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【連載版】双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。  作者: 池中織奈


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王子、報告せず。

 俺、ヒックド・ミッガは、椅子に腰かけてこの前の出来事を思い浮かべた。



 獣人の少年を、追い詰めていたという騎士たち。その騎士たちの目の前で、獣人の少年を守っていた少女。小さな体で一生懸命、獣人の少年を抱きしめていた少女。



 騎士たちが幾ら手を出そうとしても、手を出せなかった。いや、その手は届かなかった。そんな報告を受けている。



 俺が手を伸ばした時、あの少女に触れることが出来た。でも騎士たちは触れられなかった。それはどうしてなのか。



 疑問が、頭の中に何度も何度も浮かぶ。



 俺が、グリフォンに乗って逃げていく人間の少女と、獣人の少年を追いかけようとした騎士たちを止めたのは、嫌な予感がしたからだ。手を出してはいけないものに、俺達は手を出そうとしているのではないか、いや、手を出してしまったのではないかと。



 そう考えてしまう。



 なぜなら、拠点に戻ってから改めて思い至ったのは、あの少女は———もしかしたら、神子なのではないかということだった。

 神子が同時期に二人も現れることは、歴史の中では過去を見ないはずだ。だから、もしかしたらとは思ってもフェアリートロフ王国が神子を確保しているのならば、あの少女が神子ということはないのではないか。しかし、ならば何故、騎士たちはあの少女に手を出せなかったのだろうか。

 俺は、そればかり考えている。



 あの少女のこと、あの少年のこと、獣人のこと、父上のこと、考えなければならないことが山ほどある。今回、狼の獣人を捕まえられたとはいえ、村の場所を聞き出すこともできずに拷問死させてしまった。俺自身がそれを望んでおらず、直接拷問をしていないとしても部下がやったことなのだから俺がやったことと同義である。それでいて他の狼の獣人を捕まえる事も出来なかった。



 見つけた狼の獣人の村は、もぬけの殻だったという話だ。逃げ出した後で、南下していったのだろうという話であった。南の未開の森の先まで追いかけるほど労力を割くわけにもいかなかった。結果として騎士が殺されておきながらこちらの収穫はほぼない。―――父上は、俺を使えない奴だと認定するだろう。父上の獣人を捕らえよという命令を、俺は父上の期待通り遂行出来てはいないのだから。



 あの不思議な少女は人間でありながら、獣人たちと共に歩んでいる。もし、本当にもしもの話だが、あの少女が神子であるのならば———、俺達は神子を敵に回してしまうことをしているのではないか。あの少女が、神子かもしれない———いや、神子でなかったとしても不思議な力を持ち合わせているのならば父上に報告をすれば、俺は父上からの失望からは逃れられるかもしれない。俺がそんな報告をすれば、父上は、真っ先にあの少女をとらえようとするだろう。



 ―――寧ろ、報告をしたほうが俺の微妙な立場が少しぐらいはよくなるだろう。そうは思う。思うけれども、俺はあえて父上に報告を上げていない。……上げるべきではないと判断した。いや、俺が報告を上げたくないと思った。父上は今まで従順だった俺がそんな報告を上げないとは思ってないだろう。ならばこそ、隠し通せるだろう。あの、不思議な少女のことを。




「もし、あの少女が神子であるならば———」





 本当にもしもの話だが、もし、あの少女が本当に俺が思い至っているように神子であるというのならば————俺のことを、殺してくれるだろうか。

 そんなことを考える。



 父上の命令に従うままに、俺は非道なことを行っている。その自覚は十分ある。父上に命令されるがままに、罪があるかもないかも分からないものを処刑する指示を出したり、獣人たちを奴隷に落としたり———、そしてあの、村を思って村の場所を一切言わなかった狼の獣人を殺してしまったり———俺はずっと、罪を犯し続けている。



 父上の命令が、正しくない時もあることを知っている。

 でも、父上は王だ。王がそうだといえば、そうでないものもそうなってしまうのだ。だから、俺はそれに従い続けている。心が痛んでも、正しくないことを知っていても、それでも俺は父上に逆らえない。逆らうだけの力もない、俺は、きっとこれからも父上に従い続けるだろう。そして、非道なことを行いつづけるだろう。沢山の、恨みと憎しみを買うだろう。いいや、もう既に買っているだろう。

 そんな俺は、王子だというだけで恨みと憎しみを買おうが、誰にも殺されずに生きているのだ。




 そんな風に、思考をしている中で扉がノックされる。






 そして「ヒックド様、陛下からの伝令が参りました」と、そんな報告を受けた。

 父上は俺に、次はどんな命令を下すだろうか。俺を、どんなふうに使おうとするだろうか。―――どんな命令だろうとも、俺は実行するだろう。そして実行した先の結果を、俺は目を背けたくても受け止め続けなければならないのだ。





 ――――王子、報告せず。

 (その王子は、少女が神子ではないのかと思い至っている。だけど、それを自分の意志で国王には報告をしない)



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― 新着の感想 ―
[一言] 「その王子は、少女が神子ではないのかと思い至っている。だけど、それを自分の意志で国王には報告をしない」 命令されて殺しているだけだと、さんざん自分に言い訳し、見逃したことを、とても誇るように…
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