少女と、大きな争い ⑩
結局のところ、その場では当然決断出来なかった。それに情報が足りなさすぎる。
今のルーニッド王国は、国王が代わったことで以前より荒れているそうだ。他国からの来訪者に対してかなり厳しいらしい。
……ルーニッド王国は、私達の国が存在していることを知っている。
だからルーニッド王国に情報収集に向かった際に、調べられたら捕らえられたりする可能性もある。
やっぱりどんなふうにしていくか、悩んでしまう。
村だった頃は、別の場所に逃げる選択肢があった。だって私達にとって場所というのは重要なものではなかったから。
誰と一緒に居るかだけが重要で、私達にとってはミッガ王国は強大で、敵対しない道を選べるならそうしたかった。
でも今は、私達はこの場所で、みんなで生きて行くことを決めたのだ。逃げずに、此処で生きて行くために立ち向かっていくのだと――そう決意したから。
ルーニッド王国にとっては他国という位置づけである私達が彼等の国をどうこうしようなんて傲慢な考えなのかもしれない。向こうからしてみれば、勝手にこの地に住み着いて、力をつけようとしている恐ろしい外から来た人みたいな認識なのかも。……そう考えると余計に難しいなとそんな気持ちになった。
確かに私達だって、自分の国のことを全然知らない人がどうこうしようとしてきたら凄く嫌な気持ちになると思う。自分たちのことは自分で決めたいと感じるだろう。
ただ私達の国のためにも、他国との関わり合いは少なからずしなければならないことではあるのだろう。
そうなると、何処まで許されて、何処まで許されないかとかそう言う話になる?
妥協しなければならないけれども、どこまで妥協するかって難しい問題だ。
そもそも今は、此処まで妥協出来ると思ったことも将来的には大きな問題に繋がったりするかもしれないもんね。
だから多分、これから先の選択に正解というのはない。……これが最善だったって、その時は思っている選択を出来るようにはしたいな。
将来、私が……いなくなった後に生きている人達が健やかに生きていけるようにはした方がいいだろうなとは思っていたりする。
だって私達の行動で何かしら、後々大変な目に遭う人が増えるのは避けたいもん。
私はそんなことを思ってしまった。
――その後も会議は続いた。
ルーニッド王国に対することばかりだった。
ミッガ王国とは、ヒックドさんが王様ということもあって問題なく交流を持つことが出来ている。だけれどもそれってきっと奇跡的なことなんだろうなと思った。
国と国との付き合いって、私が思っているよりもずっと難しいものなんだろうなと簡単に想像が出来る。
私が幾ら、誰とでも仲良く出来た方が嬉しいとそう思っていてもそれってきっと難しいことで……これから先の未来で同じようにどうやって国同士の付き合いをしていこうかと悩むことってきっとあるんだ。
そう思い至ると、国って大変だと思った。
捨てることなど出来なくて、私達はこの場所で生きていくためにもっとずっと悩み続けはするんだろうな。少なくともしばらくの間は。
私達が、何をどうすべきか。どこまで他国のことに関わるべきか。その判断はすぐには出来なかった。だけれどもいつまでも判断しないということも出来ない。ルーニッド王国からやってきた人たちのことを私たちは捕えている。
いつまでも帰ってこない人たちが居ればそれだけ探りに来るだろう。ルーニッド王国の人達がどういう意図でこちらにちょっかいをかけているかは分からないけれども……。
国と国の、関わり合いって王様になったとはいえ私とガイアスだけで全て決めることは出来ないのだ。こういうことが難しいのは、この選択が正しいことだったのか、難しいことなのかの判断がつかないことが悩ましいことなのだ。
私は、出来れば間違いを犯したくないとそんな風に思ってしまっている。
私達から見て正しいことも、他の方面から見てみると正しくないことってきっと幾らでもある。
私たちはこの場所を国にした。そして周りの国とも関わって生きて行こうとしている。だからこそ、こんなにも難しい。
私は会議の後に、空の上に浮いていた。
やっぱり天気が良い日は、空に居るのが一番落ち着く。
雨の日も、曇りの日も嫌いというわけではない。けれども晴れている時の方が個人的には好きだったりする。
私は神子で、この国の王様。そんな立場だから、私の身に危険がないようにと皆が守ろうとしてくれている。私自身に戦う力があって、一人でもきっと問題がないのに。
ただもちろん、一人の時間も作りたいといったらこういう時間を作らせてくれている。
まぁ、一人とはいっても契約しているグリフォンたちや仲間たちも遠くから見守ってくれていたりもするけれども。
どうする方がいいんだろうか、私はずっとそればかりを考えていた。
――少女と、大きな争い ⑩
(神子の少女は、会議を終えて頭を悩ませている)




