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【連載版】双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。  作者: 池中織奈


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少女と、誕生日 2

 私の誕生日の、日。



 空の神の月の、1日。それが私の誕生日。月の名前は、神様の名前だ。有名な神様の名前を使ってるらしい。ランさんに聞いた話では、小さな村では日付の数え方があいまいなところが多いらしい。でも私の村は、そういう日付の考え方はちゃんとしていたと思う。



 ……姉の誕生日を祝うためとか、姉のためだったと言えるだろう。あと私の両親はそういう日付の数え方とかきちんと把握していた。それもあって姉の誕生日はきちんと祝われていた。


 この獣人の村にやってきて、私は今日が何月の何日かなんて気にしていなかった。でもランさんは王都を出てからもちゃんと何月の何日か把握していたらしい。凄い。



 ……誕生日の日、目が覚めた時私はドキドキしていた。ランさんが皆でお祝いしましょうと言ってくれて。嬉しくて。嬉しいけど、不安だと考えていた。お祝いされるのは初めての事で。

 起きて顔を洗いに向かおうと思ったら、家の扉がノックされた。返事をしたら、ガイアスが扉を開けて入ってきた。




「レルンダ、おはよう!」

「おは……よう」

「今から顔を洗いに行くところか?」

「ん、そう」



 ガイアスと一緒に並んで、外に出る。井戸の水を汲んで、顔を洗う。ガイアスは私の側に立っている。



「レルンダ、行こう!」

「どこ、に?」



 家の外に出てから、皆の気配がしないなと思っていた。グリフォンたちやシーフォの姿も見えなくて不思議だった。私はガイアスに手を引かれるままに、足を進めた。



 向かったのは、村の中央にある広場だった。

 そこには、皆が居た。皆が私の姿を見て、「誕生日、おめでとうっ」ってそう言ってくれた。

 ランさんがニコニコしていた。優しい笑みを浮かべて、皆に同時におめでとうなんて言われて、驚いた私に近づく。




「レルンダ、誕生日おめでとう。皆に話したら、皆お祝いしたいと言ってくれたのよ。ニルシさんたちも」

「……子供の誕生日は祝うものだから、俺はここにいるだけだし」



 ニルシさんは、ランさんに視線を向けられてそっぽを向いてそう答えた。

 おめでとう、って、誕生日に言われたの初めてだった。お祝いするってランさんに言われていたけど、実際に”誕生日おめでとう”って、たった一言言われるだけで私は衝撃だった。

 今まで一度も言われたことがなかったこと。姉が、いつも誕生日に言われていた言葉。私とは縁のなかった、誕生日のお祝い。大好きな人たちに、おめでとうって言われるだけでこんなにも、こんなにも嬉しいんだって、びっくりした。



 心がぽかぽかする。




「レルンダ、俺からも! おめでとう!!」



 私と手をつないだままの、ガイアスが笑って告げる。心の底からの言葉だとわかって、凄く暖かい。




「……あり、がとっ」

「って、レルンダ、なんで泣いてるんだ!?」



 ガイアスにぎょっとされた。そっぽを向いていたニルシさんも慌てたように私の方を見る。



「お、おい、なくんじゃねぇよ。どうした!?」



 ニルシさん、慌てて私に近づいてきて私の目線に合わせるようにしゃがみこむ。



「うれ、しい、だけ」



 嬉しい。おめでとうって言葉が。私のこと、お祝いしてくれることが。心がぽかぽかする。



「おいおい、おめでとうって言われただけで嬉しくて泣くとかなんなんだよ……」



 ニルシさんはそういいながら、私の頭をぽんぽんってしてくれた。ニルシさん、人間のこと嫌いなはずなのに優しい。その優しさが嬉しくて、また涙が零れ落ちそうになる。皆の優しさに、私は泣き虫になってしまった。

 嬉しくて、温かくて、涙が出てくる。



「おおおい!? なんで、泣く!?」

「ニルシ、さん……やさ、しい」

「はっ!?」

「お祝い、してくれて……」

「いや、だから、俺は……」

「ぽんぽん、好き」

「あ、ああ、そうか」

「お祝い、してもらえて。私……幸せ」



 心からの言葉。本当に幸せだと思った。お祝いしてもらえて。おめでとうって、大好きな人たちにいってもらえて。それだけで私は嬉しくて、仕方がなかった。

 そんな私に目の前のニルシさんも、私が泣いていることでおろおろしているガイアスも、優しい目をしたランさんも、他の皆も、言った。



「何言っているんだ……。おめでとうだけで幸せとか、お祝いはまだ始まったばかりだろうが……」

「レルンダ、俺達皆で準備したんだ! だからまだ続くからな」

「レルンダ、貴方に最高の誕生日をあげようって企画したんですよ。皆協力してくれたので、楽しんでくださいね」



 ニルシさん、ガイアス、ランさんが言う。

 まだ、始まったばかり? その言葉の意味が分からずにいれば、後ろからグリフォンたちの声が聞こえた。



「ぐるぐるぐるるる~(レルンダの誕生日~)」

「ぐるぐるっ(お祝い、お祝い)」

「ぐるぐるぐぐるううう(お歌の練習したんだから)」

「ぐるるるっる(聞いてね!)」



 子グリフォンたちがそういいながら横に並ぶ。私は椅子に座らせられ、子グリフォンたちの前にいる。子グリフォンたちは私の知らない歌を歌った。かわいらしい鳴き声で、歌う子グリフォンたち。ランさんが「誕生日で歌われる歌なのです。私がこの子たちに教えました」といってくれた。



 子グリフォンたちが、誕生日のお祝いにとそんな歌を歌ってくれたことが嬉しかった。


 女性の獣人たちが私を楽しませようと踊ってくれたり、皆がプレゼントをくれたり———ずっと、私は目が覚めてから夢を見ているような気分だった。


 おめでとう、ってその言葉を言われて、お祝いされているだけでも私にとってこれまでが考えられないぐらいの幸せだった。だけどそれだけじゃなくて、いろんなものを、皆がくれる。

 食事も豪華で、ガイアスがアトスさんと一緒に狩りにいって捕ってきたものもその中にはあった。



「俺が父さんと仕留めたんだ!」



 と、誇らしげに語って、揺れ動く耳と尻尾を見るとちょっと触りたくなったけど我慢した。この木の実は私が用意したとか、俺がこれをとってきたとか、皆それぞれ口にして、笑みを零していた。

 今まで姉を祝う日だった、そんな誕生日。


 それが、私にとって嬉しくて楽しい日に私の中で塗り替えられた。



「みんな、ありがと」


 気づけば、ありがとうと私は口にしていて。



「みん、な、だい、すき」



 そういって、私も笑ってた。そんな私に皆が笑みを零して。笑っていて。温かい空間で。本当に幸せだった。

 夢みたいな、一日だった。

 ずっと、ずっとこんな幸せな時間が、幸せな空間が続いていけばいいってそう私はその日思っていた。








 ――――少女と、誕生日 2

 (多分、神子な少女にとってそれは幸福な日だった)




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