少女と、お城の完成 ⑦
私はガイアスと一緒に王様をやれることが嬉しくて仕方がなかった。
とはいってもまだランさんに言っただけだから、ちゃんと周りに私たちが王様をやりますって言っておかないと。
昔から一緒にいる皆はともかくとして、最近一緒に暮らすようになったレゼット国の人達だと私やガイアスが王様をやるのは不安に思われるかな?
王様をやるならちゃんと、私達がその立場として頑張るんだって示さないと。安心してもらって、大丈夫だって思ってもらいたい。
そういうわけでランさんたちには先に報告した。ガイアスが王様をやるのを受け入れてくれたって。
「ねぇ、ガイアス、作戦会議しよう!」
いつ、どこで、どんなタイミングで王様をやりたいということを公表するのか、そのあたりはランさんたちに相談した上で決めることだ。
ただそれまで何もしないで待っているだけというのももったいないからね。
「ああ」
ガイアスが頷いてくれたので、内緒話をするためにお城のガイアスの部屋に入れてもらったの。
フレネ達にお願いをして、周りに声が漏れないようにもしてもらった。だってね、まだ周りに公表されているようなものではないんだもん。
「まずは私たちの目標は、この場所を誰も失うことのない、皆と仲良く暮らしていける場所にすること。それが一番だよね」
「うん。そう。国ってなると……なんというか、色んな考えの人が増えていきそうだけど俺は……その考えだけはぶらさないでいたいと思う。もっとこの国が大きくなって変わっていくことはあるかもしれないけれど……」
「うん。私もそれは思う。でも私達も周りに影響されてもしかしたらそういう大切にしていた気持ちを忘れてしまったりすることももしかしたら……あるのかなって思ったりするの」
これまで色んな人たちと出会ってきた。それに私達も少なからず変化している。――それと同じように私たちの立場とか、周りとかがどんどん変わっていったら大切にしたいものを蔑ろにしてしまうこともあるかもしれない。
そういう風に嫌な方向に変化してしまうこともあるんだって、ランさんに聞いたことがある。
「……それも、もしかしたらあるかもしれない。王様をやろうって言ったけれど、不安なことは色々ある。周りから王様だってもてはやされたら、俺、変な方向に思い込んだりしちゃったり、周りに対して横暴になったりしないかとか、心配している」
「ガイアスはそんな風にはならないと思うけれど……。うん、でも私も自分で決めたことを実際に実行してみて、それで皆が大変なことになったらって怖いなとは思うよ」
ガイアスはこの国のことも、この場所で暮らす皆のこともとても大切で、だからこそそういう風に自分が変な方向に行ってしまわないかと心配しているみたい。私はガイアスがそういうことを自分で心配しているだけで、そういうことにはならないのではないかなって思っている。
でも私も自分が決めて何か行動して、それで誰かが亡くなったり、怪我を負ったり――そんなことが起こったら怖いと思う。それだけ王様という地位はきっと責任が重いものなのだ。
そういう地位にミッガ王国のヒックドさんはついていて、シュオンガルベさんだってそうだったんだ。
そういう立場をずっとやれているというだけでも凄い事だと思う。本を読んだりすると、周りからの評判が悪い王様もいたりするけれど……そういう人たちだって王様としての仕事を一定期間出来ただけでも凄いんじゃないかなって思ったりもする。
「ガイアス、お互いにもし自分たちの一番大切なものを忘れてしまったら止めようね。私はガイアスが悪い方向に変わったら、それを止めるよ。だから、ガイアスも私が変な方向に進みそうになっていたら止めてね。二人で王様やるなら、それが一番いいのかなって」
私はガイアスに向かってそう言って笑いかけた。
二人でだからこそ、そういう風に出来ると思う。例えば私達が悪い方向に進みそうなら、きっとランさんとか、周りの人たちも絶対に止めてくれると思う。けれどもまずは互いに。
王様をやるって決めた私たちが一番最初に、止めれればいいって思うの。
「確かにそれなら安心だな」
「でしょ? 私もガイアスが見ててくれるなら、大丈夫だって思うもん。あとは役割分担はするけれど、王様の仕事は二人とも全部出来るようにしていた方がいいよね。一番上の人が倒れたらどうしようもないって状況だと、大変だと思うもん。私は神子だから、私が生きている間は此処は平穏かもしれないけれど私が寿命を終えた後にこの国が大変なことになるのも嫌だから、そういうの抜きにしても皆を守れる強さを整えられたらって思うの」
私とガイアスが王様をやるにしても、互いにしか出来ないことを作ってしまったらやっていくのが大変だと思う。だから私はそんな提案をするのだった。
――少女と、お城の完成 ⑦
(神子の少女は、獣人の少年の部屋でこれから先のことを話す)