じぐらいの小さな少年が居た。その少年の姿をじっと見つめる。
頭の上部に耳が生えている。あと、人間の私にはない尻尾も。
ふさふさ、もふもふ。
私はそれに目が釘付けである。
それが人間の体についている。私は初めて見るけど、獣人というものなのだろうか。私はシーフォから飛び降りる。
シーフォが「ひひん!?(レルンダ!?)」と声を上げるけれど、私は興味津々で少年に近づいていった。黒髪の少年は固まっている。なんでそんなに固まっているのだろうか。
背は私と同じぐらいだろうか。
「……ねぇ」
話しかけたらびっくりした顔をされた。何故だ。
「……耳と尻尾、触っていい……?」
「はい!? って、ちょ、まっ、だ」
いいんだよね? と思った私はそのふさふさ、もふもふの耳と尻尾を堪能していた。思う存分撫でまわした。グリフォンたちとシーフォを散々撫でまわして、気持ちよく鳴かせてきた手だから、少年も気持ちよかったのだと思う。何か言おうとした声は途中で途切れた。
獣人、初めて見たけど、ふさふさでもふもふで、良い。
撫でまわされて、座り込んじゃった少年、可愛い。
「……満足」
最終的に満足した私の目の前には、座り込んじゃった声にもならない声をあげている少年が居た。
あの耳、狼かな。獣人って、色々いるはず。よく知らないけど。グリフォンたちとシーフォとはまた違った良いもふもふでした。
「ひひひーん……(レルンダ……)」
「……シーフォ、どうしたの?」
「ひひん、ひひひひん(獣人にとってその部分大事)」
「え」
「ひひひひん(番しか触らないはず)」
え、そうなの?
―――少女、出会う。
(多分、神子な少女は初対面な獣人の少年をもふもふしてしまう)