少女と、お城の完成 ⑧
私やガイアスの寿命が来るのは、まだまだ先のこと。不測の事態でも起きなければ私たちは長く生きると思う。
けれどそれでも――もしかしたらそういうことは起こるかもしれない。
だから事前にちゃんと何か起こった時のことを決めておきたいなって思っているの。
「確かに俺とレルンダ、どちらかが居なくてもどうにかなる方がいいな」
「うん。私ね、王様になっても行きたい場所には行けるタイミングがあれば行きたいなって思う。どちらかが国を空けてもどうにかなるのがいいんじゃないかなって」
なんだろう、王様にはなろうって決めたけれど――私は自分のやりたいことは諦めたくないとそう思っているの。
何かをするために、何か諦めなければならないことももしかしたらあるかもしれない。けれども自分のやりたいことは出来た方がきっといいとそんな風に思うから。
それにね、私はこの国を幸せな場所にしたい。全部は無理かもしれなくても、笑っている人が沢山の国がいい。
困っている人や悲しい思いをしている人が出来るだけ少ない方が嬉しい。
そう思っている私が、不満とか不自由な気持ちとかを沢山抱えて王様をやるだと何だか違う気がする。
私やガイアスが王様になったら、これまで通りにはきっと行かないとは思う。それでも自分が本当にやりたいことは出来るようにしておきたい。あくまでそれは私の理想でしかないかもしれないけれど、それでも私はそんな風に思う。
望んでいることってすべてが叶うわけではないかもしれない。私の言葉なんて夢物語だとそんな風に言われるかもしれないけれどね。
「俺もその方がいいとは思う。王様って、イメージ的には凄く窮屈に見えるけれどそうじゃない方がきっといい。俺は仲間に何かあるなら戦いの場には行く」
「私も何かあった時は出るよ!!」
「……王様になったら二人とも出るだと下手したら最悪のことにならないか?」
「そうかもだけど……。私は何かあったら出るよ。神子である私が出るからこそ、解決することって沢山あると思うもん。二人で一緒に出られるならすぐに解決することもあるかもしれないしね。ただ必要な時以外は片方が出る形の方がいいのかなぁ。……でもそれだと私は寂しいなって思うな。何か戦わなければならない時があれば一緒がいいなって思うの」
何かあった時に私やガイアスは戦うだろう。例えば私達が王様という立場で、戦いの場にいかない方がいいとそう言われるかもしれない。でもきっと私もガイアスもそういうことが起きた時は皆を守りたいなと戦うだろうなと思う。
だってね、私達は戦う力があるんだもん。それなのにそういう立場になったからって戦わないっていうのは選択しないよ。
きっとガイアスだって同じ気持ちだろうから、私達はそういう立場になっても今と変わらない部分も沢山あるんだなって思う。
「うん。俺もそれがいい」
「ね。あとはそうだね、私とガイアスが王様をするといったら反対する人もいるかもでしょう。そういう人にどういう風に説得したらいいかな? 話し合いとかでちゃんと解決できると一番楽なのだけど……」
「今、この国に居る人たちは基本的には納得してくれそうだけど。ただ人が増えたら分からないな……。俺とレルンダの言うことなんて聞かない人も出てくるだろうし」
「そうだよね。私もガイアスもまだ子供って言える年齢だもんね。それに私とガイアスのこと侮る人とか、出るかも。私たちの周りは優しい人たちばかりだけどこれから交流する人たちも、この国に住まう人たちも、きっと沢山増えていくから」
うん、私の周りには優しい人ばかりだけど、私とかガイアスってまだ子供と言える年齢だ。それに見た目も怖いとかは周りに思われない方だと思う。そういうのだと侮られたりするんだって。
優しい人たちと関わることが多いけれど、やっぱりそういう人たちもいて。
私たちがこの国をもっと大きくしていこうと思えば思うほど、きっと私とガイアスが王様をやることを嫌だという人も出てくるかもしれない。そういう人にはどうしたらいいんだろうかとか、そういうことを考える。
「その時は力と結果を示すのが一番だとは思うけれど。説得する種族にもよるけれど、俺達獣人だと相手が強いというだけでも話を聞こうとなるだろうから」
「力と結果かぁ。でも確かに、私達はこれだけのことが出来るよっていうのを沢山示すことが出来たら皆に納得はしてもらえそうだね。私は此処にきたいという人がいたらなるべく受け入れたいけれど、それぞれの種族とかで、どういう人を王様として認めるか分からないもんね。私だけだと難しいかもだけど、私とガイアスのどちらかが認められればいいと考えると少しだけほっとするね」
一人だったら、全てを納得させることって難しいかもと思う。
でもガイアスが一緒なら、どちらかが出来ればいいもんね。
――少女と、お城の完成 ⑧
(神子の少女は、もし認められなかったらというのを獣人の少年と話す)