少女と、大きな争い ⑨
ルーニッド王国の王様が、今の王様である限り問題は起き続けるかもしれないということなのだとは思う。
だからこそ、王様が代わった方がいいかもしれないって。
ランさんはそう口にして、難しい顔をしていた。
――私達の国にとっては、王様が代わった方がいいのは事実だろう。だけれどもそれって結局、私達側から見た一面でしかない。
私達にとってはそうでも、他の人にとってはそうではないかもしれない。ランさんの言う通り、王様が代わった方がいいという人は存在しているのだろう。ただ、だからといって私達がそれに直接的に関わることはどうなんだろう? 所謂他国の人間である私達が関わることで、どういう未来が待っているかというのが私にはさっぱり分からない。
私は皆で笑っていける、そして大切な人のことを失わずにいられる国が作れたら……ってそんなことばかりを考えていたのだ。
だけれども実際に”国”というものが出来上がると、その先のことまでこうして考えて行かなければならない。
だって私とガイアスは、この国の王様という立場になったんだから。
周りの人たちの助けはあったとしても、そこには責任が伴うもの。
「もっと……情報収集をしてからでないと判断できないと思うの。私はルーニッド王国の王様が代わった方が色んな人にとってもいいことばかりだというのならばそれでいいかなって思う。でも、その王様が実際にどういう人なのかどうかってちゃんと調べてみないと分からないことだもん」
「俺も……そう思う。もちろん、国の皆が平和に過ごせるのが一番いいし、俺達からしてみると王様の代替わりがあった方がきっと楽だ。それでも……だからといって勝手に俺達が他国のことを判断するのっておかしいことなのかなと思うから……」
私の言葉を聞いて、ガイアスもそう口にした。
そうなんだよね。結局、こちらからしてみれば王様は代わった方がいいとか、そんな風に考えたとしても実際の姿がどうであるかというのはさっぱり分からないことだから。
そもそもこの決断って、実行してしまったら……どれだけ多くの人達の未来に直結していくのか分からないもの。私達の行動で、誰かが不幸になったり、最悪の場合はなくなったり……。
そんなことがきっと、起こり得てしまうこと。
それがどうしようもなく、恐ろしいなと思った。
……何が一番大切なのか。それを考えて選択していかなければならないなんて、本当に大変な話だ。でも生きて行くのって、そういうことなんだろうなとそんなことを考えた。
私が捨てられたばかりの頃、もっと小さかった頃は何も考えていなかった。ただ私は生きていて、神子だったからこそ……危険なことに遭遇することはなかった。幼い頃の子供のままだったなら、何も思考することなく生きて行くことがきっと出来たんだろう。
それに私が、王様になることを選ばなければ――きっともっと、誰かの選択にゆだねて、何も考えずに過ごすことが出来た。
ただ私とガイアスは王様になることを選んだ。
王様として生きて行くのならば、私達はちゃんと悩んで、考えていかなければならない。そもそも私達がルーニッド王国の王様を変更したいと思ったところでかえられるんだろうか? もし手を出して誰かが犠牲になったりしてしまったら……そう考えるだけでぞっとしていた。ただそうだったとしてもこのままやられっぱなしだったら逆に大変なことになるのかもしれない。
うん、難しい。本当に凄く難しいことだから、考える必要がある。王様だからといって私とガイアスだけで全て決めてしまうのは出来ない。
「そうですね。……私もそう思います。本当にどうしようもなく難しい話です。他国のことになんて必要でなければ関わらない方がいいのです。私としましても、問題がなければただ穏やかに過ごせればいいとそう思いはします。ただそうもいっていられないので、難しいですね。関わるにしてもどのくらいルーニッド王国の王政に関わるか。それも重要です。上手く立ち回らなければ、さらなる悲劇を生むことにはなってしまうでしょう。それにルーニッド王国が、私達が王の代替えを手助けすることを認めてくれるかも分かりません。臨機応変に交渉していく必要があるでしょう。王が代わった後も、どれだけルーニッド王国の政に関わるか……。それに関しても重要ですね。決めなければならないことは山ほどあります」
ランさんは難しい表情のままそう告げる。
――確かにランさんの言う通り、私が想像しているよりもずっと考えなければならないことがあるのだ。
関わってそれで終わりというわけでもなくて、王が代わった後もどんなふうにしていけばいいのか。そのあたりも私たちは決めなければならない。全て決めていない上で関わったら……ランさんが言う通りにさらなる悲劇が訪れてしまう。
それは嫌だな。
――少女と、大きな争い ⑨
(神子の少女は、女史の話を聞きながら様々なことを考えている)




