少女と、三度目の精霊祭 ⑦
「ん……」
目を開ける。
窓の外から朝日が差し込んでいる。
視界にアリスの綺麗な顔が映って、そっか、アリスが村にきていたんだと私は思い出す。
なんだろう、アリスは昨日村に遊びに来たばかりだから……アリスが村にきてくれたのは夢だったんじゃないかみたいな、そんな気分に少しだけなっていたのだ。
でも……目の前で眠っているアリスは本物で、アリスが村にいるんだなってなんだか朝から嬉しくなった。
精霊祭が行われるのは明後日なので、それまでアリスと遊んだり、精霊祭の準備を一緒にやったりしたいなぁなんてそんなことも考える。
アリスの顔をじーっと見る。
いたずら心が湧いて、アリスの頬に手をやってみる。ふにっと指を頬にさしてみる。凄く柔らかい。
アリスとこんなに近い距離にいること、なんだか不思議でふわふわした気持ちになる。夢みたい。
本当にアリスが此処にいるんだなってことを実感するためにふにふにしてしまっていたら、アリスがぱちりと目を開けた。
「ううん……」
ぱっちりとした青い瞳が開く。
その焦点のあってない目が、私の目と合う。
「あ、レルンダ。おはよう」
「おはよう、アリス」
寝ぼけた様子のアリスが笑う。私も視線を合わせて笑った。
まだ眠たそうなアリスの手を引いて、井戸の水をくんで顔を洗う。
それから私とランさんと、アリスでご飯を食べた。
ランさんは私とアリスが話しているのを楽しそうに、にこにこしながら見ていた。ランさんもアリスが此処にいることが嬉しいのだろう。
ランさんはアリスの教育係だったけれど、追放されて此処にいて。
アリスは神子として引き取られたけど違って、変化して此処に遊びにきていて。
私は捨てられたのちに、皆と出会って此処で生活していて。
うん、そんな私たち三人が此処にこうして揃っていて笑いあっているのってある意味奇跡なのかもしれない。アリスはランさんと話す時少し気まずい様子だけど、ランさんは笑っていた。
「ランさん、ちょっとアリスと空の散歩してくるね」
朝食を食べ終わった後、私がそういえばランさんは笑って私とアリスを送り出してくれた。
「ねぇ、アリス。グリフォンたちに乗る? 私が飛ばす? どっちの方がいい?」
「……えっと、じゃあそのグリフォンたちに挨拶してみる。ちょっと怖いけど」
「ふふっ、大丈夫だよ。皆、凄く優しいんだ。私の大事な家族なの。だからアリスが皆と仲良くなってくれたら私は凄く嬉しい」
私にとってグリフォンもシーフォもドアネーアもとっても大事な家族。
けれどもアリスからしてみれば怖いと思う気持ちも分かる。私も会ったことのない魔物とか、いきなり襲い掛かってくる魔物とかいたら怖いもん。
アリスが皆のことを少し怖いと思うのは、知らないからだと思う。
アリスは人が契約をしている魔物と接したことはないみたい。知らなければ怖くなったりするのも当たり前のことだから。
それにしてもアリスが私の契約している皆だからって会おうとしてくれているのが嬉しいな。
「みんなー! アリスが皆に挨拶したいって」
私がそう言って声をかければ、見回りや狩りに向かっている子たち以外が集まってくる。
今この場にいるのは、リルハとカミハと、リオンとシーフォとドアネーアだった。他は今はいないみたい。
リルハに話を聞いたところ、昨日アリスがやってきてから私が皆に構えなかったので寂しがってたみたい。それでアリスに気に入られれば私もこっちに来るからって、アリスへのプレゼントを探しに行っているみたい。
入れ違いになっちゃった……。レイマーたちが帰ってきたら挨拶してもらおう。
「ぐるぐるるるる(レルンダのお姉さんね、よろしく)」
「ぐるるるるるるる(アリスっていうの? キラキラしてる)」
「ぐるるるるるる(アリス、よろしく!)」
「ひひひひーん(シーフォだよ、よろしく)」
「ピキィイイイイイ(我はドアネーアである。仲良くしてやろう)」
それぞれがアリスに寄ってきて、挨拶をする。アリスは少しだけ肩をびくりとさせた。
いきなり皆が近づいてきたからびっくりしたみたい。
「もー、皆、いきなり近づいたらアリスがびっくりしちゃうよ。ちょっと此処に並んで。私がアリスに紹介するから」
私がそうやって声をかければ、カミハたちは大人しくその場に整列してくれる。
「この子がリルハで、こっちがカミハで、その隣がリオンね。それでその隣がシーフォで、ドラゴンの方はドアネーア。皆、私と契約してくれているの。皆ね、アリスと仲良くしたいっていってる」
「仲良くしてくれるの、嬉しいわ。私はアリス。よろしくね」
アリスは皆が大人しいのを見てほっとしたのか、笑みを浮かべてそう言って笑った。
そしたら皆がそれぞれまた喋り出した。アリスには伝わらないので、私が通訳をする。皆が歓迎してくれているのはアリス自身にも分かったのか、アリスは嬉しそうにしていた。
「今いない子たちはアリスにプレゼントを用意したいって出かけてるみたい」
「私にプレゼント?」
「うん。皆、アリスと仲良くしたいんだよ」
「嬉しいわ。私……正直こんなに歓迎してもらえると思わなかったから」
アリスがそんなことを言うので、私は不思議に思った。
「レルンダは気にしてなさそうだけど……、そもそもレルンダが捨てられた原因は私だったもの。それに私が神子だと思われたせいでレルンダが大変な思いをしたっていうのは確かなことだもの。だからレルンダは気にしないっていっても、レルンダを大切にしている人たちは私を歓迎しないって思ったから……」
「何か思っている人はもしかしたらいるかもしれないけれど、私を大切に思ってくれているからこそ皆歓迎してくれてるんだと思う。私はね、アリスが此処にいてくれるの凄く嬉しいの。アリスのことをおもてなししたいって皆にいって、色んな意見をもらって色々準備してたの。皆、それを知っているから」
私はアリスに向かってそう言った。
イルームさんとかは、アリスに対して言いたいことは色々ためてそうではある。でも私が心から喜んでいるから何か言おうともしないのだと思う。
私は本当に、アリスが隣にいて一緒にお喋り出来ることが嬉しい。
「レルンダは本当に大切にされてるのね」
「うん!」
アリスが笑っていった言葉に、私も笑った。
――少女と、三度目の精霊祭 ⑦
(神子の少女は、姉を契約している魔物達のもとへ連れていく)




